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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
25/37

想定外

寒くなってきました!

皆様、風邪ひかないように気を付けてくださいね

 試合が開始されて二十と数秒。

両者一歩も動かぬまま、時を刻んでいた。

騒がしかった観客たちも、徐々に静かになり始める。


「どうしたフィンラル・ゼルファルド。いつでもいい。先手はくれてやるぞ?それとも、踏み込むのが怖いか?」


「貴方を相手に無警戒で飛び込む程、間抜けではないさ。だが、そこまで言うんだ。先手はいただ――っっ!?」


 フィンラルが踏み込む為に軸足に力を込めた瞬間、地面に流砂が生じ、そのまま下半身が飲み込まれていく。


「ちぃっ!石の槍(ストナ)!!」


 フィンラルの下半身を覆っていた砂や石をそのまま槍状に変え、シャルールに向け発動したが、それらを危なげなく避けていく。最後の槍を掌で受け止める。


「ぬるいな」


 そのままただの砂と化し、サラサラと地面へと落ちていく。


「チイッ、ならばっ!!」


フィンラルは再び構えて、魔力感知での警戒を解いた。


(警戒しても感知できないのなら、警戒しても意味がない)


 フィンラルの周りに無数の火炎球(ファイアーボール)が現れると、シャルール目掛けて一斉に飛び出すが、移動しながら剣で切り払われる。


(ここだ!)

大地強震(クエイク)っ!!」


 この上ないタイミングで発動された魔法による地震で、シャルールのバランスを奪った。

そしてそのまま真っ直ぐに加速し、目にも留まらぬ速さの二段突きを放つ。


「【紫電(シデン)】っ!!」


 その突きはシャルールの右の肺と腹部を的確に貫いた。

眼を見開き、視線を落とすシャルールが、そのまま――ドロッと溶けた。


「こっちだ」


 フィンラルは振り返らずに声とは逆の方向に飛び退く。しかし、シャルールの剣先がフィンラルの喉元に、ピタリと止まる。




『こ、これは、勝負有りかぁ?!』


 まさに薄皮一枚、と言ったところだ。


 実況が決着を促すも、判定が下る気配はない。

観客たちも「シャルの勝ち、だろう?」「どう見ても決まってる、よな?」などと囁かれていた。


「ははは、フィンラル。それは流石に俺も驚いた。想定外だよ」


 グリムは、二人の試合を見て、素直な感想を口にした。


(正直、シャルールの圧勝だと思っていたよ。実際、二人の間にはまだまだ実力差は大きい。だがどうだ?こんな局面、誰が予想しただろうか)


「もしかして、君はギルドではなく、聖騎士団の方が適任なんじゃないかと思えてきたよ」


 実力ある者達の目には、しっかりと見えていた。シャルールの両手両足にしっかりと巻きつけられた『聖鎖拘束(ジェイルバンド)』が。




「……見事だなフィンラル・ゼルファルド。正直、驚いたぞ。心・技・体、全てにおいて私には及ばないと見くびっていた。まさか、聖騎士と教会以外で、聖鎖拘束を扱う者がいるとは想定外だった」


 フィンラルが首を横に振る。


「それは紛れもない事実です。しかし、心というのはいつだって不確かで揺れ動くもの。想い一つで力は変わる。それを私は学んだんだ」


 二人の後輩が脳裏に浮かぶ。


「なるほど。本当に見事だフィンラル・ゼルファルド。これは褒美だ、受け取れ!」


 シャルールの右腕を拘束していた光の鎖がパキンと割れて、そのまま剣を振り下ろした。

咄嗟に避けたが、左の太ももに剣を受けてしまった。


「っ!なぜだ!?聖鎖拘束は術者以外に解く方法は無いはず……」


「いいや、有るね」


 そう答えて、全ての鎖を割ってみせるシャルール。


「光魔法は、より強い光属性の魔力で破れる。シイッッ!!」


「ぐっ!つぅっ……」


 右腕、右足を刺され、顔を険しくする。

それでも尚、フィンラルが勝利を諦める事はなかった。


「だあぁっ!!」


 立ち上がり、足に力を込めてシャルールに向かい剣を振るうも、その全てを尽く躱される。


「そして、俺が何と呼ばれているか、よもや忘れた訳でもあるまい」


 <与奪>

それがシャルール・レオニスに与えられた通り名。その意味は――


「奪うも」


 立ち上がろうと踏ん張っていた左足が力なく崩れる。


「与えるも」


 地面を支えていた両腕に、急に力が入り、そのまま身体を押し出すように後ろへと飛ばされる。


「俺の意のするまま。それが俺の魔剣【与奪刀(ミュルグレス)】の能力だ」


 視線の先のフィンラルは、左腕だけで剣を構える。


「ほぅ。まだ目は死んでいない、か。だが、既にお前には何も出来ることはない。こんな見え見えの魔法すらも、避ける術は持たないのだから、なっ!!」


 シャルールは指先で魔法人を描くと、そこから赤黒い光が発射された。


(まだ、まだだ!!)


赤黒い光――【黒閃光(ブラックレイ)】がフィンラルの右肩を貫く。


「ぐああぁ!!」


(ぐぅっ、この魔力、闇属性か!!)


 闇属性の魔法は、直接精神に影響を与える。人は劣勢であれば、焦りや憤りで心が弱ってしまう。そこに付け込み、気力を奪ったり、最悪、正気を失う事もある。


「やはり、芯のある心を持っているようだな」


 シャルールがゆっくりと歩きだす。

ザッ、ザッ、ザッ。


(あと、二メートル……二歩、あと一歩……)


そこでピタリと、シャルールの歩みが止まる。


「終わりだ。いい刺激になったぞ、フィンラル・ゼルファルドっ!!」


 止めを刺さんと一気に足を踏み出した。


「……爆発(フレアー)


ドゴォォオオォン!!!!と爆音が鳴り響くと同時に煙に包まれる。


「ぬぅ……」


 爆風から飛び退き、後退するシャルールの左腕には、爆発によるダメージを負っていた。


「あの至近距離で、これ程のフレアーを撃つとは、相内覚悟の上か」


「いいや、この一撃の為だよ!!せあぁっっ!!!!」


 そこに居るはずが無い男が、反撃出来る訳も無い男が、意識の外から攻撃を繰り出してきた事実。

シャルールは素直に、フィンラルという男をこの時、認めた。


「ガッ、かはっ、届いて……い」


 ドシャ、と地面に倒れこむ。


「ああ。しっかりと、届いていた」



『勝者、シャルール・レオニス!!!!』


 勝者の宣告と同時に、シャルールが膝を折る。脇腹から血が滲み出ており、まさに紙一重であった。


「……また一人、厄介なやつが出てきたものだ」


 どこか嬉しそうに笑って、フィンラルに視線を向けていた。




―シスマーニ闘技場・医務室―


「フィンラル、惜しかったなぁ」


 目が覚めたフィンラルに向けて俺は感想を漏らす。


「いや、実際に対峙してみて分かったが、今のままだったら、百回戦っても百回負けるだろうな。結果だけ見れば『惜しかった』で済むのかもしれないが……」


「そうだな。まだまだ剣の実力では及ばないだろう」


 ドアの前に立っていた団長がフィンラルの元へと歩み寄る。


「だがしかし、それを補った戦い方をお前は見せた。正直、今回はまだシャルールの圧勝で終わると思っていたからな。一太刀でも浴びせられれば十分な戦果だろう、とな」


 本心だろう。実際、彼らの剣の実力は相当なものである。付け入る隙があるとすれば、魔法戦にはなるが、相手はやはり百戦錬磨だ。勝率が一パーセントから三パーセントに上がる程度の物だろう。

それを今回、フィンラルは勝てるかも?と思える確率まで引き上げて見せたのだ。


「本当に見事だった、と言わざるを得ないな。完全な劣勢さえも、作戦に組み込んだお前の勝ちへの道筋は」


「どういう事だ?」


「シャルールの魔剣、与奪刀(ミュルグレス)は、傷つけた箇所に魔力を流し込み、運動能力を意のままに操る事が出来る能力だ。魔力が体内に残っている内は、シャルールが『奪』と思えば一切動かせないし、『与』と思えば勝手に動き出す、といった具合にな」


 団長が魔剣の説明をすると、フィンラルもまた、解説してくれた。


「そう。両足と右手の自由を奪われた時点で、既に勝負はついていた。本来なら」


 そこまで言われて俺はようやく気が付いた。


「そうか!フレアーの爆煙で視界を遮り、退魔の剣(シューレ)で自分の傷口を切ったのか!だから自由に動けるようになって……なるほどなぁ!!」


「しかし、俺が驚いたのは、その前だ。まさか騎士団でも教会所属でもないお前が【聖鎖拘束】を覚えているとはな」


「ははは、詰めが甘かったようですが」


「まあ、相手が悪かった、としか言いようがないな。称号持ち以外なら、あそこで勝負は決まっていたさ」


 一通り解説し終わったところで、第二試合のアナウンスが入る。


『これより十五分後に、二回戦第二試合、フェイト・グリム選手 対 シイラ・ベスティア選手の試合を行います』


「お呼びのようだ。では、行ってくる」


「……団長」


 フィンラルが呼びとめる。


「分かっているさ。俺も、少なからず思うところはあったからな。見届けろ」


「はい。頑張ってください」


 これはシイラ選手が事情お構いなしにミーナと試合をしたことに対する憤りの事を言っているのだろう。フィンラルが拳を握りしめていた。ふと、俺の右手も、固く握りしめられていた事に気が付いた。

 ミーナ本人は気にするな、と言っていたが、やはり少々、身勝手が過ぎると思う。


(団長、しっかりお灸を据えてやってくださいよ……!!)


 称号持ち同士の戦いが始まろうとしていた。

瞬断VS戦華

称号とか通り名って心躍るよなぁ!?

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