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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者
望未編

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浮気者

ダンスを終えた女子たちが各々のクラスへと帰ってくるのが見える。当然のように男子の方はどこか浮足立っていて。俺自身も彼女が返ってくることに少し緊張しているのが分かった。


葵に対して、望未に気持ちを伝えると告げた手前、今さら逃げるわけにもいかなくなっていた。


(……どうしてつい勢いで、ちゃんと伝えるなんていったんだいったんだ)


なんて今になって後悔する。彼女が徐々に近づいてくる姿見える。どこか楽し気に先輩たちと話している姿に鼓動が加速していくのが分かる。それが早すぎて、自分の呼吸のタイミングすらも少し分からなくなってくる。それを整えるように俺は俯きながら、小さく息を吐いた。


ダンスを終えた望未は真っ直ぐこちらへ向かってきた。感想を聞きたかったのだろう。軽く弾むような足取りで駆け寄ってくる彼女に、周囲の視線が一気に集まる。さっきのダンスの余韻がまだ残っているからか、別クラスの男子たちが少し騒がしくなる。


「やばくね?」

「近くで見ると、すっごいかわいいな……」


なんて声まで聞こえてくる。当然のように彼女に視線は集まっていて、めちゃくちゃ感想が言いずらい状態になっていた。そんな俺の様子を隣で葵だけは面白そうに、口元を緩めて見つめてくる。


……いや、めちゃくちゃ感想言いづらいんだけど。


なんて、心の中で叫ぶ中で、少し緊張したように望未が俺の目の前までやってくる。さっきまであんな真剣そうな顔をしていたのに、今は、どこか緊張している。それに俺までも、思わず唾を飲みこんだ。


目の前に立つ彼女は、踊った直後だからだろうか。額にはうっすら汗が浮かび、少し乱れた呼吸がまだ整いきっていない。汗でわずかに張りついた体操服が、彼女の細い体のラインをいつも以上にはっきり浮かび上がらせていて、思わず視線がいきそうになる。


————やばっ。


反射的に俺は顔を上げる。さすがにバレてないよな、と焦る俺とは対照的に、彼女は何も気づいていないような純粋な目でこちらを見つめていた。その視線に、妙な罪悪感が胸に広がる。


望未は少しだけ恥ずかしそうに髪を整えると、一度小さく目を閉じた。それから意を決したみたいに、まっすぐ俺を見る。


「それで、どうだったかな、連君?」

「……そうだね」


どう伝えたらいいのか、正直分からない。言葉はまとまっていなくて、口を開きかけて何も言えなかった。そんな俺の様子に少し悲し気な表情を見せる。あの程度じゃダメだよねとでもいうように。そんな俺を葵はどこか咎めるように見つめて、俺は口を開き、正直な気持ちを打ち明けた。


「思わず目を奪われるくらい、可愛くて。同時に、息を呑むほど綺麗だった」


そんな言葉が口から零れると、望未はぽかんとした顔で俺を見つめた。まるでそんな感想が来るなんて思っていなかったみたいに。それからじわじわと頬を赤く染めていく。その反応を見た瞬間、今度は俺の方が急激に恥ずかしくなった。


しかも周囲の男子たちから、「お前何言ってんの?」とでも言いたげな視線まで飛んでくる。いや待って。なんかこれ、めちゃくちゃ口説いてるみたいになってないか?慌てて誤魔化すように言葉を続ける。


「いや、違くて、その……望未の動きってさ」


うまく言葉がまとまらない。それでも、伝えたかった。


「指先までちゃんと洗練されてるっていうか……一つ一つの動きがすごく綺麗で」


言いながら、踊っていた時の彼女の姿が頭に浮かぶ。軽やかに揺れる髪。音楽に合わせて流れるように動く体。


「なんていうか、人魚姫が本当にいたら、あんな感じで踊るのかなって思うほどに美しかった」


自分で言ってから、うわ何言ってんだ俺、と思う。でも、一度口に出した言葉は止まれない。なんとか言葉を紡ぐ。変にならなないように。


「優雅なのに可愛さもあって……あと、体幹が全然ぶれないから、一つ一つの動きがすごく綺麗なんだ。そんな努力が伝わってくる姿に、言葉を失うほど、見惚れていた」


言えば言うほど、墓穴を掘っていく感覚がある。でも、熱くなった頭に緊張している自分に、制御できない言葉がただただ紡がれた。もう勢いでどうにかなれと思っていた部分は確かにあったんだ。


耳が熱い。周囲の視線までどんどん痛くなっていく。


「……えっと、つまり何が言いたいかっていうと」


俺は視線を逸らしかけながら、それでも最後だけはちゃんと望未を見る。


「普通に、心が動かされるくらい綺麗だった」


沈黙。そのあと。望未はふっと表情を緩めた。


「……そっか」


嬉しそうで。でもどこか照れたように笑っていて。


「嬉しいな」


その笑顔を見た瞬間、張り詰めていたものが一気に緩む。……ああ、よかったと。変な意味で受け取られてはいないらしいと安心する。ほっと胸を撫で下ろしていると、隣から肘が脇腹に当たった。


(っ、痛い)


なんて思わずみると、葵がどこか満足そうな顔でニヤニヤしている。


——いいじゃん。


そんなふうに言いたげな表情だった。だから俺も視線で返す。お前は言わないのか、と。すると葵は当然のように笑った。


(もちろん言うよ)


そう視線で訴えた次の瞬間。彼女は勢いよく望未へ抱きついた。


「望未、ほんとうに可愛かったよ。連の言う通り、ずっと見ていたくらいに、ついつい時間を忘れて見惚れてた」


そこまでは言っていない!……と反論したいのだが、似たようなことを言っているので否定はできなかった。そうして、ぎゅっと抱きしめ続ける。それに望未も嬉しそうに微笑んだいた。


「ありがと、葵」


なんて、微笑む彼女の笑顔は、周囲を包み込むような包容力があった。ついつい周囲を笑顔にする彼女は転生のアイドルなんだと自覚させられる。


……まぁ。こんな美少女二人が楽しそうに笑い合っていたら、そりゃ目も引くよな。なんて思っている中でも、次の競技のアナウンスは始まっていた。グラウンドのあちこちで生徒たちが移動を始め、さっきまでのダンスの熱気が少しずつ次の空気へ切り替わっていく。


そんな中で、不意に後ろから声がかかった。


「連は私のことも見ててくれる?」


少し不安げな桜の声に思わず振り向く。そこには、緊張しているのだろう。指先を絡ませながら上目遣いで見つめる彼女が姿があった。さっきのことは……なんて聞ける雰囲気じゃない。どこか期待するように真剣な彼女に俺は頷いた。


「もちろん。次は騎馬戦だもんな」

「……うん!!」


そう告げると彼女は嬉しそうに微笑んだ。手を胸元にやって大事そうにぎゅっと手を握り締める。それにどこか癒されつつ告げる。


「頑張ってね、桜」


素直にそう告げると、桜はぱっと表情を明るくした。


「うん、頑張る」


その笑顔は、さっきまでより少しだけ柔らかかった。嬉しそうな桜は少しだけ、ジャンプ気味に走り去っていく。そんなやり取りを横で見ていたからだろう。葵が、なぜか俺の方をじーっと俺の方を見ている。


「……えっと……なに?」


嫌な予感を覚えながら問い返すと、二人は顔を見合わせた。


「いや、連って誰にでも愛想を振りまくだな~って思っていただけ」


どこか問い詰めるような彼女に苦笑いしつつ、


「一応素直な気持ちを告げているだけだよ」

「うんうん、分かっているよ」


なんて目を細めながら俺に告げる。


「でも一つだけ言わせて」

「……えっと、なに?」

「浮気者」

「……」


その言葉に俺は何も言えずにいた。そんな中、望未がなぜか苦笑しつて俺の方を見つめ。なぜか周囲の人もジト―っとした視線を向ける。……うん、自分でも分かったけど、ほんと二人にいい顔してる感じになっているよね。と反省するのだった。


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