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こうして僕は勇者となった。


シューインが丁寧な手つきで箱からアウラと呼ばれたノートパソコンを取り出す。 ノートパソコンの全体を見ても、普通の物との違いは解らない。また訳が解らなくなる。


「少しばかり待っていてくれたまえ。アウラの目覚めには僅かばかりの時間が要るのでね」


大仰なことを言いシューインはノートパソコンの電源ボタンを押した。


おい、ただパソコンを立ち上げるってだけじゃねぇか。何が目覚めだ。


少し待たされた後、ノートパソコンは起動音を鳴らす。 デスクトップにはアイコンが一つしかなく、背景は青地に白でエンブレムの描かれた国旗の様な物だ。 よく見ればそれは朝日をモチーフにしている様であり、もしかしなくてもアサヒキングダムとやらの国旗である様だった。


「勇者殿、こちらに」

ノートパソコンは事務机の上に置かれている。その前に用意されたパイプイスに座るよう促される。


どんどんと逃げ場が無くなっていっていく様な錯覚が僕を苛む。それでも何故か用意されたパイプイスに、素直に座ってしまっていた。


シューインが横からノートパソコンを操作し唯一のアイコンをクリックする。


そのアイコンは名がアウラの審判となっていた。




パソコンの画面が切り替わる。いきなりブラックアウトしたかと思えば画面の外から白い糸の様なものが幾条も現れ、うごめきながらもそれらは文字の形に集い、文章を作り上げた。


【問1 貴方は神の存在を信じていますか?】


はい Y /いいえ N



なんだ、アンケート? 何が始まるかと思えばただのアンケートかよ。ちょっと構えていたのに拍子抜けだ。 まぁ、とにかく進める必要はあるのだろう。 こういう形で僕が勇者か否か量るというなら好都合だ。勇者らしくない解答を選び続ければ良い。 取り合えずこの問いに対する答えはNOだ。


キーボードでNを打つ。

そのはずが僕の指はYを叩いており、問1に対してイエスと答えていた。


「は?」


驚き自分の右手を凝視する。自分の意志に反して動いた右手が酷く不気味な物に思えた。


【問2 貴方は定められた運命に抗うことが可能だと思いますか?】


次の問が画面に紡がれる。 それを見て逡巡した末 キーボードを打つ。Y。またも僕が打とうとしたのと逆になった。


【問3 絶対的な正義がこの世界に在ると思いますか?】



Nを押す。三度目にして初めて僕の指は僕の思い通りの所へいった。



【問4 世界から半分の人間が間引きされるとして、自分が生き残る側になれると思いますか?】



考える。試しにYを押そうとすると、僕の指はNを押す。


やっぱりだ。どういう理屈かはさっぱりだが、 どうやらこのアンケート虚偽の答えは受け付けないらしい。 本心と反対の答えを打とうとすれば指が勝手に本心の方の答えを打ってしまう。


これにしても、さっきの`王権´とやらにしても、得体が知れなさ過ぎる。催眠術の類かとは思うが本当にそうかは不明だ。 魔法とか言い出されるくらいなら催眠術のほうがまだマシだが気味が悪いのには変わりない。



【問5 大切な人を守る為に、貴方は他人を害することが出来ますか?】



【問13 晴れの日と雨の日なら晴れの日の方が好きである】




【問25 人を傷つけようと思った時は、口よりも先に手が出る】




【問58 夜 月を見上げた時、美しいと思う以上に昂揚を感じる】




アウラからの問いは終わる気配が無い。意味の無いような問いから自分の本性を見せ付けられる様な問いまで、数限りなく投げ掛けて来る。問いの数が50を越えた辺りから半ば僕は自動的に成りつつあった。 どうせ指が勝手に本心を答えてくれるのだ。気味は悪いが楽と言えば楽だ。


【問97 愛する人と全世界を天秤にかけた時、自分は愛する人を選択する】




【問98 死にたいと心の底から考えたことがある】




【問99 人を殺したいと心の底から考えたことがある】





問100を前にして問だけを紡いでいた画面の白い糸が、一つの文章をつくる。



【長らくお疲れ様でした。次の問にて私の審判は終了となります。最後の問いは二択ではなく口答にて行って頂きます】


最後の問い。その一文に緊張を覚える。今までの解答がどういう評価となっているにしても、この問いの後に僕がこいつらの求める勇者なのかそうでないのかはっきりしてしまうという訳だ。


【それでは問100です。嘘偽りの無い解答をお願いします】




黒い世界で白が絡み合う。最後に生まれたのは、 誰しもが一度は考えたことのあるような問いかけだった。







【貴方は、一体何のために生きているのですか?】




何のために。


何のために僕は生きているか。


問いに対する答えは、考えるよりも早く僕の口からこぼれ落ちた。




「死ぬため」


出た言葉に、一欠けらの嘘も無い。



「いつかこの命を遣い潰す為に、僕は生きている」




アウラは僕の答えを聞き届けた。 最後に【有難うございました】と画面上に表れ、白い糸は画面中央を基点として渦を巻くように集っていく。


白い糸が完全に蕩けあい、一つの円となった。その円から文字が一つずつ吐き出され、100の問い掛けの結果が示される。





【結果発表


貴方の称号は第一を《歪なる》 第二を《創想の》 第三を《勇者》




《歪なる創想の勇者》


となります】



こうして僕は、勇者となった。残念ながら、望まぬながら。


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