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混沌の神の再生  作者: 桐ヶ谷本真志
神から少年へ。
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「人間であっても、なお強く在り続ける。」

「刃の夜」


数百もの輝く剣と槍が、魔力で形作られ、凄まじい速度でマリクへと殺到した。


マリクは玉座から跳び退き、それらを回避する。だが空中に浮かぶ少年を見下ろしたその瞬間、少年は再び指を鳴らした。


――パチン。


虚空から新たに十本の槍が出現する。


そのうち四本がマリクの四肢を貫き、背後の壁へと縫い付けた。残る六本は一つの槍へと収束し、その速度と威力を増幅させる。


狙いはただ一つ――胸部にある核、《コア》。


槍が突き刺さる。


衝撃は壁ごと粉砕し、残されたのは塵と、淡く漂う魔力の残滓だけだった。


少年は勝利を確信した。


しかし――


崩れた壁の向こう、舞い上がる塵の中から、紫の魔力に包まれた影が歩み出る。


マリクだった。


四肢の穴は塞がれ、核も再構築されている。


壁に叩きつけられた際に受けたはずの損傷すら、跡形もなく消えていた。


まるで最初から何もなかったかのように。


「妙だな。確かに核を撃ち抜いたはずなんだけどな。教えてくれよ、どうやって生き延びた?」


――当然だ。


核を破壊したところで意味はない。


なぜなら今、少年は《影界》――すなわち死者の領域に足を踏み入れているからだ。


あらゆる魂は、生の世界へ至る前に必ずこの領域を通過する。


影界に存在できるのは本来、死者のみ。


だが例外が二つある。


一つ――影界と繋がりを持つ存在であること。

マリクたちは影の神によって創造され、その領域と結びついているため、二つの世界を行き来できる。


二つ――影界への門が開かれていること。

ただし、生者がそこに留まるには膨大な魔力を消費する。


(このガキ……一体どれだけの魔力を消費してやがる?)


「おい、聞こえてんのか?どうやって生き延びたか聞いてんだよ」


黒きゴーレムは沈黙を保った。


答える義務などない。


「まあいい。いずれ分かる」


少年は再び手を突き出し、光の粒子が集まり始める。


マリクは待たない。


全身から魔力が噴き上がり、三枚の鱗が肉体から剥がれ、宙に浮かぶ。


拳に紫の光が収束する。


――突撃。


頭上の剣と槍が再び降り注ぐ。


だが今回は違う。


三枚の鱗が盾となり、攻撃を弾き飛ばす。


黒龍の鱗――それはほぼ不壊。


加えてマリク自身も回避し、時に武器を掴み、別の攻撃を弾く。


ついに間合いへ到達。


まだ未完成――


勝機。


拳を振り抜く。


少年は防いだが、衝撃で吹き飛ばされる。


転がりながら衝撃を逃がし、膝をつく。


その瞬間、マリクが追撃。


五本の剣が出現し突撃する。


一本を掴んだ瞬間、他は消えた。


(魔力切れか?)


――シュン。


空気を裂く音。


視線を落とすと、胸に槍。


核を貫かれていた。


槍と手に持つ剣が発光する。


少年は距離を取る。


――爆発。


「これで終わりだ」


黒い炎が部屋の中央に灯る。


炎は膨れ上がり、やがて人型を成す。


消えた後に残ったのは――黒き鱗、紫の瞳を燃やす存在。


まるで不死鳥のように蘇る。


少年はため息をついた。


指を向け、小さな魔力球を生成。


「バン」


瞬間、目の前に出現。


未熟。


マリクは払い飛ばし、壁ごと破壊する。


振り返る――


いない。


風のように振り向く。


――キンッ。


背後からの一撃。


腕で受け、弾き飛ばす。


再び突進。


攻撃は続く。


だがすべて防がれる。


少年は距離を取り、斬撃を放つ。


マリクは一蹴。


接近し、掴み、玉座へ叩きつける。


紫の糸が少年を拘束する。


影界の魔力で編まれた糸。


逃れられない。


「その糸……お前の魔力じゃないな?」


死を前にしてなお、少年は口を開く。


「だったらとっくに抜けてる。ここに入った瞬間、感じたんだ。無数の存在の魔力――全部、死の魔力だ」


何が言いたい。


「つまりここは影界だろ?核が効かなかった理由も、それで説明がつく」


マリクは感心する。


だが無意味。


腕が変形し、刃となる。


「珍しいな」


「秘密の公開といこう」


剣が輝き、城が崩壊するほどの魔力が放たれる。


「――死ね」


初めて発せられた言葉。


振り下ろす。


だが――


受け止められた。


片手で。


「お返しだ」


風が拳に集束。


刃に亀裂。


粉砕。


「量より質が大事だが……今回は例外だ」


魔力が暴走する。


空間が震える。


「《嵐術》――」


拳が突き刺さる。


「タイフーン・ショット」


――轟音。


核が消滅。


そして全身が蒸発。


鱗すら残らない。


___


マリクは目を開ける。


闇。


「ここは……?」


「俺の次元だ」


声。


「誰だ!」


「もう忘れたか?」


「さっきのガキか!?」


「正解」


「出せ!」


「無理だ」


「なぜだ!」


「出したら魂が影界に消える。見つける前に転生されたら終わりだろ?」


理解できない。


「主はノワール、影の神だな?」


千年ぶりの名。


「会いたいんだろ?なら――組め」


「神を殺すためにな」


なぜ人間が。


「俺はエフラクシス――元・混沌の神だ。今はアベルだがな」


「な……!」


「転生だ。分かるだろ?」


マリクは沈黙。


「名前は?」


「マリク」


「いいな。協力しろ。俺は神へ、お前は主へ」


少しの思考。


やがて――


「……いいだろう」


もし主と再会したなら。


その時は――守る。


「成立だな」


そしてアベルは言った。


「ところでさ」


「なんだ?」


「俺、どうやってここから出るんだ?」

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