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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
魔獣事変
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106/115

開戦

 そして、決戦の日。

 レオンはノシュキルの港に立っていた。

 眼前に広がるは荒波立つ北海。

 そして遠くには見慣れない船の群があった。


「あれがウルフの軍団か」


 レオンが静かに呟く。

 神妙な面持ちのレオンとは対照的に、隣のリンネはどこかからかうように笑って見せた。


「緊張してるの?」


「まあな」


 少し困ったようにレオンは軽く口端を上げる。


「ただまあ、心配ってわけでもない」


「そう。それならいいけど」


 海風でなびく髪を払って、リンネもまた海を見やる。

 彼女もまた、連邦の命運を占う決戦を前に多大なプレッシャーを感じていた。


「レオン」


 背後から聞きなれた声で呼びかけられ、レオンが振り返る。

 そこにいたのは、レオンにとって最初の契約者であるララだった。


「ララ、どうだった?」


「うん。やっぱり来てる。多分もうすぐ」


「そうか。やっぱり同時に襲撃してきそうだな」


 レオンが目を閉じ、大きく息を吐く。


――大丈夫、勝てる


 強く念じて、ゆっくりと瞼を開く。

 海の向こうに見える船団は、先程よりもその影を大きくしていた。


「レオン、あいつらが砲を構えたわ」


 リンネがエルフ特有の超人的な視力で視認した情報を報告すると、それから間を置かずに遠くから爆発音が聞こえてきた。

 開戦の合図だ。


「レオン!」


 リンネの切羽詰まった声に応えるようにレオンが声を張り上げる。


「『防げ』! ドラクル!」


 レオンの声に呼応し、上空より魔龍が姿を現す。

 彼こそがレオンにとって二人目の契約者であった。


「新たな主よ。貴様に貰った新たなる命、貴様の為に此処で燃やし尽くそう!」


 魔龍が漆黒の翼を拡げ、ノシュキルに向けて放たれた砲撃を防ぐ。

 その姿は威風堂々たる全盛期の姿そのものであった。


「頼んだぞドラクル、『焼き払え』!」


 主の命令に応え、魔龍が牙の生えそろった大口に灼熱の炎が湛える。

 黒い風のように船団に飛びかかり、炎を吐いて海上に地獄を生み出した。

 レオンは痛む心を抑え、命を果たして戻ってきた魔龍を笑顔で出迎えた。


「よくやったドラクル」


「主の命令とあれば当然のこと……フッ。この熱、ウシクを思い出すな」


「そうなのか? ……だけどドラクル、今回とウシク紛争とじゃ決定的な違いがある」


 汗まみれの右手を握り締め、レオンは自分にも言い聞かせるように言葉を紡いだ。


「今回は俺たちが勝つってことだ」


 魔龍が不敵に笑う。

 負けられない戦いが今、この町で始まりを迎えていた。

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