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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
19/37

禁断の狂気

大変お待たせいたしました!

最新話、お楽しみくださいませ!

〇〇三七(幼子)は、何も持たずに育てられた】


 物心付いた時から両親は居らず、同じ制服(スーツ)を着た大人たちと、自分と同じ(ぬのきれ)を着た子供たちが傍に居た。

その子供たちは、身体に焼き付けられた烙印番号(ナンバー)で呼ばれていた。

 彼女の首筋には、『〇〇三七』と、烙印が押されていた。



〇〇三七(少女)は、欲しい物は全て手に入れていた】


 子供たちは週に一回、『テスト』を受ける。

少女は常にトップの成績を記録していて、大人達から常に期待を寄せられていた。


 成績優秀者には、おもちゃ、お菓子、一人の部屋でも、何でも与えられるのだ。

少女は、『()()』にご褒美に何が欲しいかと問われた時、少女は『本当の家族』と答えた。

『パパ』は下卑た笑みを浮かべて少女を抱きしめた。



〇〇三七(彼女)は、組織(かぞく)に疑問を持つようになっていた】


 ある日、子供たちの数が減っていることに気がついた。

『実験』に行って戻らない者、『実践』に行って戻らない者。

そんな中、特に仲良しだった〇〇六九(少年)が呼ばれて、部屋から連れられる。彼は笑顔で「まっててね」と言ったきり、二度と戻ることは無かった。



〇〇三七(彼女)は、仲間(兄弟)と一緒に組織を脱走(家出)した】


 当然のように追手が掛かり、最初は十人いた仲間も、次第に数を減らしていった。


 残りが四人になった時、生存率の高い方法を取ることにした。

片足を失った〇〇五〇(少女)と、その恋人である〇〇六一(少年)が切り出したのだ。

〇〇三七は〇〇五〇を抱きしめて、頬にそっとキスをする。ごめんねの代わりに……。


 〇〇三七は、〇〇七〇(彼氏)と指を絡めて、百七十八時間ぶりの人里の灯りを見下ろしていた。

〇〇六九と同じ顔の少年が、愛おしくて堪らなかった。彼女はこの感情を抑える術を知らなかった。


 本当の家族が欲しいと願ったとき、()()が教えてくれたこと。

おぞましいと思えたあの行為を、〇〇七〇としてみたいと思った。


〇〇三七(ミーナ)は、子を宿すことは、ついぞ叶わなかった。



―シスマーニ闘技場・選手控室―


「よっ!調子はどうだ?」


フィンラルに与えられた控室に、俺と団長、ティアーナにアーシャさんで激励に来ていた。


「ふふ。好調だよ。今朝なんか、『茶柱』、なるものが立った。これがなかなかどうして、縁起が良いそうだ」


「あら!それじゃあ、期待できますわね」


アーシャさんがニコニコしながら胸の前で手を合わせる。


「はは、()()()じゃないことを祈っておくよ」


俺の軽口に、うるせえ!とフィンラルは軽く怒ってみせた。

どうやら強い緊張はしていないらしく、至って冷静なようで、俺も安心した。


「ミーナ・ファレン、だったか。予選の戦いぶりを見るに、確かに強いけど、付け入る隙もあったな」


「うむ。だが油断は禁物だ。相手もまた、フィンラル同様、手の内を見せていない様子でもあった」


団長の言葉に、フィンラルは頷く。


「ネックなのは、相手の魔力の流れが見えなかった事だな。よっぽど魔力隠匿(ロスト)に長けているのか……。まあ、今気にしても分からないものは分からないからな。常に警戒しておくさ」


フィンラルは立ち上がり、壁に立てかけてある剣に手を伸ばす。

すると、剣が淡く光り出したかと思えば、ふわっと浮かんで、フィンラルの手に収まる。


「いよいよですね。応援してます!」


ティアーナが笑顔で送り出す。

俺は拳を握り、フィンラルの背中にコツン、と当てる。

フィンラルは無言で片手をヒラヒラと振って、部屋を後にした。


「さて、俺達も控室に戻ろうか」


「あ、それでは、私のゲストルームで観戦しませんか?」


と、アーシャさんが提案してくれたが


「すみません。俺も団長も、フィンラルの試合を見届けた後は、すぐにイメージトレーニングに入るので、控室で観戦します」 と断った。


少し残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔で


「わかりました!でも、試合前には激励に来させてくださいね!」 と答えた。


「では、我々も行こうか」


団長が切り出して、それぞれの部屋へと戻っていった。



―闘技会場―


「観客のみなさーん!大変お待たせしましたっ!!それではこれより、第六八回、闘技大会決勝トーナメントを開催いたしまーす!!」


わあああぁぁ!!と、大歓声が上がる。


「一回戦から注目の好カード!ともに初参加ながら、実力は折り紙つき!!みなさんはどちらに投票したかな?投票結果は……こうなったっ!」


司会が後ろの巨大モニターを指差すと、フィンラルとミーナの顔と名前が写し出される。


「投票数、六千二百五票!フィンラル選手が三千九百十二票!ミーナ選手が二千二百九十三票となりました!個人的にはイケメン剣士は負けてしまえと思うので、ミーナ選手に勝ってほしい所ではありますが!」


会場が、わはは、と沸く。


「それでは早速、選手に入場して頂きましょう!」


西門、東門に同時に煙幕が上がり、東門より、フィンラルが先に姿を現わし、中央へと向かう。

少し遅れて、西門からミーナ・ファレンが、相も変わらず、その小さな体に似つかわしくない大剣を、片手で持ちながら笑みを携えて歩みを進める。


ミーナは中央に着いても歩みを止めずに、フィンラルへと詰め寄る。


「お兄さん、格好良い顔立ちしてるわね。うふふっ」


「光栄だね。君もなかなか、可憐なお嬢さんだ。こういう場でもなければ、ダンスのお相手を申し出たいところだ」


「あら?いいじゃない。踊りましょう?ただし――――」


ミーナが後ろへと飛び退く。


「試合、開始ぃぃっ!」


審判の試合開始の合図とともに、ミーナが凄いスピードで間合いを詰める。


「――っ!!」


ドゴォォン!と、けたたましい音と共に、土煙が上がる。


「ただし、踊るのは、あなた一人かもしれないけれども、ね」


ペロッ、と舌を出して、ミーナが言う。


「なかなか、やんちゃな一面もあるようだ」


フィンラルは笑みを浮かべてはいるが、ミーナの操る大剣の攻撃範囲に、防戦一方になっている。

しかも、迂闊に近づけば、予選でも見せた体術が飛んでくる。


「大きい得物の弱点は、懐に入られた時に、攻撃手段を持たないこと」


フィンラルは、意を決して、ミーナの攻撃のタイミングを計り、零距離まで間合いを詰めた。

が、勿論ミーナもそれを読んでいたので、すぐさま剣を手放し、掌底を放つ。


「くっ――!」


フィンラルが後方へと飛ばされる。足で踏ん張ってはいたが、軽く五メートルは流されただろうか。

しかし、威力が死んだ瞬間に、再び間合いを詰めにかかる。


「もう一つ。上空からの攻撃に、迎撃手段が乏しいこと!」


懐に入ると見せかけての上空からの攻撃。

零距離の戦闘に向けて無手で構えていたミーナは、一瞬対応が遅れた。

魔法で大剣を上空へ動かして、直撃は免れたが、フィンラルはすかさず零距離の間合へ入り、掌底を入れる。


ミーナの軽い身体は、簡単に吹っ飛び、地面に叩き付けられる。


「格好良い上に強いなんて、素敵ね、お兄さん。うふふ」


よろよろと立ち上がりながら、それでも尚、口元には笑みを浮かべてそんな事を言ってのける。


「君のダンスのお相手には、なれているだろうか?」


フィンラルもまた、余裕を見せるようにそう口にする。


「愉しんでいるわ!こんなに高揚したのは久しぶりよ」


目を見開き、嗤う。

そんな彼女の顔を見て、フィンラルは一瞬、足が固まってしまう。

まるで狂気に触れたかのような身体の強張りを感じたのだ。

そしてミーナはその一瞬を逃さなかった。


「ずあっ!」


自分よりも大きい剣を振りかざしながら飛び上がり、思いっきり振り下ろす。

硬直していたフィンラルは、避けきれないと判断して、剣に魔力を流し込み、ギリギリ一撃を食い止める。

しかし、その圧倒的な重みに身体が悲鳴を上げた。


(ぐっ!!左手首、折れたな、こりゃ……)


まともに受けたフィンラルの左手首は、赤黒く変色し、ぼっこりと腫れ上がり始める。

踏ん張った足元には、巨大なクレータが出来あがる。凄まじい土煙が巻き起こり、客席から二人の姿が完全に隠れてしまう。


「あら?完全に仕留めたと思ったのに、本当に強いのね、お兄さん」


「ふふ、可憐なお嬢さんを、一人で踊らせる訳にはいかないからね」


とは言ったものの、フィンラルには既に余裕はない。

後手に回って様子見をしていたが、このままではジリ貧。勝負に出ることにした。


(土煙に紛れて魔法で牽制しつつ、確実にダメージを与える!)


「今度はこちらから行かせてもらうっ!!」


そう言ってフィンラルは土煙に姿を消し、ミーナの死角から、無数の火球を放つ。

が、ミーナもそれは当然お見通しであり、飛び上がり回避する。飛び上がった先にも火球が向かったが、大剣を振り払い、簡単に消し去る。


ミーナは着地と同時に、火球が飛んできた方向へと一気に距離を詰める。


「――っ!!」


何かに足を取られる。

地面を見ると、数か所に渡り、小さな沼があった。

ミーナは思い切り地面を蹴っていた分、泥濘(ぬかるみ)に足を取られて、全く動けないでいた。


「もらった!!っはあああぁぁァァ!!!!」


ミーナの後方からフィンラルが姿を現し、剣を抜く。


一閃。


土煙が薄れてきたが、まだ影で見える程度だった。

その影は、線の細い男から伸びた剣が、小さい少女の身体を貫いていた。


やがて完全に土煙が晴れると、驚愕の光景がそこにはあった。


「がはぁっ!!ぐっ……き、君は…………っ!!」


「うっふふふふ、あーっはははは!!」


フィンラルの剣は、少女の脇腹をかすめ、そこで止まっていた。

代わりに、フィンラルの鳩尾(みぞおち)を、槍先の鉄球が抉っている。


「紹介するわね、お兄さん。彼は()()()()()()()()()()()()()()()()()。ルーク・ファレンって言うの」


そこには、無表情でモーニングスターを構えるミーナの双子の弟、ルークが立っていた。


「ぐうっ、バカな……っ!これは明らかな、ルール違反じゃないかっ!」


ミーナは意にも返さず、言葉を続ける。


「ねえ、お兄さん。アナタには、ルークが人間に見える?作り物(おもちゃ)に見える? 私の愛しの、愛しの、愛しの、いとしのイトシノ……イトシノぉぉぉっ!!!!」


ミーナは、ルークと共に波状攻撃を仕掛けてくる。

何とか躱し、あるいは受け流しているが、深手を負ったフィンラルは徐々に傷を増やしていく。


(なぜだ!?何故試合が止まらない? こんな明らかな反則行為……っ!?反則ではない、のか?)


攻撃を受けながら感じる違和感が、確かにあった。

同じなのだ。

ミーナの大剣に纏っている魔力と、ルークが槍に纏っている魔力が、()()()()()()()()同じであった。

更に言うなら、術者であるミーナとルークの魔力の根源まで、一切の濁りも無く、全く一緒であった。



―選手控室・グリムの部屋―


「団長!!」


俺は急ぎ、グリム団長の控室へと入っていった。


「これは一体、何が起きているんだ?あれは、明らかに反則じゃないか」


団長は、窓から目を離さずに口を開いた。


「禁呪……【創造ス(クラフト・)ルハ想像(デア・イマージュ)】、想像を創造すると言われている失われたはずの魔法だろう」


「あの、ルークってやつそのものが魔法だってのか?まさか……」


理解が追い付かず、逆に混乱する。


「俺も詳しいことは分からんが、とにかく今は見届けるんだ。フィンラルはまだ諦めていない」


俺は頷き、再び戦いに集中する。



―闘技会場―


「っ!なる、ほどっ!!」


ガキィィ、とミーナの大剣を弾き、フィンラルは再び距離を取る。


「見えてきたよ。ルーク・ファレン。君はミーナの……魔法で作られた存在、なんだね?」


ルークは相変わらず無表情で、代わりにミーナが答える。


「そう。その通りよ。でも、そんな風に言ってくれたのは、お兄さんが初めてかも。他の人はルークの事を『偽物』とか言って認めてくれないもの。『存在』としてみてくれたのはお兄さんだけ」


そう言って、愛おしげにルークの首筋に指を這わせる。


「私はルークであり、ルークは私。私の記憶(なか)のルークを『使って』、私自身の命を『投影』して魔法を発動しているわ。だから、私が死なない限り、ルークも死なないの」


フィンラルはぞっとした。

目の前の少女は、ルークを『自分と同一』と言う、ある意味、『信仰』で行動し、そしてそれを全て生きる理由としているのだと悟った。


「……君は何故、この大会に参加を?」


「私とルークに勝つことができたら、教えてあげる」


ミーナが大剣を構える。


「ま、重症のお兄さんには、無理だと思うケド……ねっ!!」


意表を突くミーナの攻撃。

魔法で大剣の重量を操作し、フィンラルに向かっておもいきりブン投げる。


フィンラルはそれを躱すが、すぐにルークが槍で何度も突き、なぎ払い、また突いてくる。

しかし、フィンラルの意識は最初から、ミーナではなくルークに向けていた。


「ずあっ!!」


一瞬、強い光が弾ける。


ボト、と地面に腕が落ちる。

その腕には『〇〇六九』と烙印番号が記されていた。


「…………うそ」


ミーナが呟く。


「そんなはず、ないわ。そんな、そんな……うわあぁぁぁぁ!!!!」


叫び声に呼応するかのように、ルークが残った腕で槍を取り、フィンラルに仕掛ける。が、見切っていたフィンラルは体を捻って回転。そのまま勢いを利用して横薙ぎ一閃。


再び光が弾けると、ルーク・ファレン(魔法)は『消滅』した。


「ルーク……?嫌、いやぁっ!!嫌、嫌、嫌あっ!!!!」


ミーナはフィンラルを激しく睨みつけ、魔力を最大に高める。


「やめた方がいい。君はさっき言った。君自身の命を『投影』していると。使えば使うほど、強く魔力を込めれば込める程、君の寿命は減ってしまう。詳しくは分からないけれど、そういう魔法なんだろう?」


「うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!」


聞く耳を持たず、ミーナは禁呪【創造ス(クラフト・)ルハ想像(デア・イマージュ)】を発動する。

すると、今度は四人の少年少女が現れる。

片足が無い少女。支える少年。そして、ルークが二人。


「うふ、うふふふふ……あははははは!!!!ねえ!これが私の大事な大事な大事な、愛しい家族なの!紹介す……」


ミーナが言い終わる前に、その全てをフィンラルが切って伏せた。


「この剣は、魔剣【退魔の剣(シューレ)】と言って、この剣で切った魔法は全て『例外なく消滅する』んだ。それ以外の攻撃は、至って普通の剣だけどね」


「あはは、あは、あははははははは…………」


魔力が尽きたミーナは、その場に為す術もなく倒れこんだ。



「勝負あり!一回戦、第一試合。勝者、フィンラル・ゼルファルド!!」


フィンラルはミーナに近づき一言だけ呟き、会場を後にした。


「……ごめんね」

一回戦から飛ばしすぎた感は否めないです。


後悔はしていない!です!笑

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