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黄金凶星(ゴールデン・アステリズム)〜女子化した僕がVR銃撃戦で死神と呼ばれ、大切な師匠を裏切った最悪の宿敵を撃ち抜くまで〜  作者: 中島しのぶ


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第46話 三年前の因縁、あるいは偽りの決別

 僕の叫びに、ベルさんは遠い目をして少しだけ微笑んだ。その視線は僕ではなく、かつて彼女の隣にいたはずの『誰か』を追っているようだった。


「昔ね、私にも相棒がいたのよ。ザックっていう、向こう見ずなアタッカーがね。私たちは同じユニットで活動していた」


 ザック!?

 ――あの日、僕に絡んできて、そして先日のミドル級戦で僕たちの戦利品を横取りしたあの男。

 ベルさんが始めたのは、リリース一ヶ月くらいって言ってたから、もう3年も前のことなんだ……って、そのときのベルさんは、中学1年か2年生!? ザックって、いったい何者なんだ?


 そんな僕の小さな嫉妬心をよそに、ベルさんは昔語りを続ける。

「……ある事件をきっかけに、()()のスキルが発動したの。そのころはまだ不安定で、プレイヤーの位置情報も不正確だったり視えなかったり。もちろん脳が白熱しながらね。

 ザックはそんな私を、戦力外としてユニットから追い出したの」


「ひどい話ですね……」

 ある事件のことも気になったけど、僕はそんな言葉でしか答えることができなかった。


「それから私はプレイヤーが少ない場所ばかりを選んでPvPを続けてたんだけど、2年くらい前かな? 現実(リアル)での不調が始まった頃からこの武器屋を始めたの。

 ログインは週一くらいの頻度だけどね。ここなら好きな武器いじりもできるし、情報も、そしてある程度のゴールドも手に入るし」


 僕は無言でうなずき、話の続きに聞き入った。


「けれど、最近になって……どうしても確かめたいことがあって毎日ログインを始めたの。

 そしたら、私の『眼』に、新米スナイパーがザックに絡まれているのが『視えた』の。

 あれはね、カツミちゃん。きっとシステムが私にくれた、最後のギフトだったのかもしれない」


 けれど……と、ベルさんは悔しげに唇を噛んだ。

「……先日の『タイラントの重装核』。本来なら、あれはあなたの『赤眼』をこの世界に定着させるための、最高の鍵になるはずだった。

 それをあのハイエナ……ザックたちが横取りして、ただの(ゴールド)に換えた。

 私からスナイパーとしての未来を奪ったあの男が、今度は、私が見つけた『真実』の芽まで摘もうとしたなんて」


 チュートリアルを終えたばかりの僕の中に、彼女は自分が見失った「スナイパーとしての真実」を見出したんだ。

 だからこそ、脳を焼くような苦痛を冒してまで僕を助け、そして今、奪われた『重装核』に対しても、かつての相棒への怒りを燃やしているんだ。


 店内に、重苦しい沈黙が満ちる。

 ベルさんは、伏せていた視線をゆっくりと上げ、いつもの凛とした顔に戻って僕を見た。

 「ねえ、カツミちゃん。シンクロ率がさらに高まれば、あなたは私よりももっと上の領域に届く可能性があるわ。

 それも私と違って、スキルを()()()()()()()()()()()()()()()ような」


 ベルさんは自分のこめかみを指差し、静かに、けれど宣告するように告げた。

「私のスキルは、『アブソリュート・シンクロニシティ』(絶対座標把握)――あなたは『赤眼』で一瞬の『偶然』を掴むけれど、私はこの世界(VR空間)の事象が、『座標』として脳内に流れ込んでくる。それは、この世界のすべての『必然』を手のひらに置くということよ」


 すべてを、手のひらに。

 それは万能感というより、逃げ場のない檻に閉じ込められるような、冷たい響きを持って僕の耳に届いた。


「『偶然』と『必然』の両方の『真実』を手に入れる――でも、忘れないで。

 シンクロ率が極限(100%)に達すれば、それは同時に現実(リアル)の肉体を、ただの動かない『肉の塊』へと変えてしまう可能性もあるの」


 ベルさんは、いつの間にか冷めてしまった紅茶を一口だけ含み、ふっと視線を外に向けた。


「さて、まだ叶ってもいない話はここまでよ。エイトくんがいない間に、あなたが『真実』に少しでも近づけるために、身体を動かしておきましょうか」


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