表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金凶星(ゴールデン・アステリズム)〜女子化した僕がVR銃撃戦で死神と呼ばれ、大切な師匠を裏切った最悪の宿敵を撃ち抜くまで〜  作者: 中島しのぶ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/66

第62話 森へ……

 僕たちは方位角ゼロを目指し北上していた。重いM24のスリングが肩に食い込む。ベルさんも足取りがおぼつかなく、テツさんとエイトを先行させていた。


「ベルさん、大丈夫……?」

 少し上り坂になってきた道を、時々立ち止まり深呼吸を繰り返す彼女の横顔を盗み見る。座標データの処理だけでもかなりの負荷なのに、長距離移動は彼女の身体……というか精神にかなりのダメージを与えているに違いない。


「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫よ。ちょっとだけ酸素が足りないだけ」

 それは現実世界(病室内)での身体のことなんだろうか……僕はそんな気がしたけど、口には出さなかった。


「少し休みます? もう僕たちの位置はバレてるでしょうし、相手(シオン)も待ち構えているでしょうから少し体力温存(心を休めて)……」

「いえ、大丈夫。平気よ、これくらい。シオンのツラを拝むまでは、倒れてられない。私たちの位置がバレてても彼女のスキルはカツミの『赤眼』ほどの精度はないわ。それに、あなたのような『コンマ数秒の静止』からの射撃をしているのを見たことはない」


 そうか、ベルさんはシオンの過去を知っている。もしかしたら、同じユニットで一緒だったのかもしれない。あるいは因縁の間柄とか……。


「あの子は私たちみたいに『座標位置』が視えるわけじゃない。だからテツとエイトで側面から揺さぶって、シオンたちの超長距離を妨害する」

「わかりました」


 僕はシオンを探る――方位角ゼロ、距離541に視えた。もう、目と鼻の先だ。完全にベルさんをロックオンしているな。お互いに射程距内だ。

 けれど、動かないのはなぜだ? ()()()()()()()()()()()()()のに……。


 僕は139メートルほど先行しているテツさんと八代に指示を伝える。

「エイト。作戦だ。聞こえる?」

『ああ、バッチリ!』

「オッケー。距離139、方位角ゼロを中心に、13と347に別れてシオンたちがいる。二人で右翼と左翼を揺さぶって。僕はその間にシオンを倒す」

『オッケー。13と347な。距離はどれくらいだ?』

「距離はそれぞれ431と439。けど、森の中だから見えにくいと思う。両翼の2人はスキルがないから、見つからなければ撃ち逃すような距離じゃない」

『ああ、気を付ける。じゃ、4分後に攻撃開始する……』


 ――ドガガガガガガッ!!

 ――タタタンッ! タタンッ!


 奇襲が成功したようだ。シオンの方を見るとベルさんに集中していたようで、チームメイトが倒されていることに気づいていなかったみたいだ。

 そうか、シオンが狙撃を躊躇している理由はベルさんを盾にする、僕の「赤眼」による精密な狙撃を警戒していたからだ。


 今ならいける――。

 ――ジャッ――カリンッ……。

 ――カチッ――ガチッ。

 そのままボルトを前進させ、ハンドルを押し下げて完全閉鎖する。


 スコープの十字(レティクル)の先に、再びシオンの姿を捉える。

 彼女は古びた大木の根元、幾重にも重なる太い幹の隙間から、こちらを覗いていた。


 風の流れ、湿度、重力。

 僕の脳が瞬時に弾き出した「正解」へと、1ミルほど左上に銃口を補正し、静かに指先に力を込める。


 ――カチッ――シュパッ!

 スコープの中で、シオンの頭部が衝撃で跳ね上がる。

 彼女は崩れ落ちる間際、確かに僕の『赤眼』を……いや、僕の後ろに立つベルさんを見つめて、微かに微笑んだように見えた。


 ドサリ、という生々しい音が聞こえた気がした。

「……やった」


 あんなに強かった『ゴースト・アイズ』のリーダーが、今はただの動かない肉塊として、大木の根元に横たわっている。


「やったわね。カツミ……」

 隣でベルさんが、絞り出すような声で呟いた。

 その横顔は、勝利を喜んでいるようには見えなかった。


 ただ、何年も止まっていた時計の針が、ようやく重々しく動き出した――そんな、ひどく疲れた色をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ