強くなったから
仲間たちに背中を押されたレオンとララはノシュキルの町の中心部へと走っていた。
「広場が見えたっ! あれは……!」
広場を前に、レオンが言葉を詰まらせる。
広場に立っていたのは自分の妹であるメルと敵の首謀者であるウルフ。
そして二人の近くでは満身創痍となったシンピとビーディーが膝を着いていた。
「師匠! ビーディー!」
「……! レオン!?」
レオンが二人の名を呼ぶと、広場の視線が集まる。
それは当然、敵と化したメルも例外ではない。
「おやおや、思ったよりも早かったねぇレオン。そんなに師匠と一緒に死にたかったかい?」
「黙れウルフ」
どこかおどけた口調のウルフをレオンは鋭く睨みつける。
されどウルフは態度を変えることなく「怖い怖い」と大仰に両手を広げてみせた。
「ま、なんにせよ来てくれて助かるよ……狩りに行く手間が省けた」
途端、ウルフの纏う雰囲気が歪で恐ろしいものへと変貌する。
レオンが育て親の身体を奪われた日と同じ、命を摘む者のオーラだ。
しかし、レオンが怯むことはなかった。
「それは違うな」
「は?」
レオンが怒りと戦意に満ち、されど冷静な狩人の瞳でウルフを見やる。
「狩られるのはウルフ、お前の方だ」
「……ほう」
どこか余裕のあるレオンの態度がウルフの癇に障る。
気づけば、ウルフの表情から笑みは消えていた。
「ならば出来るのか? お前に……妹を殺すことがッ!」
ウルフの瞳が鈍く緑色に輝く。
「メル! 奴らを『殺せ』!」
主より命が下されたと共にメルが咆哮を上げ、その姿が禍々しい魔獣のものへと変貌を遂げる。
レオンの記憶にある兄想いで優しいメルは、そこにはいなかった。
「……殺さねぇよ」
「レオン、ここは私にやらせて」
ララの申し出にレオンは頷き答える。
忠臣たる少女と主たる少年の間に、それ以上の言葉は不要であった。
「ああ。ララ……『頼んだ』」
静かなる言葉と共に、魔獣と人間の境界にあるその肢体は恐ろしく、しかし美しき赤へと包まれ染まる。
大きく見開かれたその瞳には忠誠と情熱だけが浮かんでいた。
「……強く、なったから」
呟いたララは、凄まじい咆哮を上げ襲い掛かってくるメルを華麗にいなす。
その動きは、ブレンダムで敗北した時と明らかに別ものだった。
「だから、これで終わらせる」
いなしたメルが立ち上がり、ララに牙をむく。
それでもララは殺す気も、ましてや殺される気なんて微塵もしなかった。




