嘘だろ
「つーか、嫌とか言う権利はお前には無い訳だ」
「何でですか」
「だってほら、誘拐犯なんダロ?俺らは」
くそ、ニヤニヤするな。 結局脅してるじゃねぇか。
「というか、何かの間違いなんじゃないですか? 僕に勇者足る要素なんて何一つ無いですよ」
何せ僕は押しも押されぬ普通の高校生なのである。 天涯孤独で友達もほとんど居なければ恋人もいないのだから普通以下と言っても過言ではない。
「でもなぁ、予言じゃお前だ、って出たんだよなぁ」
「良い大人が予言とか信じてんじゃねーよ。頼みますからもう家に帰して下さい」 これ以上は付き合って居られない。 バイトも遅刻は確定だが、今からなら行けば店長も許してくれるかもしれないし。
「ホントに勇者じゃねーってんなら帰してやっても良いんだけどな。 ただの兵隊なら数は足りてるし」
「勇者じゃ無いです。 間違いなく。今までの僕の日常に誓っても良い」
僕の言葉のナニカが琴線に触れたらしい。言葉の国王兼町長がタバコを握り潰し、僕を厳しい目で見据える。
「誓うと言ったな。この俺を前にして。その言葉に偽りは無いか」
先程までは半分ふざけたような態度であったのにも関わらず、今の国王兼町長はものを言わさぬ威圧感をその全身から放っている。 その圧力に思わず「王」という言葉が頭に浮かんだ。
その考えを目を閉じ打ち消す。 こいつは頭のおかしい誘拐犯にすぎない。馬鹿な想像はするな。
「有りません」
「よかろう。スキル“王権”による誓約。貴様が`勇者´で無かった場合、我々は貴様を解放する。 貴様が`勇者´であった場合我々は貴様の日常を頂く」
厳かな口調で国王兼町長が告げる。最後まで言い切った瞬間、僕と国王との中間点から一瞬光が溢れた。 その光は複雑な幾何学模様の魔法陣となり僕と国王を囲うように拡がったかと思えば、そのまま光を失い解けていった。
「っな、嘘だろ……」
なんだ今のは?
僕の足元にあるのはただの床。光を発する昨日などあるはずが無い。 それに今のは魔法陣か? つまり、 魔法?まさか、本物の?
「嘘では無い」
国王ははっきりとそう言った。
「そう、国王陛下のスキル“王権”の前に嘘は有りません。 王の御前での誓約は絶対遵守のものとなります。 勇者殿は己の日常を対価に自由を求めた。結果がどちらになったとしても、 先の誓約は確実に果たされることとなります」
シューインの言葉はただの音の羅列として僕の脳みその中に入ってきた。 スポンジに水ずが徐々に染み渡る様に、その言葉の意味を理解していく。
もしかして、僕はとんでもない過ちを犯してしまったんじゃないか? 絶対に差し出しちゃいけないものを差し出してしまったんじゃ無いか?
混乱する僕の後ろから一人の男が近づいて来る。
必要以上に慌てて振り向く。するとそこに居たのは先程も見た中年男だった。
「陛下、賢者様。アウラ様をお連れしました」
そういうと中年男は両腕で抱えられる大きさの豪奢な箱を国王と僕の中年に置いた。
なんだ、アウラ? 人間だと思っていたが、箱?
さっきから続く思いがけない展開に頭が着いて行けない。
「丁度良いタイミングだ」
国王は最初の面白がるような表情に戻っている。 だがそれを、さっきまでと同じ様には見られなかった。
「これからオメーにはアウラの洗礼を受けて貰う。オメーが本当に勇者なのかどうなのか、これではっきりするぜ」
「………貴方がたの用意したもので判断するのは、不公平何じゃ無いですか」
「心配しなくても勇者じゃねーのを勇者に仕立てあげるつもりはネェさ。俺らが欲しいのはホンモノの`勇者´なんだからな」
国王が箱の蓋に手をかけ、そのまま箱を開いた。
箱の中にあったものが僕の視界に入る。 意外なその物体にまたも僕は誰かに助けを求めたくなった。
「それに、アウラの審判は誰よりも公平だ」
箱の中にあったアウラと呼ばれる存在は、市販されているのと何も変わらない、ノートパソコンと同じ形をしていた。




