第8話 一発一ゴールドの絶望、あるいは才能の証明
気がつくと、セントラルシティのロビーに転送されていた。
リスポーン地点が噴水前広場に更新されたんだ。
え、一人になっちゃった? と周囲を見回すと、すぐ左に八代がいた。
アカウントを作るときに見せてもらったのとまったく同じの、黒とグレーの迷彩服が目に飛び込んでくる。
そしていまさらだけど僕は、多色構成の迷彩服を着ているのに気がつく。
チュートリアル中は、自分の格好なんて気にしてる余裕なんてなかったしね。
「よっ!」八代は軽く右手を挙げる。
「うわーやしろー! よかったー。僕、一人になっちゃったかと思ったよ」
「おう、カツミ! ……改めて見るとほんっとに、ちんちくりんになったな」
「ちんちくりんって言うな! 好きでこうなったわけじゃないよ!」
「悪りい、わりい。で、スナイパーになれたみたいだな。あとな、ゲーム内じゃプレイヤーネームで呼ぶのが常識だぞ」
「あ、ごめん。えっと……エイト、だっけ? なんで僕がスナイパーになれたって、かわかるのさ?」
「俺の頭の上を見てみ」と、自分の頭上を指差す。
そこには鬼軍曹と同じように、『Attacker:EIGHT-A』と表示されているタグが光っている。違うのは色が青だったことだ。
「あ、じゃ僕もそうなの?」
「おう」と言いながら、システムメニューから『ハンドミラー』を選択し、軽くタップする。
その瞬間、虚空が光輝くポリゴンへと収束しハンドミラーが実体化していく。それを手に取り、僕に渡してくれる。
「……あ。これ、僕なんだ」
そういえば、VR空間で自分の姿を見るのは初めてだ。
ハンドミラーに映る金髪碧眼の美少女が、自分と同じように戸惑った顔をして瞬きをする。その可愛さに、一瞬だけ自分の職種のことを忘れそうになる……。
いけないいけない、タグを確認しなくちゃ。
頭上には『Sniper:A-Katsumi』のタグが映っていた。八代と同じ、青だった。
「で、や……エイトはどんな目にあったの? 僕なんて酷くてさ――」
僕は鬼軍曹のことや、拳銃もサブマシンガンも全然ダメで、狙撃銃で50メートル先の標的に、5発全部真ん中に当てたことを話した。
「なにそれヤベぇな。まるっきりスナイパーじゃん! あ、でもそっか。アシスト・マーカーを使えばできるか」
今度は僕が驚く番だ。
「え? 支援UI? なにそれ? 鬼軍曹はそんなもの教えてくれなかったし、僕使ってないよ」
「え、本当か? 俺だって支援UI使ったんだぞ。50メートルなんて、普通はシステムの支援があっても初心者は数発に1発くらいしか当たらないんだぞ」
「そうなんだ……スコープを覗いて待ってたら、いままで揺れていたレティクルがピタッと止まって――」
僕は覚えていることを、説明する。
「そっか。お前はきっと、凄腕のスナイパーになれるよ。俺が保証する」
「えへへー。で、エイトの方はどうだったの?」
八代は高い反射神経を鬼軍曹に見抜かれたそうだ。拳銃や短機関銃で次々と的に当てるのを見て、鬼軍曹は移動標的システムまで起動したそうだ。
それすらも全弾命中させ、高いセンスを見せつけたということだ。
「そして鬼軍曹が言ったんだ。『貴様、筋がいいな。好きな獲物を選べ。ただし、前衛として地獄へ飛び込む勇気があるならばな』って」
「で?」
「当然答えはYESさ。そしてこいつを選んだんだ」
と、M16A4を実体化させる。
「んで、初期装備として小口径弾(5.56mm NATO弾)を90発支給されたんだ。カツミの獲物を見せてくれよ」
「うん、いいよ」
僕もシステムメニューから狙撃銃M24――全長約1メートル、重さ約7kg――を実体化させる。
光り輝くポリゴンが現れたので、僕はその光を腕の中に迎えるように手を伸ばす。
収束が終わると同時に、ずしりと両腕に食い込む、7kgの冷たい感触――思わずふらつきそうになるのを、必死に堪えた。
「――これ、めっちゃ重いんだよね……そんでもって長い! 僕の身長の三分の二近くもあるからねっ」と、八代に渡す。
「うわっと、なんだこれ……鉄の塊かよ。よくこんなのを選んだな」
「選んでないよ? 鬼軍曹に『お前の新しい腕だ』って支給された……っていうか、なんか押し付けられたんだ。弾倉、空っぽなのに」
「えー? じゃ、これだけ?」
「あとは、10ゴールド」
「ひっでーな。俺も10ゴールドもらったけど、弾は90発あるから……って、狙撃銃の弾、1発いくらするか知ってるのか?」
「あーうん、1発1ゴールド……げ、10発しか買えないじゃん!




