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黄金凶星(ゴールデン・アステリズム)〜女子化した僕がVR銃撃戦で死神と呼ばれ、大切な師匠を裏切った最悪の宿敵を撃ち抜くまで〜  作者: 中島しのぶ


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第12話 体重三十九キロの帰還、あるいは泥のような眠り

 10ゴールドをシステムメニューから支払った僕は、ベルさんから弾薬箱を受け取り、手に下げる。


「うわ、重い……ベルさん、この箱何キロあるんですか?」

「鉛と真鍮の塊だから仕方ないわよ。1発が約25グラム――薬莢・火薬・弾頭込みね。で、100発だから約2.5キロ。そして箱が約1.5キロだから、合計約4キロね」


「うわぁ。んじゃ、これと7キロの銃持ってモンスター狩りとか、PvPしなくちゃならないの?」

「アホかい。なんのために『アイテムストレージ』があんだよ!」

 と八代にバカにされる。


「あ、そうだった……忘れてたー」

 僕はそう言いながら、受け取った弾薬箱をシステムメニューから、アイテムストレージに入れる。


 弾薬箱を入れた瞬間、『Storage Allowance: 1.0 kg(ストレージ許容量:1.0kg)』が表示される。


「え!? なんか残り1キロだって?」


 ベルさんは、これだから初心者はしょうがないわねーというような生暖かい目で僕を見ながらも、アドバイスしてくれる。


「カツミちゃん、Rank1だと5キロが最大重量なのよ。その箱入れたら残りは1キロ。5引く4は1、でしょ? だから、レベルアップ……つまりレベリングをしなきゃならないの」

「ま、どんなゲームでもレベリングが一番大切だけど、一番大変なんだよ」

 と、したり顔の八代。なんかムカつく。


 レベリングもそうだけど、残り1キロの空き容量……何を装備してレベリングすればいいんだろう。


「ベルさん、残りの1キロに入る、レベリングに使えそうな何かいいアイテムはないですか?」

「そうねぇ……注入型(オート・)回復薬(インジェクター)がいいんじゃないかしら。太ももとかに突き刺すと、瞬時にLPを一定量回復できるわよ」


「じゃ、これがあれば、LPが40の僕でも生き残れる?」

「気休めね。あなたのLPじゃ、一撃食らったらこれを刺す暇もなくリスポーンよ。でも、毒や出血のデバフを消すにはこれが一番便利。一本1ゴールド……って、あなたいま、一文無しじゃない!」

「そ、そうだった」


「んーーーーいいわ。このインジェクター、3本貸しにしといてあげる」

 と、カウンターにオート・インジェクターを無造作に置く。


「え、いいんですか? お金ないのに……」

「勘違いしないで。あなたのそのAP450……それが本物かどうか、明日にでもレベリングに付き合ってあげるから、確認させてよね。私のリロード弾の『モニター』になってもらうための経費よ、け・い・ひ!」



 それからしばらく、この世界(ゲーム)についてベルさんからいろいろ教えてもらった。


 セントラルシティ内はセーフティ機構によって一切の武器が使用できない。

 例えば、銃のロックは解除できない。ナイフに至っては、(シース)から出すこともできない。


「みんなのタグの色はいま、『青』でしょ? つまりシティ内では全員非武装扱いなの。いまみたいに実体化させててもね。あーでも、武器屋(ここ)の中だけは、セーフティ機構は私の権限で解除できるんだけどね」

 そりゃそうだよね。そうでなきゃ試射できないし、ナイフの切れ味とかわからないもんね。


 シティの出入り口は12基の電磁ゲートになっていて、一歩出ると武器が使用可能(ロック解除)となり、タグの色が『赤』に変わる。

 外のほとんどが戦闘地帯(PvPエリア)。たまに砂漠のオアシスのように、非戦闘地帯もあるとのこと。


「NPCは基本『白』だけど、外だと武器を持っているNPCもモンスターも『赤』ね」

「そういえば、鬼軍曹は白タグでした」


 外では全員が武器が使用可能になる――いつでもだれにでも攻撃(PvP)が可能ということだ。

 ゲートの外は、ほとんどPvPエリア……それを聞いて明日からそこへ行くと思うと、ちょっと怖くもあるけど自分の腕と、特別な弾丸を試したくてワクワクしてくる。


「……じゃあ、今日はここまで。二人ともお腹空いたんじゃない? もう19時ごろよ」

「あ、ほんとだ」

「はいベルさん。明日、また来ますね」

「じゃねー」



 重い鉄の扉から出た直後、僕は不意にふらついた。

「おい安藤、大丈夫か!」

 八代はプレイヤー名で呼ぶのを忘れるくらいあわてる。


「ん〜大丈夫。ベルさんが言うように現実世界(リアル)の僕が、お腹空かせてるんだと思う」

「いや、それだけじゃないぞ。2時間以上ダイブしてるから、脳が疲れてるんだ。今日は飯食って風呂入って、すぐ寝た方がいいな」

「うん、そうだね。じゃログアウトしようか」


 システムメニューから『ログアウト』を選択する――視界がホワイトアウトし、「鉄と機械油の匂い」が、慣れ親しんだ「自室の匂い」へと変わっていく。


 +++


 ヘッドセットを外した瞬間、39キロの身体(アバター)で、あの重い狙撃銃(M24)を撃っていたのが、まるで幻だったように思えた。



「じゃ、また明日夕方な! 俺、宿題があるの忘れてた!」

 バタバタと帰る八代を見送り、「母さんお腹すいたー」とすぐさまキッチンに向かう。

 夕食を食べている最中、ベルさんが出してくれたコーヒーの味を思い出し、不思議な感覚を覚えた。VR空間でも、あの苦味は本物だった。


 今日は髪を乾かすのが面倒なので、身体だけ洗ってゆっくりと湯船に浸かる。


 そのままベッドに入り、ログインシーケンス、鬼軍曹、射撃の反動、5発の弾丸が的に吸い込まれた瞬間――。

 僕はそんなことを思い出しているうちに、いつの間にか心地よい脳の疲れに飲み込まれ、泥のような眠りへと落ちていった。


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