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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
16/37

第六十八回闘技大会·予選①

いよいよ大会が始まります!

バトルシーンの表現は難しいですが、楽しく書き上げました!

今回もよろしくお願いします(*´﹃`*)

―シスマーニ闘技場・選手控室前―


「ではな、ヴェルト。俺は先に行って待っている」


「ああ。必ず行くから待っていてくれ」


団長はシード選手なので、決勝トーナメント出場者専用の控室へと向かう。


「それにしても、驚いたね。まさか開会式でアーシャさんが呪歌(じゅか)を歌うなんて……」



 ―約三十分前―


俺達は一同に闘技場内へと集められ、多くの観客がいる中、ありきたりな謳い文句の後、王室や来賓の紹介を聞かされる。

伝統がある大会とは言え、隣国の国王陛下や上流貴族まで観戦に来るとは思ってもいなかった。それだけ注目の高い大会なのだと、改めて気を引き締めた。


「続きまして、東方の国・ジャポーネよりお越しいただきました、タクヤ・ツバキ様よりご挨拶です」


来賓の最後の一人の挨拶が始まる。これまでの流れを簡単に言うなら、「各々の健闘を祈る」に集約される。

が、彼は違った。


「選手の皆様、並びにお集まりの観客の皆様、御機嫌よう。只今ご紹介に預かりました、タクヤ・ツバキです。 我が国には、国王と呼べるような制度がありませんので、国を治める政治家の代表として、参じております。 さて、皆様。今回この大会には、ジャポーネより参加者を出しております。その道を往く方ならばもしかしたら一度くらいは名前を耳にしているかもしれませんね。強いですよ、『天笠(あまがさ)流剣術』は。 当然、優勝を狙っております。 予選からの参加ですが、彼と当たっても、恨まないでくださいね? 良き大会に致しましょう!よろしくお願いいたします!」


来賓席からまさかの宣戦布告とは、恐れ入った。それも、『天笠流剣術』の使い手と、わざわざ情報まで流す余裕を持って。

主な任務が魔物退治だった俺には、他流派との戦闘経験は多くないので、初めて聞く名前ではあったが、間違いなく要注意人物の一人になるだろう。


「タクヤ・ツバキ様、ありがとうございました。これにて、来賓の皆様のご挨拶を終了とさせていただきます。 それでは最後に、呪歌の斉唱を行います。斉唱と言っても、呪歌の歌詞は人間には表現できないものですので、皆様には少しばかりの魔力を提供させていただきます。歌姫が歌唱中に皆様からの魔力で、一つの魔法結界を作り上げるのです。それが『不殺(ふさつ)(まじな)い』であり、皆様を守る結界となります。 それでは、登場して頂きましょう。『蒼の歌姫』こと、アーシャ様です!!」


聞き覚えのある名前に、まさか!と目を配る。そこには、頭によぎった通りの人物が姿を現した。


アーシャがステージの中央に立ち止まると、照明が落とされ、ライトが当たる。

ドレスがライトに照らされ、キラキラと光を放つ姿はとても幻想的に見えた。ティアーナ辺りは、感動して呆けているに違いない。


そして、アーシャが左手をゆっくり上げると、両目を瞑り、高らかに透き通った声で歌い始める。すると、アーシャの周りに光の粒が現れ、まるで綿毛のようにふわふわと闘技場内に舞い踊る。

やがて場内全体に光の粒が行き届き、アーシャの歌声が止まる。


「みなさん、左手を、天に翳してくださいませ」


ニッコリと微笑むアーシャ。これはしっかりとした意志で放たれている魅了(チャーム)だ。抗える人間はいないだろう。もっとも、抗う人間も今この場にはいないだろうが。


手を翳す参加者たち。すると、魔力の光が玉となり、アーシャの頭上に移動していく。

俺の魔力の玉がアーシャに届いた時、目が合い、ニコッと笑ったような気がした。可愛い。


そうして、再びアーシャが歌い出す。

演奏もなく、歌詞もない。いや、正確には歌詞(というよりは呪文?)はあるのだろうが、俺達にはその歌詞の理解ができない、という方が正しいのだろう。

先程の司会者が気になる事を言っていた。


『呪歌の歌詞は()()()()表現できない』


その言葉を思い出し、俺は自分の心臓が跳ねるのを感じていた。



―シスマーニ闘技場・選手控室前―


「そうだな。俺もビックリしたよ。……ちなみにティアは呪歌について何か知っているか?」


「うん……。実は、呪歌を歌えるのは精霊か、一部の魔族、それから、伝承にある魔物だけなの。呪歌にもいくつか種類があって、さっきの『不殺の呪い』は精霊のみが歌える呪歌ね。発動条件も厳しいわ。賛同者の魔力を一定量集めなければならない、だったかしら?もしかしたら他にもあるかもしれないけれど」


やはり、アーシャさんは人間ではなかったのだ。

とはいえ、納得と言えば納得だ。あれだけの魅了の強さは、とても人間が出せるものでは無い。まあ、今となっては、の考察に過ぎないが。


「なるほどな。魅了によって半ば強制的に賛同者として魔力を集めて、結界を完成させたって事か。って、これじゃアーシャさんが悪者みたいな言い方になっちまうな」


「うふふ、構いませんよ。九割方、当たってますから」


背後から声がして、振り返ると話題の張本人が姿を現す。

周囲から視線を浴びながらも、俺達に近づき話し始める。


「でも一つだけ、間違ってますよ」


「えっ?」


アーシャさんが人差し指を唇に当てて答える。


「私は、悪者なんかじゃないですよ」


何というか、ぽけーっとした雰囲気が支配したような気がする。


「あはは、分かってますよ」


「良かったですー。あ、そうそう。魔力を集めた時に、ヴェルトさんの魔力、すぐに分かりましたよ!ティアーナさんのも!」


振り向くと、ティアが照れ笑いを浮かべている。


「あ、あまりにも感動したから、極まって私も手を掲げていたの……」


まあ、無理もないだろう。事実、観客席からも無数の魔力玉が飛んでいくのを俺も見ている。ティアーナと同じように、感極まった人が魔力を捧げてしまったのだろう。


「はは、ティアらしいな。それにしても驚きました!まさかアーシャさんが呪歌を歌うとは思ってもみなかったです」


それを聞いたアーシャさんは、不思議そうな表情で首を傾げる。


「あら?お話ししてませんでしたっけ?」


「ええ。昨日の別れ際に『明日はお互いに頑張りましょう』と言っていたので、もしかしたら参加者なのかと考えてしまいましたが」


アーシャさんが右手を横に振る。


「いえいえ。私が扱えるのは『呪歌』と『魔石』だけです。武芸に富んでいる訳ではありませんので……あっ、と。そろそろ戻りますね。ヴェルトさん、予選頑張ってくださいね!スケジュール的に、予選は見られないんですけど、決勝トーナメントは応援に行けますから!」


「ありがとうございます。アーシャさんも、お仕事頑張ってください」


「はいっ!あ、そうそう、ティアーナさん。良かったら、決勝トーナメントは一緒に観戦しない?」


関係者用の観戦席へと招待してくれるようだ。


「良いんですか?嬉しい!ありがとうございます!」


「もちろん!それに、女の子の友達、欲しかったんです!ティアちゃん、って呼んでもいいですか?」


「はいっ!私も、アーシャちゃんって呼びますね!」


詳しくは知らないが、精霊や魔族は、見た目が成人の場合、数百年は生きていると聞いたことがあるが、もしそうなら、人生の大先輩を相手に『ちゃん付け』で呼ぶ事になる。まあ、当人同士が楽しそうだからいいか。


「それじゃ、今度こそ本当に行きます!ヴェルト君、ティアちゃん、またねー!」


いつの間にか、俺も『君呼び』になっていたのだった。


「よし!じゃあ俺も準備してくるよ。また後でな、ティア」


「うん。頑張って!しっかり見てるからね」


こうして、美少女二人の応援を受け、控室へと入る。

先程の団長の激励も相成って、気力充分だ。


(よし!やるぞ!!)


少しばかり逸る気持ちを抑えながら、ウォーミングアップを始めた。



―選手控室―


前日に話し合った通り、予選は十二のブロックに分かれて行われる。

予選開始から約二十分で、三つのブロックが終わっていた。

俺のブロックは第五ブロック。現在、第四ブロックが開始される直前だ。


第一ブロックの勝者はガイル・シュルト。

古武術の使い手で、近距離を得意としている格闘家だ。

容易に近づくと、特有の足捌きで瞬時に間合いを詰められ、打撃により尽く相手を沈めていた。


第二ブロック勝者はルーク・ファレン。

常に無表情で、体格も子供と変わりないが、扱う得物がまたえげつない。

モーニングスターと呼ばれる、鋭利な棘の付いた鉄球の槍を身体全体の力を使って振り回し、ヒットした相手はその時点で戦闘不能に陥っていた。


第三ブロックを制したのはフィンラルだ。

試合前に、「手の内を晒す事無く終わらせる」と言っていただけあって、飄々とヒットアンドアウェイを主軸にした攻撃で数を減らしていた。残りの人数が五人になると、緊張状態で誰も動かなくなる。

四人の頭上に、魔法で作った小さな爆発魔法を放ち、注意を引いた瞬間に剣で一撃の下に勝利していた。


そして今、目の前で行われている第四ブロック。

開始されて三分、残っているのはたったの三名である。


「なにが……いったい何が起きているのでありましょうか!砂煙が上がり、その場にいた選手たちが次々と倒れていきます!」


派手な展開に、実況が興奮気味で話す。


砂煙が晴れると、一人の少年が犬歯を剥き出しながら姿を現す。

少年が鋭利な爪を構えると、残った二人が降参を申し出て、第四ブロックの勝者が決まる。


「第四ブロック、勝者、クレスタ・グローリィ!」


そこで、控室の入口のドアが開き、スタッフが現れる。


「第五ブロック出場者は、競技用通路に集合してください」


俺は一度大きく深呼吸をして、他の選手達に続いて部屋を出た。



「それでは、入場を開始してください!」


スタッフに促され、競技用通路を歩き出す。

すると、向かいからクレスタが近づいてくる。


すれ違う時、お互いに笑みを溢し、同時に止まる。


「よお。トチんじゃねーぞ。先に待ってっからよ」


「わかってるさ。首を洗って待っていろ」


そう言って歩きだす。背後から

「ケッ!せーぜー、無様晒さねえようになぁ」

と悪態が聞こえた。



「それではこれより、予選第五ブロックを始めます!!」


歓声が響き渡る。

不思議と強い緊張も気負いも無く、自然体に近い状態だ。


周りを見渡すと、他の選手たちは何処か落ち着きのない様子で武器を構えたり、ウロウロと歩き回っている。が、視線を感じて振り返ると、一人の男がこちらを真っ直ぐに睨んでいた。


(……?誰だ?恨まれたりするような事はしてない筈だが……)


「大変お待たせいたしました。第五ブロック、二十七名の皆様。最後の一人となるまで制限時間はございません。準備はよろしいですね?」


俺はもう一度、目を閉じ、大きく深呼吸をする。


「それでは、始めぇっ!!」


目を開けて、比較的近くにいた三人を走り抜けながら攻撃する。

最後の一人には反応されてしまい、充分なダメージは与えられなかったが、二人は致命傷を与え、失格となった。


一旦距離を置いて様子を見る。


第三ブロックのフィンラルの時のように、睨み合いで四、五人が固まっているグループが三つ。

俺と同じように様子を見てる者が四人。残りの者は一対一で戦っている。


ならば、と俺は膠着状態のグループに襲い掛かる。


互いに睨み合う状態にあり、他からの攻撃を想定していなかったのだろう。俺の奇襲にあっさりと二人が倒れ、武器を構え直している間に懐に侵入し、強烈な一撃を浴びせ、離脱。


再び様子を見ると、全体の数は既に十二、三人程になっていた。

睨み合い、固まっていたグループも、気が付けば既に一対一や二対一の状況になっており、こうしている間にも数名が倒れていった。


(ふぅ。そろそろ行くかぁ)


俺は、開始前から視線を送ってくる男の元へと歩みを進める。

男は試合開始後も変わらず、俺を睨みつけていた。


「なあ、俺、君と面識あったかな?」


「…………」


無言でこちらを見据える。


「うーん、まあいいか。じゃ、勝負しよう!」


「……ましい」


ボソボソ、と何かを言っている。


「え?」


「ねたああああ!!ましいいいぃぃ!!!!」


そう叫び、男は双剣を交互に切りつけてくる。


「おっと。何に怒っているのか分からないけど、俺が何かしてしまったのなら謝るよ」


理由を聞き出そうとするも、男は狂ったように叫びながら切りかかってくるのみで、会話が成立しない。


どうしたものかと考えていると、真横から殺気を感じた。


俺は後ろへ飛び退き、辺りを見渡すと、気づけば残っているのは三名のみだ。


「<瞬断>の弟子、ヴェルト・ダンツァーで間違いないな?」


「ああ、そうだ」


俺が簡潔に答えると、男は三節棍を構える。


「イリーガル・ストレーだ。そんな雑魚よりも、俺と戦え、ダンツァー!」


気に食わない。我を通すことは誰にでもある。しかし、他人を貶して、ましてや自分と同じ立場の者を蔑んでまで自分の行動を押し通すなど、とても許せるものではない。


「もちろん戦うさ。但し、彼への侮辱は取り消せ、ストレー!」


「雑魚に雑魚と言って何が悪いというのだ!」


俺はチラリ、と双剣の男に目をやる。相変わらず俺を凝視しているが、どうやら今は俺と戦う気はないらしい。


「ようし、わかった。ならばこうしよう。俺が勝ったらそこの男に謝れ。俺が負けたら、そうだな……。一週間お前のパシリになってやる」


「面白い。構わんぞ」


「決まりだな」


そう言って、俺は零の氷刃(アルマス)を構える。

一歩、また一歩。ストレーがジリジリと間合いを詰めてくる。


「どうした?デカいことを言った割には慎重じゃないか。負けるのが怖くなったか?」


「戦闘中だろ?」


ストレーの背後から俺の声。しかし、俺の姿は彼の目の前にある。


「無駄口叩いてんじゃねーよ」


今度は右からの声。


「ずあっ!!」


三節棍を棒状へと戻し、そのまま声のする方へと薙ぎ払うも、そこに俺の姿は無かった。

ストレーが目線を元に戻すと、さっきまで剣を構えていたはずの俺の姿は見当たらない。


「こっちだ!」


再び背後からの声。ストレーは振り向きざまに三節棍を鋭く突いた。


ガギイイィィ!!


「よぉし!手応えあ……り……?」


確かな手応えを感じ取ったストレーの攻撃は、俺の頭部に確かにクリーンヒットしていた。

但し、氷で出来た偽物の俺に。

俺の形で出来た氷は、水となって地面へ吸収され、本体を見失ったストレーが硬直する。


「シイッ!!」


完全に動揺したストレーに背後からの一閃。文句のない致命傷を与え、ストレーは失格となった。


「さて、と。待たせたな!……って、あれぇ?」


双剣の男は、どこを見渡しても居なくなっていた。


(しまった!姿を見失った!!)


「第五ブロック勝者、ヴェルト・ダンツァー!!」


高らかに俺の名前が宣言され、場内が割れんばかりの拍手に包まれる。


「はぇ?」


俺は何とも間の抜けた声を出し、ようやく状況を掴み始めた。


(あぁ、実力差を判断して棄権したのだろうか?でも、あれだけ俺を恨んでるのに、そうすんなりと受け入れられるものなのだろうか?)


疑問は残ったが、とりあえず、予選突破にホッとする。


「それではこれより、十五分の休憩を挟みまして、第六ブロック予選を行います」


拍手喝采の中、闘技場を後にする。

競技用通路まで戻ってきた俺は、何とも言えない達成感に満ちているのだった。

楽しんで頂けてますでしょうか?

もし宜しければ、より良い作品にしたいので、皆様の感想や評価を頂けたら、と思ってます!

誤字脱字の報告もありましたらズバズバっとお願いします!!

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