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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者
望未編

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桜からも迫られて

未だに頬が上気して、熱くなっているのを感じる。望未のことをいつものように真っ直ぐ見ることが出来なくて、視線が合いそうになっては、ついふいっとそっぽを向いてしまう。


「なぁに~、恥ずかしがってんの連?」


そう葵が俺の顔を下から覗き込むように、にやけた顔を向けて、ダル絡みしてくる。マジで今のタイミングで言う言葉ではない。俺は思わず反射的に手を顔に持って来て顔を背けてしまう。恥ずかしくて……。


だって、こんな風に誰かに食べさせて貰ったことなんて、当然涼花以外にはないし。同世代で、それも学校で一、二を争う程、可愛らしい望未にあ~んをされて照れない男子はいないだろう。普通に……。


言い訳じみた考えが浮かびつつ、ふとみた葵の表情は相変わらず、にやけていた。そして、俺の様子を揶揄うのが楽しいのだろう、また口を開くのが分かった。だから、全男子の一般的な感想を述べる。


「当然、望未みたいにカワイイ女性に、食べさせてもらって照れない男子はいないだろ?」


あくまで問いかけるように葵に言う。追撃を避けるために、放った言葉に。彼女はあっさりと頷いた。


「それもそうだね」


うんうんと深く頷く。その態度に少し拍子抜けして、驚いたように俺は葵を見つてします。深く頷いていた、葵が目を開く。そこには、揶揄うのが楽しくて仕方ないほどの、口角が異様に上がった彼女の姿があって。鬼畜な追撃を入れてくるのだ。


「じゃあ、次は唐揚げいってみようか」


なんて。さも当然の流れのように告げる。


「……は!?」


思わず漏れた言葉に、葵の方が驚く。


「……え、だって唐揚げも食べるんだよね?」


なんて、有無を言わさない表情で俺を見つめる。


いやいやいや、流石に恥ずかしいだろ?当然望未の方だって……そう見つめた彼女の方は、なぜか意外にも乗り気で、唐揚げに箸を伸ばしている。それも嬉しそう、頬を緩ませながら。


そりゃそうだろう。自分が作って来た弁当を褒められたら、そりゃ気分が上がる。俺だって、美味しいなんて反応よく食べてくれたら、あ~んをするだろう。その気持ちは十分分かる。分かるんだけど、少しは周りを察してほしい、かな~。


男女問わず、向けられる視線の大半は睨み付けるような、嫉妬の視線が突き刺さる。ただ、残りの2割。女性の方は望未の弁当の視線がいっている辺り、その出来に感心しているようだ。出来るならみんなそうしてほしい。普通に、何か呟いているのは怖いし……。呪ったりしてないよね?などと思考を逃避するなか、望未は周囲の様子を気にすることなく唐揚げを差し出した。


「はい、あ~ん」


いつもより、若干口角が上がっている彼女の笑顔、それが視界に入り、恥ずかしい気持ちがまた湧いてくる。それでも、彼女の勢いに押されて俺は唐揚げを口の中に入れた。瞬間、頬が緩むほどに美味しさに言葉が漏れた。


「……うまっ」


少し慣れたのか、それとも唐揚げの方が濃い味付けのおかげか、先程より、しっかりと味付けを認識できる。けれど、それだけじゃない。味の奥に閉じ込められた肉は驚くほど柔らかく、噛むたびに、染み込んだ下味と、肉汁の甘さが一気に広がる。冷めてなお柔らかい、完璧な火入れだった。


「これ、望未が作ったんだよな?」


思わず確認すると、彼女は少し照れたように頬を緩めながら、


「うん、作ったよ」


嬉しそうに彼女は微笑んだ。改めて弁当の中身を見て、感心する。


「マジですごいな」


と呟いていた。普段の彼女の仕草から、努力家な部分は分かっていた。けれど、想像もつかないアイドルの世界とあって、深くまで理解できなかった。けれど、料理は違う。自分も少しは嗜んでいるからこそ、美味しくするための工夫がかなり施されているのが分かる。


多分、下味にマヨネーズを使用している。そして、二度揚げをして水分もしっかり飛ばしているだろう。弁当に入れる際も冷やす事でカリカリの衣を維持している。


その工夫が分かるからこそ、自分の料理をお返しに……。なんて、考えていた自分が恥ずかしくなってくる。釣り合わないから。


「へぇ~、そんなに美味しいんだ、望未の弁当」

「うん!絶対に食べた方がいいって程にね!!」

「じゃあ、私も貰っちゃおうかな」


なんて言って、葵は爪楊枝の刺さった唐揚げを一つ摘まみあげる。それを口に放り込んで、驚いたように目を見開く。


「うまっ!!」


そういって、望未の方を勢いよく振り返った。


「なにコレ!! どうやって作ったの!?」

「えっと、普通にタレには一時間漬けて、衣も馴染むように30分おいて水分を逃がす。あとは2度揚げかな」

『……』


その言葉を聞いて俺は納得した。やっぱりそれくらいやっているよなと。だが、葵の方は口をポカーンと開けていた。そんなに手間が掛かっているとは思っていなかったんだろうな……。


うん、わかるよ。料理しないとすぐに出来るって思うよね。周囲の皆も同じように驚いているのだ。女子の数名を除いて。


皆の反応に少しだけ優越感を覚えてしまう。こんな美味しい弁当食べれたんだぜ!って。だからかな~、そんな浮ついた気持ちを察したように、すっと冷たいものを差し込んでくる。


「……浮かれてますね、連」


柔らかく笑っている雫。そう、目元も、口元も、確かに笑っているはずなのに——その表情から冷たさを感じるのは何でなんでしょう……


「……えっ、いや~」


思わず引きつったような笑みを浮かべる俺に雫は、何か名案を思い付いたように手をポンと叩いた。


「実は、桜の方も手作りの弁当を作ってきてるんです。それも、少し多く作って来たみたいで……」


そうして、すっと相楽の方に目線を向ける。


「ね、桜?」

「えっ、あ……うん。一応、多めには作って来たけど……」


そう尋ねられた桜の手元も似は、弁当箱が二つあった。それでも、少しだけ浮かない表情をしながら、戸惑った様にこちらを見つめる。どこか自信なさげで、それでも否定はしない曖昧な言い方。


「でも、ほら……さっきのに比べたら……ね」


そこから察するに、多分皆で食べるためにもう一つ作ってきて、でも望未の弁当を見て自信を無くしたようだった。だからこそ、少し背中を押せるように尋ねる。


「……見てもいい?」


って。初めて自分が誰かのために、料理を作った時の気持ちを思い出して問いかけた。桜は一瞬だけ視線を泳がせてから、小さく頷いた。


差し出された弁当を受け取って、中身を確認する。それは桜らしい、温もりを感じる弁当だった。唐揚げに玉子焼き、それと色鮮やかな煮物。こちらも汁が他の具材に垂れないように別容器に入れてある。


「……どれか一つ、もらっていい?」


そう問いかけると、彼女は少し迷ったように俯きつつ、顔を上げる。そして、少しだけ柔らかい声で、問い返してくる。


「……うん。どれがいい?」

「じゃあ——これ」


自然と視線が止まっていた煮物を指すと、


「うん、いいよ」


そう言って、彼女は手に持っていた自分の箸で、俺に渡した弁当から煮物を取った。


「はい、連。あーん」


あまりにも自然に、当たり前みたいに、口元まで運んでくる。一瞬、思考が止まる中、見つめた彼女の表情には恥ずかしさもなく、当然の雰囲気があった。


きっと望未に倣うように、天然でやっているのだろう。雫に促されて……。だから、雫に促された時に迷っていたのかと、今になって分かる。分かるんだけど……やっぱり慣れない。


俺が口を開かないからだろう、桜の方は不思議そうに首を傾げて俺を見つめる。当然、このまま俺が口を開かなければ、自分が勘違いしたと感じ、恥ずかしそうに桜は頬を染めるだろう。最悪、この場から逃げるように走りさってしまう。そして、勘違いしたことに落ち込む。


それだけは、避けないといけない!!


急激に脳が活性化する中、俺は意を決して口を開いた。それに安心したように、肩の力を抜き、俺の口の中に煮物が入る。


そうして口に入れた瞬間、優しい味が広がった。


「……うまい」


シャキッとした新鮮な野菜の歯ごたえ。しっかりと味付けを感じつつ、それでも野菜そのものの甘さも引き出している。そんな丁寧な料理だった。


「桜らしい、優しい味付けで、野菜本来の味も引き出している。美味しいよ」


素直な気持ちを伝えると、桜は少しだけ目を丸くしてから、ふっと力を抜くように笑った。


「……そっか。良かった」


その反応は、望未とは違って、どこか静かに噛みしめているようだった。その表情に皆が驚いたように見つめている。葵の方も若干苦笑いを浮かべながら口を開いた。


「いや~、意外にも桜さんって大胆なんだね……」

「……?」


当然のように分かっていない桜はポカンとしたように表情を浮かべる。その分かっていない表情に葵の方も、首を傾げる。


「えっ、だって、いま、あ~んって……」

「……そういう流れじゃ?」

「あくまであれはご褒美的な感じだったんだけど……」


そう葵が呟いたのを聞いて、桜はぶわっと頬を赤らめる。それも耳まで真っ赤になるほどに。


「えっ……いや、あくまでも、勘違いというか……その、下心とかはなくて……」

「あ~、うん、分かってるよ。その反応みれば」


葵の方も素で見つめている。


(……にしても、素でこれは反則だね)


なんて、一人何かを呟いているがそこまでは聞き取ることが出来ない。ふと視界に入る桜の方は未だに頬を染めていて、恥ずかしいのか自身の手で顔を覆っていた。


女の子座りでペタンと座る姿。綺麗なさらりとした黒髪が風に揺られて、たなびく姿に自然と目がいく。やっぱり綺麗だよななんて見つめる中で、口元にタコさんウインナーが出現する。


その橋の先に居るのは、なぜか少し頬を含まらせる、望未の姿だった。


「はい、連君、あ~ん」


と言って俺に食べるように催促してくる。


「……えっ、もう、食べたけど……」

「あ~ん」


少し強引な、望未らしくない態度に驚きつつ、押されるように、口に入れる。


「これも美味しいな……」


そう伝えると、彼女は俺の表情を真っ直ぐに見つめて、


「それだけ?」


と尋ねてくる。あ~、なるほどね。桜とちがって美味しいだけしか言わなかったから、悔しかったって感じか。危うく勘違いするところだったよ……。うん。


「形がかわいらしいだけじゃなくて、味付けもいいな。特にペッパー系の調味料を使用することで、肉汁の甘さを引き立たせてる。何個でも食べたくなる味だな」


素直な感想を伝えると、案の定といったところだろう。嬉しそうに右手で小さく拳を握っていた。可愛らしい。


すると、今度は何故か桜の方が玉子焼きを端に挟んで口元まで持って来る。同じように、対抗心を燃やしてだろう、力強い視線を向けて。


そんな感じで食べさせてもらうのだが、流石にこれ以上は周囲の視線が痛い。今の男子からの嫉妬するような目から血涙を流しそうな勢いを見ていると、流石に食べずらい。


「ごめん、これ以上は、涼花の作ってくれた弁当が食べられなくなっちゃうかな……」


と伝えると、二人とも寂しそうに肩を落とすのだ。すると当然のように、雫と葵、それに千夏までもが鋭い視線を向けてくるのだ。助けを求めて視線を彷徨わせるものの、有明は無関心とばかりに彼女にもらった弁当を食べ、大翔も同じように、3人前はありそうな弁当を食べている。


というか、大翔の彼女すげーな。あの量……なんて見つめていると、更に視線が鋭くなった。違うって、別に大翔の弁当を食べたいわけじゃ……。そう心の中で言い訳し、口を開く。


「なら、あと1品ずつもらってもいいかな?」


そう伝えると、二人とも太陽の様に眩しい笑みを浮かべた。二人して箸をこちらに向けて、「あ~ん」と口元まで持って来る。その光景を嬉しく思いつつ、けどやっぱり恥ずかしさの方が勝つのだった。


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