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混沌の神の再生  作者: 桐ヶ谷本真志
クラスチェンジ。
13/16

被害者に関する間違いがありました

洞窟は静まり返っている。


その時——


[通知]

[レベルアップ]


アベルは足を止める。


[レベルアップ]


空気が張り詰める。


アベルの前に、画面が現れる。


彼は微笑む。


「レベル100……到達したな」


[名前:アベル・モーニングスター]

[種族:人間/?]

[レベル:100][本来の力の15%]


[筋力:95 → 97]

[敏捷:87 → 89]

[知力:90 → 92]

[魔力:112 → 114][MP:9542/9546]

[運:79 → 81]


[クラス:なし]

[称号:捕食者狩り]


[スキル:ゴースト、ヴォイド、ソニックリープ、インフィニティ・ドメイン、レプリケート、ソウル・トランスミューテーション、ステルス、スキル融合、再生]


[属性:風、火、土、水、影]


[アルシウム:なし]


———


画面は消える。


『これだ』


レベル100に到達した報酬——それはクラスの獲得だった。


シロが闇の中から現れ、彼の隣で止まる。


「手に入れた」


彼は小さな容器を差し出す。


アベルはそれを受け取る。


冷たい。


ゆっくりと開ける。


中には、折りたたまれた手紙が一通。


それだけだ。


封もない。


印もない。


ただの紙。


彼は取り出し、広げる。


視線が文字を追う。


最初は何の反応もない。


「何て書いてある?」とシロが聞く。


「セレスティア家。元老院に属する家の一つだ。どうやら当主が“予知”を見たらしい。世界の終わりが来ると——」


彼は言葉を止める。


「どうした?」とシロが問う。


アベルは真っ直ぐにシロを見る。


「……その中心に、クラウディアがいるらしい」


シロはアベルを見つめるしかない。言葉が出ない。


「だから暗殺者を送り込んだ。運命を止めるために」


「……なるほど」とシロは答える。「もしよろしければ、アベル様——」


「くだらない話だ」


シロの言葉は途中で遮られる。


「殺せば解決すると思ってるなら……俺が別の方法で救えない理由はないだろ」


シロの沈んでいた表情が、少し明るくなる。


(もし見つからないなら——作ればいい)


その考えは、影の神ノワールを思い出させる。


アベルは手紙を一度折る。


彼の手に青い魔力が灯る。


紙は一瞬で燃え尽きる。


煙も、灰も残らない。


消滅する。


「痕跡は残さない方がいい」


光が消える。


再び静寂が訪れる。


シロは彼を見つめる。


「……先ほど、魔力が変わっていた」


アベルは前を向く。


「前にお前と戦った時、俺は全力だった」


シロは耳を傾ける。


「強くなるにつれて、全力を出す必要がなくなった」


淡い青い光がアベルの周囲に現れる。


穏やかで、静かな海のようだ。


「それに合わせて、魔力も変わった」


青い光が揺れる。


やがてそれは、静かな波から荒れ狂う津波へと変わる。


シロが見た紫の魔力が再び現れる。


以前よりも、強く、鋭く、洗練されている。


そして——消える。


再び青だけが残る。


「本気になると、戻る」


シロは目を細める。


「……つまり、あれが全力ではなかったと」


「違う」


アベルの声は静かだ。


「全然な」


短い沈黙。


「昔……神だった頃は——」


彼は言葉を切る。


そして続ける。


「今の俺じゃ、あの時の20%にも満たない」


シロは黙ったまま、やがて頭を下げる。


「……承知しました」


軽く礼をする。


アベルは頭をかき、振り返る。


「よし、帰るぞ」


二人は洞窟を後にする。


———


屋敷は変わらず賑わっている。


音楽が流れ、声が響く。


表面上は、何も変わっていない。


メイドがトレイを持って歩いている。


ワイングラスが整然と並ぶ。


客の間をすり抜ける。


誰にも気づかれずに。


その時——


誰かにぶつかる。


「あっ……!申し訳ありません!」


慌てて一歩下がる。


目の前に立っているのは、アベルの母——キラ・モーニングスター。


「大丈夫よ」と彼女は言う。


メイドは頭を下げる。


「申し訳ございません、奥様」


キラは少しだけ彼女を見つめる。


「疲れているのね」


メイドは一瞬ためらう。


「……大丈夫です」


「少し休みなさい。飲み物でもどう?」


優しくトレイを示す。


メイドは視線を落とし、やがて頷く。


「……ありがとうございます」


キラは微笑み、夫の方へ歩いていく。


メイドはグラスを一つ取る。


持ち上げ、口をつける。


一口。


そしてもう一口。


ゆっくりと下ろす。


「……」


違和感。


手の力が抜ける。


グラスが滑り落ちる。


床に当たり、砕ける。


その音が部屋を切り裂く。


彼女は崩れ落ちる。


激しく。


音楽が止まる。


すべてが止まる。


「なっ——!?」


人々が駆け寄る。


「大丈夫か!?」


反応はない。


誰かが脈を確認する。


その表情が変わる。


「……死んでいる」


沈黙が広がる。


やがてざわめきに変わる。


「何が起きたんだ?」


「急に倒れて……」


「いや……もう……」


恐怖が広がる。


人々は後ずさる。


立ち尽くす者もいる。


周囲を見回す者もいる。


その中で、クラウディアは見つめている。


体が冷たくなる。


視線はメイドに釘付けだ。


砕けたグラス。


ワイン。


彼女の手が震える。


「……あれ……」


声はかすれる。


目が見開かれる。


あのグラス。


自分のものだった。


呼吸が乱れる。


(あれ……私の——)


すべてが遠く感じる。


その時——


「……大丈夫か?」


振り返る。


そこにアベルが立っている。


すぐ後ろに。


まるで、突然現れたかのように。


彼女の表情が和らぐ。


そして、涙が浮かぶ。


一歩踏み出し——


強く抱きつく。


「あなたじゃなくて……本当によかった……」


声が震える。


彼女は離さない。


アベルは固まる。


少し顔が赤くなる。


「……ああ」


わずかな間。


「お前もな」


彼女は少しの間抱きしめたまま、


ゆっくりと離れる。


背後では、人々が集まっている。


声が重なり、空気は張り詰めている。


華やかだった宴は、


一瞬で事件の場へと変わる。


アベルはクラウディアの向こうを見る。


横たわる遺体。


動かない。


彼の目がわずかに細くなる。


(魂が……まだ残っている)


彼は何も言わない。


ただ見つめる。


静かに。


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