表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金凶星(ゴールデン・アステリズム)〜女子化した僕がVR銃撃戦で死神と呼ばれ、大切な師匠を裏切った最悪の宿敵を撃ち抜くまで〜  作者: 中島しのぶ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/66

第17話 外征からの帰還、あるいは三十六ゴールドの重み

 初のモンスター狩りを終え、そろそろ戻ろうかということになる。


「さーて、帰りましょうか」

「「はい!」」


 なにしろデータとはいえ、実銃でハンティングをして獲物を倒したんだ。

 八代は6発で1匹だったけど、僕は3発で3匹。しかも最後の1匹はミドル級だ。


 後から興奮してきて、すぐにログアウトなんかしたくない。


「じゃあ武器をしまって……外征からの帰還よ」


 タグが緑色に変わるけど、いつ何時他のプレイヤーから撃たれるかわからないから、警戒しながらセントラルシティに戻る。


 途中、ベルさんが思い出したように振り返って言ってくる。


「君たち、いくら儲かったかお姉さんに見せてごらん」


「え、ちょっ……あんまり見せたくないんだけど」

 八代があわてる。


「いいですよー」

 僕は余裕だからすんなり応じる。


「あ! ずりー。カツミは3匹も倒して余裕だけど、俺なんて1匹だぜ。しかも弾、6発も使ってさ」

「わかってんじゃん」


「ほらほら、まずはエイト。いくらにゃー?」

 なんかベルさんキャラ変わってない?


 八代がシステムメニューを開いて読み上げる。

「えっと、1ゴールドです」

「まぁ猟犬サイズだったからねー。ということは、600円で1000円を手に入れた。純利益は400円。前衛としてはギリギリ合格点かしら。そーいった計算も重要よ。で、ドロップは?」


「……獣の牙」

「なにそれ?」

「獣の牙ぁー?」

 僕とベルさんは、それを聞いて笑い転げる。


「だから言いたくなかったんだ!」

 八代がむくれる。


「じゃ、カツミちゃんは?」

「えーっと、36ゴールドですね。スモール2匹分が6ゴールド。ミドルが30……え、300円の投資で、3万6千円?」


 思わず現実の感覚で計算して、目眩がした。

 3発の弾丸で僕の小遣い1年分……といっても現実世界じゃ1円にもならないんだけど。


 ベルさんは僕の稼ぎより、モンスターのことが気にかかる様子だ。

「30ゴールド……やっぱりあのミドル、上位種だったのかしらね……MAXのAP800くらい?」

「そうなんですかね。胸のところになんか、一瞬赤い光が見えた気がしたんです」


「え? 私のバイザーの熱源感知には映ってなかったわよ。でも……あながち見間違えとは言えないわね。私も過去に一度だけ、同じような経験をしたことがあるから……」


 ベルさんが一瞬、遠い目をする。伝説のスナイパーだけが辿り着ける「ゾーン」の存在を確信したような目だ。


「あ、ドロップは何?」

「んーっと、『強化繊維』って書いてあります。これ、役に立ちます?」

「そうね、それでフード付きのポンチョでも作れば、赤外線も遮断するマジな『擬装服(ギリースーツ)』ができるかもしれないけど……ポンチョはスナイパーには必須装備だしね。特にカツミちゃんの金髪(その目立つの)を隠すにはね」

「ポンチョですか!」

「あーポンチョねー」


 初期装備を決めるときに八代と笑いながら選択しようとしていた、スナイパーポンチョ。

 条件未達成で赤く弾かれたあの装備が、いま、僕の手元にある素材で形になろうとしている。


「ベルさん。これ、これでそのポンチョ……作れますか?」


 実体化させた強化繊維を見せる。

 ベルさんは職人の顔になり、じっくりとチェックしはじめた。


「やるじゃない。これだけの質なら、普通のショップ品よりずっと上等なのが仕立てられるわよ。ただし――」


「「ただし?」」

 八代も身を乗り出してくる。


 ベルさんは指を三本立てた。

「工賃として、30ゴールドは必要ね」

「30ゴールド……ベルさん、足元見てますね」

「人聞きが悪いわね。素材の加工は重労働なのよ。あら、ちょうど持ってるじゃない?」


 ……やっぱり、この人には敵わないや。


「それにいまは、ゴールドを稼がなきゃ。私の(炸裂弾)、本来は0.1ゴールドなんかじゃ買えないんだからね」


 そんなことを話しているうちに、電磁ゲートが見えてくる。


 ゲートを抜けると、システム音声が響いた。


『Leaving PvP Area. Safety Zone entered』(対人戦闘エリアを離脱。セーフティゾーンに入りました)


 前を歩いているベルさんのタグが『緑』から穏やかな『青』へと戻った。当然僕も変わっている。


「ふぅ……帰ってきたー」


 張り詰めていた糸が切れ、急に身体が重くなる。

 アイテムストレージの中の36ゴールド。それを稼ぎ出した、7キロの銃。

 それらが、現実の僕にはない「重み」を伴って、僕が確かにあの戦場にいたことを思い出させた。


「さあ、店に戻って『反省会』よ。カツミちゃん、レベルも上がってるはずだから、ステータスの確認もしなきゃね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ