決勝トーナメント前夜
いつもより少し短いですが、区切りの良いところで終わりたかったので!
ともあれ、最新話です!よろしくお願いします(´vωv`*)
―シスマーニ闘技場―
決勝トーナメント出場選手が、一同に闘技場へ集まっている。
今からここで、くじ引きでトーナメントの抽選会を行うのだ。
先ずは四人のシード選手から。
前回大会の優勝者である団長が、壇上へ上がると、場内から歓声が上がる。
「フェイトー!今年も期待してるぞー!!」
「キャー!グリム様ぁー!!こちらを!こちらをご覧になって!!」
(おぉ、凄い人気だ。さすがに知れ渡ってるんだなぁ)
団長はクジの入った箱の前に立つと、一度振り返り、歓声に応えるように手を上げ、一礼する。
たったそれだけの所作なのに、黄色い声援が再び、ある意味では怒号のように発せられた。
「それでは、フェイト選手。くじを引いてください」
司会に促され、箱に手を入れる。引き当てたのは……。
「Aの五番、ですね」
「はい、それでは一回戦、第三試合でのスタートとなります。続きまして、シャルール選手」
長身の男が壇上へ上がる。
反対側の階段を下りていく団長に一瞬、目を運ばせ、すぐさま箱の前に立つ。
「シャルーっ!今年はお前が勝つぞ!!」
「リベンジだー!負けるなよー!」
と、前回大会の雪辱を晴らすことを期待した声援が飛び交う。
シャルールは、無言で箱の中から紙を取り出し、中を確認もせずに司会へと手渡す。
「はい、シャルール選手はAの四番です!一回戦第二試合での登場です!続きましては、初参加!シイラ・ベスティア選手。壇上へお願いします」
整った顔立ちに、スラッと伸びた手足が会場の目を引く。
凛とした立ち振る舞いに、俺たち参加選手もある種の緊張が走っていた。
団長と同じく、壇上で一礼をし、箱に手を入れる。
「んっ……」
一瞬、シイラ選手から声がもれたかと思うと、何事も無かったかのように紙を取り出し、中を確認する。
「……。Aの八番だ」
そう言って足早に階段を下りる。その姿を目で追っていると、人差し指を咥えはじめる。
そこで全員が理解し、同じことを思っただろう。
(切ったのか……。ドジっ子……)
ここまでシード選手四人中三人がAの山を引くという、とんでもない結果になる。
そしてそれは、団長とシイラ選手にとっては不利に傾いていた。
順当に行けば、二回戦、準決勝、決勝と、連続でこの化け物達と戦う事になるのだ。
「次は……こちらも初参加ですね。ザクス・クレイル選手、壇上へどうぞ」
場内がどよめく。
無理もない。かの有名な、<剣聖>の異名を持つ『最強の剣士』の登場だ。
コツ、コツ
ただ歩く音だけが響き渡る。
歩いているだけなのに、なぜ俺はこんなにも目を奪われる?
なぜこんなにも、手汗をかいている?
あれだけどよめいていた場内が、閑散としているような感覚。
まるでこの場に、俺と<剣聖>、二人しかいないかのような、そんな感覚が俺を包んでいた。
「……ルト選手。ヴェルト選手!壇上へお願いします!」
俺はハッと我に返ると、いつの間にか俺の順番になっていたらしい。
急いで壇上に上がると、歓声が聞こえてくる。
「緊張すんなー!本番は明日だぞー?」
「フェイトの弟子なんだってなー!いいとこ見せろよー?」
そんな声に俺は背中を押される思いだった。
そして……。
「Bの三、です」
「はい!それでは一回戦の第六試合ですね!大丈夫。今はまだ、リラックスしてください!それでは続きまして……」
こうして、全ての抽選が終わり、組み合わせが巨大なモニターに名前と何かの数字が表示される。
第一試合 ミーナ・ファレン(6294) 対 フィンラル・ゼルファルド(5920)
第二試合 ガイル・シュルト(5441) 対 シャルール・レオニス
第三試合 フェイト・グリム 対 レイヴァン・マクダウェル(8933)
第四試合 ルーク・ファレン(5762) 対 シイラ・ベスティア
第五試合 カイト・ピエール(8412) 対 クレスタ・グローリィ(10283)
第六試合 ヴェルト・ダンツァー(6086) 対 クラレンス・オリヴァー(7550)
第七試合 エリオット・クレイドル(14403) 対 ケイ・アマガサ(7908)
第八試合 ザクス・クレイル 対 スケイル・レティーシア(3679)
となった。
そして、一回戦の注目試合として大会側が選んだ試合がある。
この注目試合では、普段は国法にて禁止であるはずのギャンブルが解禁される。つまり、どちらが勝つかの賭けである。
その注目試合に選ばれたのは、第一試合『ミーナ・ファレン 対 フィンラル・ゼルファルド』と、第六試合……『ヴェルト・ダンツァー 対 クラレンス・オリヴァー』であった。
更に、『強さを数値化』する機械が予選時に作動しており、全員が計測されていた。この数値を『魔闘値』と呼び、ある程度の判断基準とされる。
しかし、潜在的な魔力や身体能力を計ることはできないので、あくまでも『基準』なのだそう。
シード選手は戦闘が無かったので、『魔闘値』は計測されていない為にモニターには数値が出ていない。
自分の試合が賭け事に使われるのは、正直あまり良い気分ではなかったが、国が認めている以上は個人としては何も言えない。
そして、いよいよ大詰めとなった所で、優勝賞品が俺たちの眼前に現れ、紹介される。
「皆さんは『聖剣・アシュカロン』という名前を、聞いたことはありますか?そう、『魔剣』ではなく、『聖剣』です。そうです、かの有名な四百年前に魔王を打ち破った、勇者フリクトが振るいし伝説の剣、それがこの『聖剣・アシュカロン』なのです」
この説明では紛らわしいが、魔力が通った武器を『魔剣』と一括りにしているので、『聖剣』もまた、『魔剣』である。
「この他にも、『聖剣』と謳われる武器は、この世にいくつか存在しています。しかし、これほどの強力な魔力を秘めた『聖剣』は、他にはないと、国王も自負しておられます。お気づきの方もおりますね?そう!!この大会の優勝者には、この『聖剣・アシュカロン』が贈呈されます!!更に、このアシュカロンには……」
歓声が沸く。参加者も目を輝かせているものが多い。
否が応でも期待がが高まるのだろう。
しかし、俺は別の意味で動悸が激しくなっていた。
(四百年前……勇者フリ……ク、ト?)
心臓が強く跳ねる。
俺はふと、視線を右後方へと向けた。
左目を抑えながら、不気味に笑う<剣聖>の姿を捉え、更に心臓が跳ねる。
(ドクン)
((ドクン))
まるで頭の中に心臓があるのではないかと思える程に、鼓動がうるさい。確実に何かを訴えているのだ。俺の前世を。俺の過去を。
気が付けば、優勝賞品のお披露目が終わり、闘技大会初日が幕を閉じる。
団長やフィンラルが俺に声を掛けてきた時には既に、鼓動も収まっており、ティアーナとも合流する。
「フィンラルさん、ヴェルト、お疲れ様!」
「ありがとう、ティアーナちゃん。お祝いはほっぺにちゅーで頼めるかな?」
などとふざけだすフィンラル。
「コラコラ、あまり調子に乗るな、フィンラル。後ろで騎士様が怖ーい顔で睨んでいるぞ?」
と、団長も一緒になってからかってくる。
「んな顔してねーよ!ったく。……ありがと、ティア」
ティアーナが優しく微笑む。
俺はこの心地良い安堵感に包まれながら、考える。
この先俺は、ずっと前世の記憶に悩まされるのか、
このまま進めば、この居場所は無くなってしまうのではないのか、
アルマスが言っていた、俺の身体にある魔王の力の『覚醒』は、俺を俺じゃなくしてしまうのではないかという不安。
そんな不安が安堵感と混じり合って、焦燥感へと変わる。
(俺にはやらなければならないことがある。まだ、『俺』を終わる訳にはいかないんだ!!)
曇った心とは裏腹に、夜空は燦然と輝いていた。
いよいよ次回からトーナメントがスタートです!
皆さん、良かったら誰が勝ち上がるのか、予想してみてください♪予想コメント等もいつでもくださいね!




