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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
21/37

風を切り裂く獣爪

お待たせいたしました!

続きをどうぞ(*´∀`)

―選手控室・フィンラルの部屋―


『続いての第四試合は、ルーク・ファレン 対 シイラ・ベスティア戦を予定していましたが――』


実況のシイラ・ベスティアの不戦勝を告げるアナウンスを聞きながら、当の本人であるミーナ・ファレンは紅茶の入ったカップを傾ける。


「やあ、待たせてしまったかな?」


一回戦を無傷で終えた団長がニコニコと笑顔でミーナの正面に座り、紅茶を注ぐ。


「おや、ミーナさんはダージリン派ですか?」


「特にこだわりはないわね。強いて言えば、茶葉よりもジャムの方が好みが強いかしら」


そう言って、鞄の中から三種類のジャムを取り出す。


「最近は、このパープルベリーのジャムがお気に入りなの。良かったらいかがかしら?」


「ふむ。北方の国、ソリアの飲み方ですね?紅茶にジャムを入れて飲むのでしたか?」


「それも一つの嗜み方ね。でも、本来のソリアンティーは、ジャムを口に含みつつ、紅茶を飲むのが主流なのよ」


何故こんなにも和やかな空気になっているのか……。


「えーと、ミーナさん、団長。話を戻したいのですが……」


「ヴェルト。一回戦が終わるまでは恐らく落ち着く暇がない。お前の試合も控えているんだ。今日の夜、食事の場を設けてそこで話そう。それに次の試合は、二回戦でお前が当たる相手が決まるんだ。よく見ておけ」


団長が言う。俺はミーナに視線を送ると、何とも美味しそうにクッキーを頬張り、ジャムをスプーンで掬い、口へ運ぶ。

そんな様子を見て、「分かりました」と呟いた。


コンコン、とノックの音が響く。

「どうぞ」と、フィンラルが促すと、ドアが開かれ、思わぬ人物が現れる。


「やはりここにいましたか、ミーナ・ファレン」


<戦華>シイラ・ベスティアである。


「これは、意外な客人だ。一体何の用かな?」


「失礼した、ミスター・フィンラル。貴公らと揉めるつもりは無いのだが、これは私が納得するかしないかの問題なのだが……」


一瞬の静寂の後、シイラはミーナを見据えて言葉を続ける。


「私と戦え、ミーナ・ファレン!!」




―同時刻・闘技場―


『ではでは、第五試合を始めていきましょう!!どちらの選手が先に姿を現すのか!』


実況が盛り立てると、客席が一斉に沸き立つ。

先の試合では、解説する事も叶わず終わってしまった事を気にしているのだろうか、気合が入っている。


『おおっとォ!先に入場したのは、カイト・ピエール選手だぁっ!!』


陽気で、ヘンテコな踊りを踊りながら、そのピエロは中央へ向かって進んでいく。

すると、彼の足元で大爆発が起き、ピエロが空中へと吹き飛ばされる。

手足をバタつかせ、慌てた様子を見せるも、ポケットの中から巨大なボールを取り出し地面へ落とすと、その上に着地する、と同時にまた大爆発。

真っ黒に焦げたピエロ――カイトが立ち上がり、客席へ一礼すると、場内からは笑いや拍手が沸き起こる。

気分を良くした素振りを見せ、カイトは両手を腰に手を当て、エッヘン!と胸を反らす。すると、赤く丸い付け鼻がどんどん大きくなっていく。


「なぁ、もう試合開始してもいいか?時間はとっくに過ぎてると思うんだけどよぉ」


いつの間にか、クレスタ・グローリィがカイト・ピエールと背中合わせに立っていた。


「これはこれは、元気いっぱいな相手のようだ。できるだけ長く、戦い(ショー)を堪能してくれたまえ」


「ヘラヘラした余裕面が気に食わねえな。俺がすぐに男前に変えてやらァ!」


『驚きました!いつの間に入場していたのでしょう!?そして早速挑発合戦だぁ!!』


「おい審判!!さっさと始めろ!」


クレスタの怒号で、すぐさま試合開始の宣言が下される。


『し、試合開始っっ!!』


開始と同時に、カイトの赤鼻がさらに大きく膨れ上がる。

クレスタはその鼻をめがけて風属性の魔法【旋風矢(ガル)】を放つ。

風の矢が命中すると、巨大化した鼻が破裂し、紙吹雪が舞う。その全てに『はずれ』と書かれていた。


ガッ!

「!?……っチィ」


カイトがクレスタの右足を掴むと、思いっきり空中へと放り投げる。

クレスタは空中で体を捻り、体制を整えようと試みるも、振り向いた先には既にカイトの姿は無かった。


クレスタの右側後方からジリジリ……という音が鳴る。導火線に火が点いているような音。

その音がどんどん近づいてくる。耳元に聞こえた瞬間、鋭利な爪を立てて腕を振る。


「こっちだよ」


反対の耳元で、カイトが囁く。クレスタは慌てて反転し、カイトを捉える。


「ハイ、お近づきの印だよ♪」


「っ!!?」


攻撃ではない。カイトは爆弾に仕立てた【爆発(フレアー)】を、手渡ししただけなのだ。

クレスタは反射的に、受け取ってしまった。


ドゴォォン!と爆発が起こる。

砂煙が上がる。カイトは、「キャハハハハ」と笑い転げている。


『これはまともにもらってしまったぁ!!クレスタ選手、万事休すかぁ?!』


あの状況では、まともに受けるしかなかった。

そう、()()()()


「ふぅー。あぶねぇあぶねぇ。ちぃっとばかり油断してたぜ」


「なにっ?!」


砂煙が晴れていくと、闘技場の壁際にクレスタが立っていた。


「ペッ、ペッ!ったく。口ん中砂だらけだし、服は汚れるし、ついてねえなあ」


「この上ない完璧なタイミングだったはずだ……!!」


カイトは動揺する。確かに完璧なタイミングだった。

人間の意識を利用した視線誘導(ミスディレクション)を用いたことで、クレスタの意識は完全にカイトを見失っていたのだ。それなのに目の前の男は、殆ど無傷の状態で服に付いた埃を払っている。


「ハッ!勝ちを確信するのが早過ぎんだよ!そんなんだから俺が何をしたのかすら見抜けず、勝手に混乱しちまうんだ」


クレスタは親指を立てた手をグリンと返し、舌を出して首を切る仕草をする。


「テメェの技術は認めてやるよ。確かに俺は出し抜かれたぜ。でもな……ッ!」


クレスタの後方に魔方陣が浮かび上がる。


「所詮、テメェの技は」「手品なんだよ!」


言い終わる前にクレスタが視界から消える。発した言葉()を置き去りにして。


「ぎゃああぁぁぁ!!」


突然、カイトが叫ぶ。

背中の服は破け、まるで巨大な獣に引っ掻かれたかの様な爪痕から、ドクドクと血が溢れだす。


「ぐっ!!クソッ!」


カイトは辺り一面に爆竹をまき散らす。

無論、その一つ一つには魔力が通っていて、衝撃を与えると【爆発(フレアー)】が巻き起こる。


「あぁ、無駄だぜ、それ」


クレスタの爪が魔力に覆われると、その場で乱暴に腕を振るう。その先に暴風が巻き起こり、みるみる内に爆発が起きていく。


「お前のチンケな魔力同調率と一緒にするなよ?俺の風属性の同調率は『九十四%』だ。わかるか?俺の速度(スピード)は、風そのものだ」


やがて全ての爆竹が爆散する。


「ヒッ!?」


「おっ?中々いい表情になったじゃねーか!さぁて、もっと良い男に変えてやっからよぉ!」


そこから先は、まさに圧倒的で一方的な展開である。

もはやカイトは、クレスタの姿さえ捉える事も出来ず、ひたすらに殴られ、蹴られで、顔がボコボコに腫れ上がっていた。


「良い運動ができたし、お前も良い男になったしで、一石二鳥じゃねーか、なぁ?」


「あ、あぐ……ば……ばいりばじだ(まいりました)


『けっちゃーーーく!勝者、クレスタ・グローリィ!!』


クレスタは、カイトのポケットから転がり出た赤い鼻を拾い上げると、人差し指に差し込み、魔力を注ぎ込む。すると、どんどん膨らんでいき、破裂する。


「……チッ!色々と見せすぎたな。まぁ、どんな魔法も使いようってのは勉強になったぜ」


独りごちて、会場を後にした。



― 十五分前・選手控室 ―


「本当にやるのかい?」


フィンラルが心配そうに確認する。


「ええ。あのお姉さんの言い分は(もっと)もだわ」


「しかし、ミーナ嬢。貴女の魂命(こんめい)はもう……」


そう、過去の度重なる禁呪の使用で、彼女の魂は既に消えかかっており、これ以上戦えば、もはやいつ消えてしまってもおかしくはないのだ。


フィンラルはミーナの本気の眼を見る。その意志が揺るぐ事はなく、止める事は出来ないのだと理解した。


「……わかったよ」


そして、今度は<戦華>へと近づき、言葉を投げる。


「……。さっき話した通り、彼女はもう長くはない命だ。この試合には正直、私は()()()()()()。貴女が納得できないのと同じだ」


「何が言いたいのです、ミスター・フィンラル」


「自分勝手なあなたを、私は許す事ができない。しかし、残念ながら、ただでさえ実力差のある貴女に、頭に血が上っている状態で私に勝ち目があるとは思えない」


率直に、素直に、フィンラルは拳を握りしめながら思いをぶつける。


「だから……っ!どうか、彼女の命を奪うような真似だけは――」


「貴方は戦士ですね、フィンラル・ゼルファルド。しっかりと自分の騎士道を持っている」


シイラは、フィンラルに笑いかける。しかし、すぐに無表情へと戻り、言葉を放つ。


「しかし、私には私の騎士道がある。貴公の騎士道は、『できるだけ』尊重しよう」


そう言って、シイラは剣を構える――()()()()()


その手には、()()()()()()()()()


「ミーナ・ファレン、準備はよろしいか?」


「いつでもいいわ」


双方の準備ができた所で、壁に寄りかかっていたグリムが中央へと歩を進める。


「では、これより、エキシビジョンでの試合を始める。双方、構え!」


シイラは息を吐き出し、目を瞑る。

ミーナは大剣の剣先を前へ突き出すように構えた。


「試合始めっ!!」


開始の宣言と共に、シイラが目を開け、ミーナへ迫る。


「であっ!」


迫りくるシイラに合わせて大剣をそのまま突き出す。

シイラの左足が右方向へ踏み出される。ミーナはそれを見て右方向へ大剣を振るう。


ブオン!!と大きく風を切る音が鳴る。


タイミングは捉えていた筈だったのだが、ミーナの視界から、シイラが一瞬で消える。

そしてミーナの背中に強い衝撃が走る。


シイラは踏み出した左足を軸にして超高速で左へ回転し、遠心力をそのまま利用して回し蹴りを放ったのだ。


「ガハッ……くっ!!」


ミーナは両足に魔力を込めて、壁に着地する。同時に四方の壁一面に無数の魔法陣を展開する。


「ありったけよ!!受けてみなさい!!!!」


魔法陣から放たれる、様々な属性の、例えるならば砲撃だった。

火炎球(ファイアーボール)旋風矢(ガル)石の槍(ストナ)水弾(アクアバレット)等が、まさに一斉砲撃をお見舞いした。


「ハァ、ハァ、ハァー……っ」


ミーナがふらついて片膝を突く。

爆炎が晴れていくと、シイラもまた、片膝を突いてミーナを見据える。


「ハァ、ハァ……。ふふふ、素晴らしいとっておきでした、ミーナ・ファレン!でも、流石に空っぽのようですね!!」


「ええ、()()()、私の魔力はスッカラカンよ」

ミーナは両の掌を天へと向ける仕草を取る。


「それでは、私の剣で幕引きとさせていただきます」


シイラは相変わらず、剣を持たずに構えだけ取っている。

しかし、何も持っていない筈の手に光が集まり始める。


「行きます!!フッ!」


シイラがミーナへ向かい一直線に奔りだす。その時だった。


ガゴン!と鈍く強い音が鳴り、シイラの額から鮮血が舞う。


(つう)ッッ!!」


「ふぅ、流石にあの程度の魔力じゃ、倒しきれないわね……。ごめんなさい、<戦華>さん。ただ悪足掻き、してみたくなっちゃっただけよ」


ミーナは最後の魔力を使って、【創造ス(クラフト・)ルハ想像(デア・イマージュ)】で鉄塊を作りだし、それを魔力隠匿(ロスト)で隠したのだ。


「気絶してくれれば、私の勝ちだったんだけどね」


「クッ、なんとも締りのない最終局面になってしまいましたが、今度こそ幕引きとしましょう」


構えなおすシイラ。再び握られた先に光が現れる。


「我が魔剣【虹光刃(アロンダイト)】、受けてみよ!!」


閃光が奔り、ミーナがその場に崩れ落ちる。

フィンラルがミーナに駆け寄る。


「勝負有り!勝者、シイラ・ベスティア!!」



次はいよいよ主人公!

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