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神社紀行  作者: flat face
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淡嶋神社

 和歌山市の加太にある淡嶋神社は淡島信仰の本社です。

淡島信仰とは淡島神に対する信仰で、婦人病に効験があるとされます。

江戸中期に淡島願人という乞食坊主たちが神棚を背負って祭文を唱えながら、縁起や功徳を説いて各地を巡回し、淡島への信仰を広めました。


 その本拠に参拝するため、私は南海電気鉄道の加太駅で下車し、住宅地を通って詣でました。

住宅地は薬屋さんや煙草屋さんなどレトロな店がぽつぽつとあり、たまにお年寄りと出会す他は人気がなく、過疎化しているのかなと思いました。

途中で名物のよもぎ大福の製造元である小嶋商店に行き当たったため、五個入りのパックを一つお土産に買いましたが、蓬や餡子の味はくどくなくて上品で、餅の感触はしっかりして好みでした。


 到着しましたら入り口の入って直ぐ左に土産物屋さんや食事処を兼ねた店が三軒ありましたので、まずは腹拵えと洒落込みました。

店の周りは魚介類を売っていることもあるからか、微かに魚料理の香りがしました。

ただし、境内は海に面しているのですが、磯の臭いはしませんでした。


 テレビでも紹介されたらしい満幸商店は混んでおり、待っている人が割りと見受けられましたが、名簿に名前を記入して待機することにしました。

暫くして店内に通され、しらす丼とわさびスープを注文しました。

小嶋商店もそうでしたけれども店の様子は満幸商店もレトロな感じでした。


 丼はミニであってもどっしりしており、スープも量が多かったです。

しょっぱい梅干しと甘辛のタレが丼には付いており、釜揚げのしらすは小さいながらも身がしっかりしていました。

鯛の骨を食べられるほど煮込んだスープは、コクがあってまろやかで、魚の味もちゃんとしており、薬味たる山葵の辛みで単調にはなりません。


 三月三日の雛流しで有名な淡嶋神社は本殿に留まらず、あらゆる建物に人形が溢れており、奉納の受付もありました。

そう書けば不気味に思えるかも知れませんが、人形は雛人形や七福神、干支、観音菩薩、狐狸、果てはアフリカっぽいお面まで飾られ、余りに雑多であって却って愉快でした。

境内には二月八日の針供養を行った後に針を納める針塚もあり、女性を強く意識した神社であることが窺われました。


 しかし、祭神は少彦名命とされています。

もっとも、これは神仏分離などによるものらしく、淡嶋神社の祭神は伊邪那岐神と伊邪那美神の第二子である淡島ともされているそうです。

かつて淡嶋神社は友ヶ島にあり、伊邪那岐と伊邪那美により海へ流された淡島はその島に漂着したとのことです。


 また、淡島神社の祭神は婦人病に罹ったことがあり、名前は波利采女であるともされ、龍王の娘にして牛頭天王の妻であるらしく、針供養は針才女に引っ掛けたともされます。

淡島の兄である水蛭子神も伊邪那岐と伊邪那美によって海へと流されて龍王に育てられました。

体が弱かった淡島は龍王に預けられ、長じて牛頭天王と結婚し、『祇園牛頭天王縁起』で最強の防疫神と語られる彼と幸せに暮らしたかも知れません。


 なお、天王も国家神道によって神社から抹消されました。

ですが、祇園祭には天王に対する信仰の名残が見られ、淡嶋神社の末社にも婦人病に効験ありという昔ながらの淡島信仰が謳われていました。

安産や夫婦円満にも効験ありとされる淡嶋神社の境内には若い女性たちの姿も少なくはなく、これらは夫婦で貫いた意地とも感じられます。


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