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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
28/37

覚醒

お待たせ致しました!

右腕飛んだ続きになります!


「…………は?」


 足元に、容赦なくボタボタと血が流れ落ちる。肘より先の感覚が一切無く、痛みも無い。

状況を頭が理解できていないのだ。


「なん……俺の、う、で?あ、ああ、あガァアアあああ!!!!」


 理解した途端に、燃えるように熱い痛みが襲う。両膝を折り、右腕を押さえつける。

纏っていた【薄氷金剛鎧(コフィン)】が砕け散り、誰の目から見ても戦闘続行は不可能だった。


「……ツマンネー最後だなァ、オイ」


 クレスタが背を向けて闘技場を去ろうと歩き出す。

そして、実況がクレスタの勝利宣言をするタイミングで、異変は起こった。


「ぁ、ぁ……グ、グギャアアア!!あぐゥ……ガァアア!!」


 クレスタが足を止めて振り返る。


「ア?なんだ?苦しみ方が変わった、のか?」


 ボタボタと流れ落ちる血が、やがて青と黒の炎のような魔力流へと変わり、ヴェルトの身体を包んだ。


「な、何が起きてやがる!?……っ!ラァッ!!」


 クレスタが【獣爪風切(ダインスレイフ)】を振るう。が、その全てが青黒い魔力流に掻き消された。




―選手控室―


「っ!!?まずい!!」


 試合を見守っていたグリムが席を立ち、急いで部屋を出る。選手通路へと向かう途中で、同じく観戦中に異変に気付いたティアーナ、フィンラル、アーシャ、ミーナと合流する。


「団長、この魔力は!!」


「ああ。完全に暴走している」


 それを聞いたティアーナが血の気の引いた顔をして


「そんなっ!!ヴェルトは、どうなるんですか?」


 と、訴える。

 正直、魔力暴走を引き起こした者が正気に戻ることなど、二割にも満たない。ましてや、ヴェルトの魔力はおよそ人間が抱えている魔力量では量れない。そんな膨大な魔力が暴走しているのだ。


「すまない、ハッキリ言おう。絶望的だ。命が助かったとしても、元のアイツに戻ることは……ないと思う」


 ピタ、とティアーナの足が止まり、その場に崩れ落ちる。それをアーシャとミーナが支える。


「二人とも、ティアーナ君を頼む」


 グリムが言うと、アーシャとミーナが小さく頷いた。


「団長、ハッキリと言い過ぎなのでは?」


「……希望を持たせすぎない方が良い。こういう事態では、特にな。だが、フィンラル。お前には伝えておこうと思う」


「?……なんですか?」


「推測でしかないが……もしかしたら、魔力の暴走では無く――」




―観客席―


「おいおいおい、シャレになってねえぞ!!」


「まさか、これほどとは……」


 ランドルフとアメリアが席を立ち、警戒する。

その眼前には、フードの二人組が立っていた。


「あははぁ!すごいすごぉい!!これが、グレドラードの魔力かぁ!!」


「こぉら!!はしゃがないの。まったくもう!!……ごめんなさいねぇ、この子、躾がなってなくてぇ」


「あん?躾がなってねえのは、お前もだろ?ガンガン殺気送りつけやがって!!はっ、まぁ俺もだがな」


 二人組がフードを外す。


「ごめんなさいね、そこまで強く警戒と敵意を剥き出しにされちゃうと、育ちが良くないからどうしても勝手に出ちゃうのよ、ランドルフ・グローリィさんに、アメリア・ニムレットさん」


「っっ!!」


「……名乗った覚えは、無ぇんだがな」


 ランドルフが大剣を構える。


「アラ、アナタを知らない人が、この国にいると思って?<修羅>のランドルフさん」


 女は長い黒髪を後ろに纏めると、再び闘技場へと視線を向ける。


「ま、今はあなた達と争うつもりは無いの。ホラ、そんな事より、いよいよ始まるわよぉ。さぁて、どうなるのかしらねェ。お姉さんに、見せてごらんなさいな」


 舌なめずりをして、女は妖艶に嗤った。




――


――――


『やっと、繋がったか』


 声が響く。


『魔法が使えない制限があったとはいえ、情けないものだな』


「――――――!!」


 声が出なかった。


『どうだ?悔しいか?なぁに。心配はいらない。呪い歌の効果で死ぬ事はないのだからな』


「――――――!!!!」


 俺は訴えた。願った。そして……


『ほう?人間如きが、俺に願うか……面白い』


 パキン!と何かが外れた音がした。その瞬間に、みるみる力が溢れ出すのが分かった。

リミッターが外れたのだ。


『見せてみろ。要求を呑むも呑まぬも、貴様次第よ』


 そして、俺の意識は我に返った。





 ―闘技場―


 火柱のような魔力流が、俺を包んでいた。右腕に視線をやると、血が流れていた。

どれくらいの時間、俺の意識は飛んでいたのだろうか。


「……」


 靄がかった視界の中、俺は歩き始める。中央へ向かって。

ついさっきまで俺の右腕だったものを拾い上げる。


「オイ……。テメェ、まさか、まだ続けるつもりか?」


「…………」


 クレスタの問いに無言で睨み返す。


「聞いてん――ぐあっ!!!?」


 【零の氷刃】を拾い上げた俺は、剣を握っていた自分の右腕をクレスタに向けて弾き飛ばした。

辛うじて致命傷を避けたが、クレスタの脇腹には出血が見て取れた。


(俺は何をしている……!?何が起きている!?)


 自分で自分の行動の意味が分かっていなかった。

だが、自分の意志で動いていることも間違いなかった。


「ぐ、上等だ!!喰ら――っっ!!」


 クレスタが顔から思いっきり地面に激突する。クレスタの足ごと地面が凍結されており、大きな氷の花を咲かせている。


「クク、美しいだろう?【雪月花(せつげっか)】と言うのだ」


(知らない……。そんな技、俺は……)


 ドクン、ドクンと心臓の音が脳内に響き渡る。


(まただ!!あの右目が……燃えるように熱いッッ!!)


 ドックン!!とひときわ強く心臓が跳ねる。その瞬間に俺の意識が()()()の意識と混ざり合う。



『さあ、やってみせろ。今の貴様には制限などないぞ。せいぜいその『覚悟』とやらを、俺に届けてみる事だ、クククク』


 その言葉を受けた後すぐに、身体の内側から燃えるような熱を感じた。

右目と同じ熱が、身体全体に巡る。

混ざっているのだ。人間(オレ)の血と、魔王(アイツ)の血が。



 意識が戻ると、クレスタが脇腹を押さえ、こちらを睨んでいる。その傍らには俺の右腕が無造作に落ちていた。

自分の右腕を見る。肘より先が無い。傷口から流れ出る血液を見て、俺は全てを悟ったのだ。


(――っ! そうか。もう、戻れないんだな……)


 闇のように黒い血がボタボタと落ちる。その傷口に左手を添えて、魔力を込め、知らない魔法を行使する。


「……【在ルベキ姿ヘ巻キ戻ル(リ・ワインド)】」


 唱えた時点で、俺の腕だけ時間が巻き戻る。地面に付いた血痕まで何事もなかったかのように巻き戻る。右腕に血が混ざっていく。熱い。アツイ。



 クレスタが後退りながらも【獣爪風切(ダインスレイフ)】を構える。


「オイ……。お前は一体、誰だ?」


「……………………」


 俺は無言で前に出る。クレスタの眼を真っ直ぐに()()


「その眼は何なんだ?!」

「その眼は何なんだ」


 同時に全く同じ言葉を発言する。


「な――」

「なぜ理解(わか)った、だろう?」


 クレスタが完全にたじろぎ、更に警戒を強める。


「観えるんだよ。この右眼を通じて、お前の思考が、全て」


「ざけんな!!んなことがあってたまるか!!!!お前はここでくたばっとけ、化け物がっっ!!!!」


 クレスタから発せられる罵声が、俺にはとても心地よかった。

生まれ育った村では『魔力だけのゴミ』、『実の妹さえ見捨てた根性無し』と指を差され続けた。

だが、今はどうだ? 俺の魔力が、全てにおいて機能したこの状況は!?

この俺の力を目にして、強がりで浴びせてくる罵声。


(アア――――タマラナイ。堪らないな!)


「あははははははは!!初めての感覚だよ!!もう一度、やり合おう、クレスタぁっ!!」


 再び【薄氷金剛鎧(コフィン)】を身に纏う。

俺は両腕を広げ、いつでも好きなだけ打って来いとアピールをする。


「……ッッ!!舐めやがってぇ!!!!」


 クレスタの魔力が【獣爪風切】に全て集約されると、その爪の形状が徐々に変わり、そのまま腕と一体化し、大砲の砲身に変化した。


「滅びろおぉ!!【虎牙殲龍砲(グラン・カノン)】ッッ!!!!」


 とてつもなく強大な魔力のエネルギーが俺を目掛けて発射された。

俺は両腕を広げたまま、その攻撃を()()()()()


(ふふ、参ったなぁ……)


 俺は嬉しさのあまり、油断に油断を重ねた。それでも尚、クレスタの刃は俺に届く事はない事を確信していた。その事実が更に俺を恍惚とさせていた。


 右腕を天へと上げ、指を鳴らすと、クレスタの全力で放った【虎牙殲龍砲】が全て跡形もなく消え去った。最初から何も無かったかのように。


「クレスタ、ありがとう」


 俺は、魔力が尽きかけて膝を着いているクレスタに歩み寄り、握手を求めた。

自身最大の魔法をいとも簡単に掻き消されたショックと怒りに加えて、訳の分からない礼を言われ、クレスタは困惑する。


「お前のおかげだ。この力があれば、俺は、奴を殺す事ができる!!ようやくだ!!これが喜ばずにはいられるか?そうだろう?ふふ、アハハハハハハ!!」


 無理矢理クレスタの手を取り、立ち上がらせる。


「さぁて、続けるかい?」


「……降参だ」




『しょ……勝負あり!勝者、ヴェルト・ダンツアー!!』


 アナウンスが流れるが、観客は全員息を飲んでいた。


「……オイ」


「うん?」


 クレスタが俺を呼びとめる。


「聞かせろ。お前は何者なんだ?」


 俺は自分の頭に人差し指を持っていきクレスタに『思念通知(クリフ)をする』と合図を送る。


「「俺も最近まで知らなかった事ではあるが、六百年前の魔王、グレドラードの生まれ変わり、だってさ」」


 クレスタが目を丸くする。そして――


「ハッ、ハハハハハ!!」


 笑いながら うん、うん、と頷き、納得を示す。


「「お前、さっきまでの態度、自分でも興奮と混乱で理解できてなかったな?」」


「「はは、今もだよ。すまなかったな、クレスタ。今度は魔王の力は抜きで、ヴェルトとして戦いたいんだが、応じてくれるかい?」」


 思念通知をしながら、両者は別々のゲートへと向かって退場する。


「「ざけんな。俺はその力を認めねぇ。その力を越えてみせる!!そしてその力を、否定してやる」」


 俺はクレスタを振り返った。

負けたはずのクレスタが、右腕をあげて『ガッツポーズ』を取っていた。

如何でしたか?

楽しんで頂けましたら嬉しいです♪

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