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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
31/37

四強、出揃う

闘技大会編も後半戦です!


 ―シスマーニ闘技場―


 勝者が宣告され、会場が沸き立つ。

しかし、これまでの試合の殆どを彼らは理解できていないであろう。ごく一部を除いて。



「いやー、流石<剣聖>ザクス・クレイル。見た感じ、実力の二割ほどしか出しちゃいねぇな」


 巨躯の男、ランドルフ・グローリィが感想を述べる。


「そうですね。そもそも、最後に魔剣の力を見せる必要もなかったでしょうに」


 シスター服の女性、アメリア・ニムレットもまた、淡々と口にする。


「ガッハッハ!まぁ、その辺りは女にはわからねぇモンがあんだよ」


「わざわざ手の内を見せる意味が理解できかねますね」


 ランドルフが再び、闘技場へ目をやる。


「ま、手の内を見せてもなお、如何(いかん)ともし難い実力差があるんだがな」


 そこで、フードをかぶった女が笑みを携えて歩み寄ってきた。


「ウフフ、<修羅>のランドルフなら、どう応戦するのかしらね」


「ハッ!!俺はもう、ロートルだよ。あんな化け物を相手にする気もねーよ。ただ……」


 ランドルフがモニターを見上げる。


「勝てる可能性が比較的高い奴はいるがな」


 アメリアが割って入る。


「それで?わざわざそんな話をしに来たんですか?『禍罪(まがつみ)』幹部、<共鳴>の蘭」


「あらあら、バレてたのね。って、バレてるのはもう知ってたけど。そうねぇ……今日の所はそのつもりよ」


「そうですか。こちらからはもう一つ。ヴェルトさんが覚醒した際の、魔剣『零の氷刃』の反応値ですが――」


 蘭はアメリアの発言を手を伸ばして制する。


「あなた達に協力を仰いで本当によかったわぁ。感謝してる。でも、昨日も言った通りよ。深入りはしない方が身の為よ。真っ当に死にたいのなら、ね」


 そう言って、闘技場を去っていく。


「…………真っ当な人生なんて、生まれた時から歩んではいないわ」


「あん?何か言ったか?」


 アメリアはランドルフに振り返り、笑顔を見せて言う。


「ふふ、何でもありません」





―ホテル・アインス 夕食会場―


「本当に身体に異常はないのか?」


 フィンラルが少し心配そうに問いかける。


「ああ。この右目以外、特に身体に変化は見られないよ」


「でも、その右目は一体何なのかしらね。魔眼の類であることは間違いなさそうだけれども」


 ティアーナが俺の顔を覗き込んでくる。


「……ヴェルト。あなたが無事で本当に良かった。本当に……」


 ティアーナの目から大粒の涙が零れ落ちる。俺はティアーナの頬を両手で包み、指でそれを拭う。


「心配かけてごめん。でも、この通りピンピンしてる。それに、ティアを置いてどこかに行ったりなんかしないさ」


「ヴェルト…………」


「おあついのは結構ですけれど、他に人がいる事を忘れないでもらえるかしら?」


 ミーナがツッコむ。隣でアーシャさんがニコニコと微笑んでいる。


「仲がよろしくて結構じゃないですか。あっ、料理が来ましたよ」


 運ばれた料理を見て、女性陣が目を輝かせる。そんな中で、団長がアーシャさんに視線を送っている。


「………………」


 俺の右目に宿った力――【緋色の宝石眼(ガーネットアイズ)】が、団長の懸念を見透かしていた。

どうやらこの右目には、定めた相手の思考を把握する効力があるようで、魔力を押さえている状態の今はぼんやりとだが、魔力を目に集中するとハッキリと伝わってくる。


「ともあれ、グリム団長、そしてヴェルト。準決勝進出おめでとう!」


 フィンラルが祝杯の音頭をとると、周りのお客さんの中にも観戦者がいたようで、拍手を送られた。


「ありがとう、フィンラル。さっきも言ったけど、フィンラルも本当に惜しかったな」


「そうだな。まさか、【聖鎖拘束(ジェイルバンド)】を習得しているとは、恐れ入ったよ。あの魔法は、光属性の適性が無いと使えんし、その存在は稀有だ。基本的には教会か騎士団に属するものだが……」


 団長が真面目な顔でフィンラルを見遣る。


「……ありがとうございます。剣の技術はまだ及びませんでしたが、心では負けなかったつもりです。これからも、団長の下で精進します」


 ふっ、と団長が笑うと、「そうか」と一言、どこか嬉しそうに呟いた。


「シャルール・レオニス……。団長、正直、彼はどのくらいの力を出して俺と戦っていたのでしょうか?」


「そうだな……。アイツも去年より相当腕を上げているようだ。そこを計算に入れると六割程、だと思う」


 あれだけのレベルでまだ六割だというのだから、つくづく称号持ちとの力の差を思い知らされる。


「フィンラル、ヴェルト。よく聞いておけ。俺たち称号を持つ者の中には、魔剣の『その先』を扱う者も居る。その力は他の全てを凌駕する」


「魔剣の、『その先』……?」


 団長が笑みを浮かべる。


「すぐに分かるさ。それよりも、対策を考えよう」


 そう言って、二回戦終了時に渡された書類を広げる。




 闘技大会・準決勝


 第一試合 シャルール・レオニス(26871) 対 フェイト・グリム(20008)


 第二試合 ヴェルト・ダンツァー(165549) 対 ザクス・クレイル(32149)



 となっていた。


 魔力隠匿のピアスを二つとも取ったとは言え、俺の魔力の桁がいくらなんでもおかしいと思ったが、団長やミーナが言うには、これでも無意識に(もしくは俺の中のグレドラードが)抑えているらしい。


「ヴェルト、分かっているとは思うが、魔闘値はあてにするなよ。魔力差に気圧されるような相手じゃない。それどころか、ハッキリ言って分が悪すぎる」


 俺は言葉無く頷く。

 本能的に理解していた。あの全てを見透かしたようなエメラルドの目。ただ話をしていただけなのに、全身にビリビリ伝わるプレッシャー。正直、格が全く違う。

 それに加えて先ほどの団長の話だ。魔剣の『その先』を、間違いなくこの男も扱えるだろう。


「あんなに強くなっているのに、ですか?」


 ティアーナが恐る恐る団長へ聞く。


「そうだね。剣技と言う点では正直、俺でも全く歯が立たないだろう。魔法戦を挑もうにも、ヴェルトは魔法を扱ったことが無いのだから、経験に乏しい。未だに宝の持ち腐れ状態なんだよ」


 悔しいが事実だ。

魔法は『零の氷刃』を扱えるように特訓していたので、氷属性の魔法はある程度扱えるが、()()()()でしかないのだ。


「今から魔法をバンバン習得、って訳にはいかない以上、持っている武器で戦うしかないさ。ま、見ててくれよ!タダでは負けてやらねーからさ!!」


 と言ってみたものの、今の所アイデアは思い浮かんでいない。

 でも、それで良い。今の俺がどこにいるのかを知れる、またと無い機会だ。それも相手は世界一の剣士。贅沢な事この上ない。


「団長はどうなんだ?シャルール選手とは、去年の決勝の相手なんだろ?」


「そうだね。アイツは強い。ふふ、久しぶりに高揚するよ。明日が楽しみで仕方が無い」


 心底嬉しそうに、団長はそう言って笑った。




 ―同時刻・街頭モニターにて―


『――と、ここで決着。明日の準決勝に進出となりました。また、ベストエイトに残った選手で、クレスタ・グローリィ選手に<風神>の称号が送られました。同じく、クレスタ選手との対戦で勝利を収めたヴェルト・ダンツァー選手にも称号が送られており、その名を<氷獄>と名づけられた模様です。 いよいよ明日は準決勝。ここまで勝ち抜いた四人のつわもの達。誰が栄光を手にするのか、目が離せませんね!!以上、ニュース速報をお伝え致しました』



 そのニュースを、一人の青年が見上げていた。

蒼い目をした青年は、ポケットに手を突っ込んで、踵を返して、そのまま路地裏へと歩き出した。


「…………クハハッ!これは楽しみだ」


 青年はポケットからコインを取り出し、指で弾き上げる。


「さぁて、どう動こうかな……どうせなら、盛大に楽しみたいところだが……」


 クハハ、と笑い声が路地に木霊した。

ここまで人が減ってようやく安心してる作者がいます!


レイヴァンってどんなんだっけとか言わないでね?ww

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