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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
33/37

秘めたる剣技の最奥

あけましておめでとうございます。

大変お待たせ致しました!

 知らない構えをみせるグリムに、シャルールは少なからず動揺を隠せなかった。

シャルールが知ってるグリムの剣技は二つだった。一つは秘奥剣壱の型『屠ル者(スレイヤー)』、もう一つは秘奥剣弐の型『喰ラウ者(イーター)』である。

 攻撃力に特化した『屠ル者』とは違い、『喰ラウ者』は相手に付けた傷口から魔力を徐々に吸い上げる為、攻撃を受け流す事に特化した剣技だ。構えも剣先を下げ、身体にかかる無駄な力を抜く。


「お前に見せた事のない技だったな。この技は参の型で、『穿ツ者(シューター)』と言う」


「……聞いておきたい。その技は、去年俺と戦った時には既に習得していたのか?」


 シャルールが眉間に皺を寄せて問いかける。その問いにグリムが頷いて口を開いた。


「ああ。既に使えていたよ」


「俺の秘奥剣は三つの型がある。『屠ル者』『喰ラウ者』『穿ツ者』の三つだ。既にお前には『屠ル者』は止められているし、『喰ラウ者』は長期戦を見越しての技だ。既に『与奪剣』によって傷を付けられている今、長期戦を選択するのは分が悪いからな。そして……」


「秘奥剣参の型『穿ツ者』は、余りにも強大過ぎる威力故に、俺自身が封印していた技だ」


「そうか……」


 シャルールは腹が立って仕方が無かった。それはグリムに力を隠されていた事ではなく、グリムに力を隠させていた自信の力量の無さに、である。

 しかし、同時に嬉しくて仕方が無かった。それはグリムに力を出させている事実に。ライバルと思っている男に、ライバルとして見られたと思えたから。


 グリムは、シャルールに申し訳ないと思っていた。恐らく自分は、彼の自尊心を踏みにじったのだろうと思ったから。

 しかし、同時に楽しくて仕方が無かった。この技を使える相手と状況。全力を出し切ることの出来る喜びが、頭の中を支配し始めてきていた。


「ふふ、もう言葉は要らないな」


「そうだね。決着をつけよう」


 そう言って、両者の間に緊張が走る。五秒、十秒。互いに放つ殺気がジリジリと肌を刺す。

 先に動いたのはシャルールだった。とは言っても、グリムの目にはシャルールが動いたようには見えていない。しかし、かすかな違和感を感じ取ったグリムは、シャルールの放つ『刺突・乙式』を避け、反撃する隙を窺う。しかし――


 シャルールが【爆発(フレアー)】を連続で放つ。グリムのいる方向とは全くの別の場所に。

 グリムが感じ取っている違和感の正体は、目の前にいるシャルールの動きが全て止まってしまう事だった。


(ならば、俺の姿そのものをくらませてしまえば良い!!)


 再び『刺突・乙式』を放つシャルール。


「ッッ!!」


 それさえも躱すグリムに、シャルールは驚きを隠せない。


「ならばっ!!」


 再び【爆発】に紛れ、『乙式』を繰り出していく。それをグリムが躱そうとした時――


「っく……チィッ!」


 ここで『与奪刀(ミュルグレス)』による能力が牙を剥き、『乙式』がグリムの右の頬をかすめる。

 グリムも、予測していたとは言え、発動するタイミングは常にシャルールに委ねられている上、脳の命令とは違う動きを強制的に強いられる為、混乱状態(パニック)に陥ってしまうのだ。


「やはり厄介だな、<与奪>の力は……だがっ!!」


 グリムは僅かな魔力の流れや殺気を逃すまいと、シャルールの動きに集中する。その動きを察知したシャルールが『甲式』を放つ。

 グリムの周りをいくつもの殺気が取り囲み、時間差でグリムに向かって襲い掛かる。が――


「やるぞ、レーヴァテイン!!穿(うが)てっ!!!!」


 キイィィィィィ……ン

 グリムが『穿ツ者』を放つと同時に、耳鳴りのような音が会場に突き抜けた。その音が鳴り止むと同時に、周りを取り囲んでいた殺気が全て、()()()()()()()()()()


「やはり設置型だったか」


 『甲式』の正体は、無数に放った『乙式』に【具現(ライズ)】の魔法で実体をその場に残し、【遅延(ディレイ)】をかけたもので、時間差で『刺突』を繰り出せたのは、具現化させた『乙式』にタイミングをずらしながら【加速(アクセル)】をかけたものであった。


「ク……フェイト、グリムゥゥ!!」


 焦りを見せたシャルールが『刺突』の構えを見せると、グリムは『一陣剣(リジル)』を抜くと、そのまま『裂空斬(ソニック)』を放ち、シャルールの後ろへと回り、向かって剣を振る。


「……!!」


 剣が空を切った瞬間をシャルールは見逃さなかった。<与奪>の力で、左足と右頬を逆方向へ引っ張ると、そのままグリムの身体は本能的に硬直してしまった。


(グッ!!まずい!!!!)


「もらった!!!!【『刺突・乙式・超加速(アクセルブースター)』】ァァアァッッ!!」


 ガシュウウゥゥ、と、とても剣での攻撃とは思えない音と共に、グリムの身体が吹き飛ばされる。


 シャルールは、<与奪>でグリムの自由を奪い、一発の『刺突』に、【加速】の魔法を重ね掛けして、グリムに一瞬の隙さえ与えなかった。


「勝った…………俺は、この手で、フェイト・グリムに勝ったんだ!!!!」


 わああぁぁ!!と会場が沸き立つ。今起きた事を全て理解している者はたったの三人だった。


「うおおおおおおお!!ついに、ついに超えたぞ!!」


 『与奪刀』を地面に刺し、両の手を握りしめて雄たけびをあげる。会場からは惜しみない拍手が送られていたのだが、次の瞬間に一瞬で会場が静まり返る。


「危なかったよ、本当に。そして楽しかった。よくぞここまで辿り着いてくれたよ、シャル。だがすまない。この勝負も、俺の勝ちみたいだ」


 すっくと立ち上がる。だが、グリムの左足と左腕は切り落とされていた。


「お、俺は確かに……確かに心臓に穴を、あけたはずだ。」


 【止血(エイド)】を施しながら、魔力によって失った左足から力場を生成し、グリムは『一陣剣』を鞘に納める。


「あのままだったら、そうなっていたよ。だから、()()()()()()()()()()()()。<与奪>から逃れるためにな」


 あの一瞬、グリムの意識は右方向へ避ける意識だった。しかし、左足に負った『与奪刀』による傷は左方向へと引っ張っていた。


「体勢が不十分だったから、斬りつけるだけでは切断は出来そうにもなかったからね。『裂空斬』で時空の歪みを作ったのさ。左足の上からね」


「なっ!?……とても正気とは思えんな」


「おかげで、致命傷は避ける事ができたよ。とは言え、さすがに血を流し過ぎた。次が最後の技だ。この一撃を凌ぎきれば、シャル、お前の勝ちだ」


 グリムが一瞬だけ、闘技場のゲートで見守るヴェルトへと視線を移し、()()と笑った。


「……いいだろう。今度こそ、決着だ。俺は超える。お前を!今ここで!!」

「ミュルグレスッッ!!」


「もうしばらくは、俺が勝者でいさせてもらうぞシャルール・レオニス。俺はまだまだ楽しみたいからな!」

「レーヴァテイン!!」


 シャルールが『与奪刀』で『刺突』の構えを、グリムが『終焉ノ一振』で『穿ツ者』の構えを取る。


「もう一度受けてみろ!!アクセルブースタァァァァ!!!!」


 その剣先はグリムへと一直線に向かう。


「すまないな、シャル。その技が俺に届くことは無い」

「秘奥剣・参の型【戒】『穿ツ裂空(ソニックシュート)』!!!!」


 グリムもまた、シャルールへと剣先を向けて突進する。その剣から、パキ、パキッと何かが割れるような音が鳴っていた。

 放たれた二つの技が、瞬きよりも速く交差する。


 パキィィィィン、と一際大きな音が鳴り響くと、そのまますぐに静寂が訪れる。

 ヒュンヒュンと空を舞う切っ先が地面へと刺さる。


「見事だ、シャルール」


 グリムの背中が大量の血で染まる。


「技量なら、もしかしたら俺を超えているのやもしれんな。だが、今回も俺の勝ちだ」


 シャルールは、握っていた『()()()()()を放すと、そのまま地面に倒れ込んだ。腹部に大きな穴をあけて……。


「ほざ、け……次、は、かなら、ず……」



『準決勝第一試合、勝者!フェイト・グリムゥゥゥゥ!!!!』


 グリムは、折れた『与奪刀』を拾い上げ、会場を後にした。



 ―医務室―


「……そういう訳で、俺もシャルも今日はここから離れられん」


 はっはっは、と笑いながら団長が答える。それはそうだ。今の状態で結界の張られていない闘技場の外に出てしまえば、その時点で死に至りかねないほどの重症なのだから、治るまでは外に出られるはずもない。


「明日の決勝には間に合うんですか?」


「問題ないだろう。アーシャさんが言うには、どんな怪我でも五時間もあれば完治するらしいからな」


 それを聞いた当のアーシャさんはニコニコとしている。

 彼女はいったい何者なのだろうか。グレドラードの事を知っていて、様子を見ているとも取れる言動をしていたと聞かされたが、この笑顔を見ていると、本当かと疑ってしまいそうになる。


「俺の事よりもヴェルト。そろそろ準備をしておけ。お前の相手は、世界最強なんだからな。後悔しない為にもできる事を全てしておけ」


 そう。今は余計な事を考えている場合ではない。俺の対戦相手は<剣聖>ザクス・クレイル。団長が言うには、甘く見積もっても三割程度の力しか出していないらしい。正直、今の俺はケイ・アマガサよりも剣の技術は下だろうし、グレドラードの力なしでは魔法だって使えないのだ。


「……はい!!俺のありったけを、ぶつけてきます!!」


 そう言って、俺は選手通路へと向かい歩き出した。

魔王VS世界最強が始まります!

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