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黄金凶星(ゴールデン・アステリズム)〜女子化した僕がVR銃撃戦で死神と呼ばれ、大切な師匠を裏切った最悪の宿敵を撃ち抜くまで〜  作者: 中島しのぶ


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第63話 『絶対』の邂逅

 次のマップ表示まで残り約4分。

 周囲1キロ以内に敵影がないことを、僕の『アブソリュート・シンクロニシティ(絶対座標把握)』で確認し、僕たちは大木の根元で短い休息を取ることにした。


「いやー、戦闘の連続はキツイなぁ」

「まだまだこれからだぜ、エイト」

「わかってるって、うるさい浪人生だな」

「てめぇ、今年は受かるって!」

 二人がバカ話を始めたので、状況を伝える。


「残りユニットは6。だいぶ減ったけど、絶対シードが2、予選1位通過組が2。そして2位3位通過組が僕たち以外に2ユニット。残り人数は32人。開始から16分で、お互い潰しあってくれたみたい」

「うむ、減ったな」

「カツミのスキルは便利だなぁ」

 僕の苦労も知らず、八代が呑気に言う。


「その分、脳への負担が大きいの! ベルさんにバックアップしてもらわなきゃこんなこと一人じゃできないんだから!」

「わかった、わかった。悪かったよ」


「シオンはね……」

 不意にベルさんが口を開く。

 僕は話の続きをうながすように、彼女の顔を見つめる。


「シオンは昔、同じユニットだったの。私が『アブソリュート・シンクロニシティ』を覚醒した時にね」

「え? じゃ、ザックとも……?」

「「ザック?」」

 テツさんと八代がその名前に驚く。昔、ベルさんがザックと同じユニットだった――そのことを知っているのは僕だけだった。


「そう、彼女のスキルはカツミと同じ『センス・シンクロニシティ』。だけど彼女の精度も低くてね、ザックから私と同じに戦力外として追い出されちゃったの。彼女も私と同じ。それまでは最高のバディだったんだけどね。その後、私は単独でPvPしてたけど、彼女はちゃんとユニットを立ち上げた。私なんかよりずっと強かった――」


『お前は戦力外だ』

 その言葉を思い出したのか、ベルさんの瞳が一瞬だけ暗く沈んだ。

 そしてシオンも同じだったんだ。ザックの求める「絶対」には届かなかった。


「でも、僕たちは勝ちました! この4人で! そうでしょ? ベルさん! だから次はザックを倒しましょう!」

「ええ。そうね、カツミ。あいつを引きずり下ろしましょう」

 ベルさんの声は、凍てつくように冷たかった。


 自分を『出来損ない』と切り捨てた男。居場所を奪い、()()だけを残した男。その男を、自分が完成させた「最高傑作」である僕の手で否定する。それが彼女の執着の正体だ。


 僕は黙って頷く。

 ベルさんの絶望も、シオンの微笑みの意味も、本当のところは僕には分からない。

 けれど、彼女をここまで追い詰めたザックという男だけは、許せなかった。


 ――00:10


 カウントダウンが始まる。


 ――00:05


 会話は途切れ、森の葉擦れの音さえも消えたかのような静寂。


 ――00:03

 ――00:02

 ――00:01


『――システム、オンライン。全ユニットの現在地を全開放します』


 視界が白熱し、僕の『アブソリュート・シンクロニシティ』が全フィールドの真実を強制的に引きずり出した。


「……っ!?」

 脳を焼くような強烈な質量。西の断崖絶壁――そこには他の有象無象をすべて飲み込むほどに巨大で、冷徹な殺意を孕んだ「点」が鎮座していた。


 方位角273、距離857。

 その巨大な光点に向かって、他の4つのユニットが吸い寄せられるように集結し始めている。


 断崖の下で足止めされているもの、陰に潜んで漁夫の利を狙うもの……。


 だが、その誰もがその「点」の放つ圧倒的な威圧感に、手も足も出せずにいた。


「見つけた……」

 ベルさんの喉が、熱に浮かされたように鳴った。

 僕たちの『絶対座標』に、ついに逃れられない宿敵の名が刻まれる。


 ユニット名『アイアン・ジャスティス』

 リーダー・ザック


「カツミ、他ユニットを『盾』にするわよ。全員がザックに気を取られている今が、唯一のチャンス」


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