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あるトリッパーの話

異世界トリップとかよく聞く話で



その世界では最後はイケメンとハッピーエンドが定石。



それがこの世界の常識でしょ?





+++++++++++++++++++++++++++







  

 3年前私は18歳でこの世界にトリップした。部屋でごろごろしてたらいきなり召喚なんて目にあってさ、そりゃびっくりしたさ!しかも落っこちた先は王様の膝の上!なんてテンプレな展開なんだと当時思ったさ。


 それからの私の生活もテンプレどうりで、私はウハウハな生活を送っていた。巫女さま巫女さまとあがめられ周りのイケメンどもはみんな私に惚れた。そんななか私が恋に落ちたのはこの国の王だった。かっこよくて夢にまでみた王子様。素敵な素敵な旦那様。


 正室になって国民からも絶大な支持。そして私が召喚されたことによって国は豊作続きとなり戦をやれば負けなしで巫女を通り越してついには女神とまで言われていた。



 私はこの世界の女神なのだ。



 でも今の私はついこの前までの豪華絢爛なドレスなんかじゃなくてごわごわとした糸がムズムズする簡素なワンピース一枚。ふかふかのお姫様ベットで寝起きしていたってのにベットとはいえないようなもので寝起きしなくち

ゃいけないし。


 まるで囚人のようだ。いや囚人なのか。


 月明かりがぼんやりと差し込んでくる。私どうなっちゃうんだろ。


 どうしてこんなことになってしまったのだろうか?


「あーあ。笑いしかでてこないや」


 人間境地にはいると笑えてくるって本当だったんだ。なんたって明日は私の処刑の日なんだからね。
















「さあ毒婦に正義の刃を!!」


 盛り上がる群衆たち。滑稽だなぁ人の死を見てなにが面白いんだか。でも国を貶めた毒婦の処刑となれば皆の娯楽でしかないのだろう。暇人が!!


王の隣にはお腹が大きな女性が仲睦まじく立っている。


「毒婦に制裁を」


「正義の刃よ!」


「放て!」


 王の怒声とともに上がる炎。四方から放たれた炎はやがて火炎となり業火となった。ぱちぱちと焼けていく音が聞こえる。








 死にたくない









 死にたくなんてない……いやだ。死ぬなんて。死んじゃうの?あれ?私ってここで死んじゃうんだ。死ぬ?死ぬってなんだっけ?死――

















 熱い熱い熱熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いい熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い





















「毒婦が焼けていくぞ!」


「苦しめ!苦しむんだ!」


「こりゃあおもしろい」






















 そして国中から毒婦とされた私は火あぶりで殺された――――はずだった。そのまま死んでしまえばどれだけ楽であっただろうか。私は生きてしまった。皮膚は焼けただれ目はつぶれ前を見ることができないというのに耳だけが周りのことを伝えてくる。そして再び私は処刑された。火ではダメかと思ったのか次は透明な水槽に閉じ込められ流水音で溺死かとわかった。だが私は再び生きてしまった。水責めのせいか今度は耳も聞こえなくなっていた。それでも生きていたのだ。三度目の処刑方法は古典的なギロチンだった。さすがに首と胴体が離れてしまえば生きていまいと思ったのだろうが、それでも死ぬことはできなかった。そして私は何十回と殺された。それでも死ねなかった。そして何百回殺された。それでも死ねなかった。


 月日は流れ国民のほとんどがはやりの病で死んでしまった。愛した王もその病で死んでしまった。


 私は解放された。目も見えない耳も聞こえない。口もどこかへいってしまってしゃべることもできない。私に居場所なんてなかった。誰もいない街をひとり歩く。何も見えなくて何も聞こえないが誰もいないことは分かった。私は一人歩いていく。静かな街で一人だった。焼きただれたままの足を止めた。歩くだけ無駄だと分かったから。どうせ死ぬことはないのだとその場でうずくまる。


 どうして死なないのだろうか。


 生への渇望なのひとかけらも残ってなどいなかった。


 死なせてくれないのだろうか。


 私の問いに誰も答えてはくれない。みんな死んでしまったからだ。


 私は歩き出した。ただ歩き出した。


 何も聞こえないというのにわかる静寂が嫌だった。


 もしかしたらまだ生きている人がいるかもしれない。


 違う国ではまだ生きている人がいるかもしれない。


 私はそれだけを考え歩き出した。


 もう静寂は嫌だ。


















 私は歩いた。ただれてしまった、今にもちぎれそうな足ではなかなか先になど進めなかった。それでも私は歩き続けた。


 幾千回と太陽がのぼり落ちていく。それでも私は人に出会えなかった。

 


 幾万回と太陽がのぼり落ちていく。それでも私は人に出会えなかった。



 幾億回と太陽がのぼり落ちていく。それでも私は人に出会えなかった。



 そして、幾兆回と太陽が落ちていこうとした日だった。



 私は人に出会った。



 けれど私は―――




























 私は歩いた。


 もう寂しくない。


 ごちそうさま。












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