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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
24/37

選ばれし者

お待たせしました。最新話になります!

―ホテル・アインス<一四〇五号室>―


 夕食後、フィンラルがミーナを送ると言うので二人と別れた後、俺と団長、ティアーナは俺の部屋に集まっていた。

 『私に力を貸して』と言うミーナの想いは強く伝わってきたのだが、この件は一旦保留となった。

 ミーナが知る限り、蘭の禁呪は【思念探知(サイコメトリー)】と呼び、魔力で繋がった者の思考や記憶までも覗く事ができるのだと言う。


 禍罪と言う組織の目的が分からない以上、そして、他の幹部達も蘭と同様、もしかしたらそれ以上の強さを持っている可能性だってある。現時点で答えを出す事は出来ないと、全員が判断した。

しかし、蘭が俺に興味を持ったような発言をしていた事もあり、協力体制は取る方針で一先ずは落ち着いた。



「なぁ、団長。俺が寝ている間の二つの試合、どうなったのか説明してもらえないかな?あと、ザクス・クレイルの魔闘値(162)は、いくらなんでも低すぎやしないか?」


 それを聞いて、団長が説明を始める。


「では、後者の疑問点から説明するぞ。簡単な事だ。<剣聖>ザクス・クレイルは、何一つ実力を出さずに勝利したのさ」


 俺は耳を疑った。


「はあ?! ちょっと待ってくれ!対戦相手のスケイル・レティーシア選手の予選は見ていたが、かなりの実力だった筈だぞ」


「分かっているさ。彼女は前回の大会で俺が倒した相手だからな」


 団長は真剣な眼差しで続ける。


「それでも、ザクスは()()()()()()()()レティーシア君を倒して見せたのさ。 更に言えば、()()()使()()()()、ね」


「信じられない……。そんな事が……」


だが、可能なのだ。それだけ、次元が違うという事なのだろう。


「予測でしかないが、俺の最大の魔闘値が五万とするのなら、ザクスの魔闘値は軽くその十倍はあるだろうな」


「マジかよ……」


 俺は驚愕、と言うよりは呆れに近い感情を持った。

団長も十分に化け物染みた強さだ。少なくとも、俺はこの人より強い人間を知らないのだから。

そんな団長の十倍って聞かされても、想像が追い付かない。


「だが、忘れるなヴェルト。魔闘値はあくまでも基準だ。高い方が絶対に強い訳じゃない。三千の奴が三万の奴に勝つ、なんて何度も見てきている」


 俺は頷く。


「レティーシアは、鎖鎌と水弾(アクアバレット)による変則波状攻撃でペースを握ろうとしたが、ザクスは全て見切っていた。 攻撃が当たらず焦りを覚えたレティーシアが、会場全体を覆う程の浸食水害(アックアアルタ)を放とうとしたのだが、後ろに回り込んだザクスが両手でレティーシアの両耳をこう、パーン!っと強く張ってそのまま気絶した」


 団長が自分の両耳を掌でパンッと叩いて見せた。


「うわぁ、エゲツないな……。じゃあ、もう一つの試合は?」


 ただただ剣聖の凄さを知っただけで一切の参考にならなかった為、俺の興味はもう一つの試合、エリオット・クレイドル対ケイ・アマガサへと移っていた。しかし、こちらも似たような試合展開だったのだ。


 スピードに勝るケイ・アマガサを抑える為に、エリオットは予選で見せた植物を成長させる魔法【促進(プロム)】と、操る魔法【活性(アクト)】を使い牽制を試みる。が、触手のように襲いくる(ツタ)や根を身軽に回避し、(ツル)を切り捨てる。


 傍目には、エリオットがうまい具合にアマガサの動きを抑えて、防戦一方にさせているように見えたかもしれないが、実際は逆だった。

 アマガサにはエリオットが付け入る隙がなかった。幾度か仕掛けた攻撃も、その全てに反撃を合わせてくるのだ。攻め手に欠き、魔法維持の為に使い続けている魔力がとうとう尽きて、エリオットはギブアップした。


「――魔力が尽きかけたエリオットの巨大植物をアマガサが一刀両断!戦闘続行不能と判断したエリオットはここでギブアップ、という訳だ。ザクスにしろ、アマガサにしろ、とんでもないレベルにいることは間違いない」


 団長にそこまで言わせるのだから、<剣聖>は勿論の事、ケイ・アマガサも問答無用で怪物クラスなのだろう。


「ねえ、ヴェルト。その二人もそうだけど、明日の試合は大丈夫なの?クレスタ・グローリィ選手、あの人もそうとう強いわよね?」


 ティアーナが心配そうな目を俺に向ける。


「ああ、アイツは強い。正直な所、今の俺が戦っても、十回に七回は負けるんじゃないかな。でも、三回は勝てると思ってる。それに……」


「それに?」


 団長とティアーナが同時に反応する。


「なんて言えばいいのか……俺、今、すげえ成長してる実感があるんだ。今日の試合でもそうだったんだけど、どうすれば勝てるのか、脳が知ってるような感覚があってさ。さっきの言葉とは矛盾するようだけど、負ける気がしないんだ」


 団長がフッ、と笑う。


「まあ、なんにせよ今日はもう休もう。考えすぎて身体が動かなくなる事だってある。今更足掻いたところで、どうにもならんさ」


 そう言って立ち上がり、団長は自分の部屋へと帰っていった。


「じゃあ、俺達も寝るとしようか」


「そうね。……ねえ、ヴェルト」


「ん?」


 ティアーナへと振り返ると、俺の左胸に握り拳をトン、と当てる。


「負けないでね!頑張って!」


「ああ!任せておけ!!」


 心配しつつも応援してくれるティアーナの笑顔に励まされ、俺は眠りについた。




―翌朝―


 七時ちょうどに目を覚ました俺は、寝ぼけた頭を覚醒させようと、洗面台に向かう。筈だったのだが……。


ガチャ

「……アレ?蛇口はどこだ?」


 俺が開けた扉は冷蔵庫だった。

三秒後、冷静になった俺の頭が、顔に熱を送る。


(無いぞ、俺!それはやっちゃいけないだろう!どんなボケだよ!!)


と心の中で突っ込んだ。


 顔を洗って歯を磨き、髭を剃る。しっかりと頭が働き始めたところで、部屋に戻ると、ティアーナが起きていた。


「ヴェルトぉ。おはよぉ~」


 なんとも気の抜けた声が可愛い。

胸元が少しはだけていて、控えめな胸のおかげ?で谷間とは違った魅惑的な『空間』がそこには有った。

彼女がベッドから立ち上がると、ふらふらとした足取りで冷蔵庫を開ける。


「……あれぇ?といれぇ?」


(ティア……それもう俺がやった……!)


五秒後、顔を真っ赤にして、無言でトイレへと向かうティアーナの姿がそこにあった。



―シスマーニ闘技場―


「今日も今日とて、お集まりいただいた皆々様!お待たせいたしました!決勝トーナメント二回戦、そう!準・決・勝!!が開始でございます!! ここに立つ選ばれし八名は、誰が優勝を手にしてもおかしくない実力者だぁ! 『聖剣』アシュカロンは、一体誰の手に渡るのか!栄光を手にできるのはたったの一名!これよりスタートです。お楽しみにぃ!!!!」


 選ばれし八名、と言うフレーズが、俺を奮い立たせる。

団長や、<剣聖>と肩を並べて立っているような、特別感のある言い回し。それだけでここまで浮かれそうになるのだから、俺はもしかしたらかなり単純なのかもしれない。


 第一試合は、フィンラルと、シスマーニ第一ギルド【聖印騎士団(セイクリッド)】団長、<与奪(よだつ)>の異名を持つシャルール・レオニスから始まる。


 控え室で、フィンラルが俺にこう言った。


「ヴェルト。今日の試合は全て集中して見ておいた方が良い。ここまでレベルの高い大会はそうそう無いだろうからね」


 もちろん、そんなことは言われなくても分かっていた。異名を持った実力者が四人もいるのだ。

そして、目の前のこの男、フィンラル・ゼルファルドもまた、肩を並べるにふさわしい実力者であることも。


 俺は何度も団長に戦いを挑んでは返り討ちにあっていた。そんな俺を周りは笑い飛ばした。

だが、フィンラルだけは違った。フィンラルは俺が『いつか団長を倒せる』と言い続けてくれた。

『特訓』と言う名目で、俺とフィンラルは何度も試合をして、その度に俺は敗北した。


 そんな俺だから分かることがある。フィンラルは強い。それも、団長に負けない程に。


 俺は控室でソファに腰を下ろし、試合の開始をゆっくりと待つことにした。

ちなみにティアーナとミーナは、アーシャさんの元で観戦している。団長は、「ここから先は群れないでおこう」と言って、自分の控室へと入っていった。それには俺もフィンラルも同意した。



 一際大きな歓声が上がる。視線を上げると、二人の男が同時に姿を現していた。

目線を逸らさずに中央へと歩む二人。やがて足が止まり、シャルールの視線が右方面へと向けられる。

その先にはフェイト・グリムの控え室があり、彼もまた、二人の戦いを見届ける為に眼差しを送っていた。


「やはり気に入らないな、シャルール・レオニス。あなたが今気にするべきは、グリム団長ではなく私のはずでは?」


「ふん。いつまでも二番手に甘んじている奴に興味はない。悪いが沈んでもらう」


「どう思おうと、あなたの勝手ではあるが、間違いは正しておく必要があるね」


(ヴェルト。打倒グリム団長は、()()()()()()目標だからな!!)


 フィンラルが剣を抜く。その細身の剣の名称はレイピアと呼ばれており、シルエットがとても美しい。その正体は魔剣【退魔の剣(シューレ)】。いかなる魔法もこの剣の前では通用しない。


 合わせて、シャルールも剣を抜く。その赤黒く長い刀身には誰もが目を引かれる。


「甘んじているだって?その言われようは心外だよ。一日だって忘れたことはない。いつだって俺達の目標はフェイト・グリムを超えることだ!!」


「それは叶わぬ夢だ。お前はここで負けて終わりだ」


 二人の握られた剣先が交わり、試合開始の火蓋が切られたのだった。

いよいよ二回戦開始です!

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