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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
27/37

邂逅する二人

お待たせしました!

いよいよ?やっと?主人公の出番です!


 ―闘技場・選手通路―


「二回戦突破、おめでとう」


 通路を歩いていたグリムの陰から、ふと声がかかった。


「どうもありがとう。どうやら今回は、私に運が味方してくれたようだ」


「くはは、面白い冗談だ。百回やっても負ける要素などなかっただろう?」


 柱に寄り掛かった長身の男が、平然と事実を述べる。


「貴方にそう言われてしまっては、今後も負ける訳にはいかないな、<剣聖>ザクス・クレイル殿」


 ザクスがグリムへと歩み、背中合わせに足を止める。


「決勝では、愉しませてくれるのだろう?」


 絶対的な自信を浮かべて、言い放つ。


「その前に、もう一つ勝たなくては、ね」


 グリムの脳裏にシャルールが浮かぶ。昔からのライバル関係にある彼との勝負だけは、グリムの中でも特別だった。しかし……。


「なに。君なら……ちょっと本気になれば、軽く捻れる相手だろう?……<星砕(セイサイ)>ならば」


 グリムの眉がピクッと反応し、振り返る。


「ふふ、すまないな。別に詮索をしようっていう訳じゃないさ。本当に楽しみで仕方がないのさ」


 そう言って背中を向けたままザクスが歩く。


「あの男、どこまで知って……」


 残されたグリムは、その背中が見えなくなるまで、その場で見送るのだった。




―同刻・闘技場客席―


「さぁて、次がいよいよ、か」


 大柄な男が呟くと、との隣で、カジュアルな服に身を包んだ小柄な女性が答える。


「そうですね。これもまた、()()()()()、ということになるのでしょうか」


「いまだに信じられねぇがな。転生だの、魔王だのと」


 大男――ランドルフ・グローリィが、笑いながら言葉を続ける。


「まさか、クレスタが()()()()()()()()()たぁなぁ。アンタ、いつから気づいてたんだ?」


 問われた女性――アメリア・ニムレットがニコッと笑い


「今もまだ、確信と言うには早すぎましょう。それを確かめるために、観戦に来たのですから。……彼らも、ね」


 アメリアの視線の先は、ワインレッドのフードをかぶった人物が二人を捉えていた。


「『禍罪』、だっけか?どっちも大した手練れだが、特に左の女はなかなかヤベェな。誰にも気づかれる事無く、俺にだけ殺意と警戒を向けていやがる……!!」


 フードの女がランドルフを振り返り、微笑みかけると、すぐに視線を戻す。無論、警戒は一切解いてはおらず、どこにも隙などは見つからない。その代わりに殺気は解かれていた。『そちらが何もしなければ、こちらも手出しはしない』という事だろう。


「彼女らの興味は、『魔王』の方でしょう。先日、彼が教会に持ち込んだ【零の氷刃(アルマス)】についてもコルドー司教に嗅ぎ回っていたみたいですし」


「ま、ともかく、俺は息子たちの成長を拝ませてもらうとするよ。後の事は、あとで決めりゃいいのさ」


 手すりに両腕を乗せて、ランドルフが闘技場を見据えると、二人の選手が同時に現れるのだった。



―闘技場―


 頻りに右手をグーパーさせる。緊張感と高揚感がせめぎあっている時に出る俺の癖だ。


「いよいよだ。約束を果たす時が来たぞ、クレスタ・グローリィ」


 自然と笑みがこぼれる。予選の動きや、一回戦を見ている分だと、現状ではクレスタの方が若干強いと思える。だが、俺は知っている。実力が拮抗している相手は、自分よりも強く見えてしまうものだと。


(焦るな、逸るな)


 俺はこの一戦に、団長ともフィンラルとも違う、特別な感情を抱いていた。

予感、とも言えるだろうか。この先、クレスタとは、何度も戦うことになるのだろうという、漠然とした、そんな予感だった。


 一呼吸置いて、歩き出した。このゲートを潜ると、いよいよ始まるのだ。



 わああああ!!!!と歓声が上がる。

俺は正面からふてぶてしい笑みを浮かべる男から目を逸らさずに歩く。恐らく、クレスタも似たような事を思っているんだろう。そう思うと、少し可笑しかった。


「よぉ、真面目(いいこ)ちゃん。良く勝ち残ったな、褒めてやるよ」


「まがりなりにも、約束したからね。でも、いつの間にか、戦う理由なんか、どうでもよくなっていたよ」


 そう、正直に伝える。そう。事の発端はシスターアメリアとクレスタの間での意見の相違で、頭に血が上ったクレスタを嗜めるような形であったはずだ。それを、今の今まで忘れ去っていたあたり、既に俺の中ではどうでもよかったのだろう。


「奇遇だな。俺も同じだぜ。てめえをズタボロにする事以外は、全部どうでもよくなってたよ」


『これより、注目の一戦!!二つのギルドの二人のルーキー同士の一戦です!!果たしてどちらが勝つのか、目が離せません!』


 実況が煽りを入れる。


「始まるぜ。負けた時の言い訳は考えてきたかよ?」


「いいや。勝った時のガッツポーズだけだね」


「はっ!抜かしてろ!!」


『それでは、これより二回戦、第三試合 ヴェルト・ダンツァー 対 クレスタ・グローリィの試合を開始いたします』


 二人揃って笑みを携えながら、構える。


『試合、開始っっ!!』


 合図と共に、クレスタの姿が視界から消えた。

ヒュッ、ヒュン、ヒュ、と風を切る音が耳に届く。俺の目には、クレスタの姿が捉えきれていなかった。

それでもクレスタが攻撃を仕掛けてこないのは、俺が【氷障壁(アイシングウォール)】を張っているからだった。


「防いだ!つもりか!よぉっ!!」


 クレスタが鋭利な爪を立て、分厚い氷の壁をまるでバターのように切り裂いた。

その一瞬の硬直を狙って、【氷の刃(アイシクルエッジ)】を飛ばす。無数の大小様々な鋭利な氷柱(つらら)がクレスタに向かって飛んでいく。


(おせ)ぇ!見てからでも十分避けれンだよ!!」


 再び、クレスタが視界から消える。

そして、俺の周りにあった氷障壁をバラバラに切り刻み、俺に向けて【爆突風(ファルシ)】を唱えると、その突風に乗って、切り刻まれた氷の(つぶて)が襲い掛かる。


「フッ!」


 俺は横に飛び退きながら、新たに氷障壁を展開する。

すると、クレスタが姿を晒す。


「そのまま防戦一方で終わるつもりかよ?魔力が尽きていくだけで、ジリ貧なんじゃねーのかァ?」


「心配は要らないよ。そうだな。お前には見せておこうか。本当の俺を」


 俺はそう言って、二つのピアスを外した。その瞬間に、俺の魔力が莫大に跳ね上がったのを感じたのだろう、クレスタは一瞬たじろいだ。


「て、めえ……なんつう魔力隠してやがる!!化物じゃねぇか」


 そう言いながらも、口元からは笑みが漏れている。


「はは、色々と不都合も多いからね」


「だろうな。……なら、俺も出し惜しみしてる場合じゃねェよな」


 その瞬間、クレスタが纏う魔力が一気に膨れ上がり、鋭く洗練されていく。やがて両手の先に鋭く尖った三本の爪状のオーラを纏う。


「待たせたな。これが俺の魔剣【獣爪風切(ダインスレイフ)】だ。さっきまでの攻撃とは比べもんになんねーぞ。 ……いいか?先に一つだけ言っておく。集中力を引き上げておけ。一瞬で終わらせるつもりではいるが、それじゃあつまらないと思っている自分もいる。不思議な感覚だがな」


 クレスタが初めて真顔で言い放った。そのまま片腕を振るうと、三重に張った氷障壁を一瞬で粉々にした。

この攻撃をまともに受けてしまえば、一撃で戦闘不能だ。【魔力抵抗(アンチイービル)】を身体に纏う事ができれば受ける事も出来るかもしれないが、俺が使っている魔法は、剣を媒介にしている以上、魔剣の属性以外の魔法を使う事はできない。


「……随分と厄介な力だな、クレスタ・グローリィ」


「テメェにもあんだろ?まだ見せてねェ、底がよォ!!」


 クレスタが再び腕を振る。


(どうする?どうする?どうすればいい!?)


 思考を巡らせながら、必死に動き回る。しかし、徐々に追い込まれていく。


「オラ!もう逃げ場はねえぞ」


(くっ、このまま何もせずに負けるくらいならば……っっ!!)


 頭の中で想像する。『どんな攻撃も受け付けない重厚な鎧』、『機動力と可動域を損なう事の無い薄さと軽さ』を。そしてそれを『身に付けた自分の姿』を。


「……できた。【薄氷金剛鎧(コフィン)】。これなら……!!」


 俺は【獣爪風切】の攻撃を想定して作り上げた新魔法(オリジナル)を成功させ、反撃の姿勢を見せた。


「今度はこっちから行くぞ!!クレスタァァあああ!!!!」


「…………チッ!!」


 真正面から二人が交錯する。最高速のまま、俺はクレスタを目掛けて刺突を繰り出した。

ガギイィィィィィン!!!!


 激しい音が響き渡り、闘技場内が静まり返る。

お互いの位置を入れ替えて背中合わせに着地する。一瞬遅れて、交錯した地点の地面に魔剣が刺さる。

そう……。


 ()()()()()()、【零の氷刃(アルマス)】が真っ直ぐに――

腕がぽーん♪

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