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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者
桜編

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25/120

悔しさ

「さぁ、いよいよ決勝が始まります。全27チームの頂点を決める戦い。なんと、決勝に進んだのは1年生のチームです!」


司会の先輩がマイクで盛り上げると、会場から「おぉー!」と驚き混じりの歓声が上がる。その視線が一斉に俺たちに向くのを感じた。


「対するのは、去年優勝した宮原・葛城ペア率いる、最強の3年生チーム。今年はどんなプレーを見せてくれるのか、注目です!」


場内がざわめく。けれど、俺はその熱気の中で、一つの違和感に気づいていた。──大翔が、いない。バレーを終えて、すぐ来るはずだった。でも、コートの周りにも、控室にも、その姿はない。


(……マズいな)


一気に汗がにじむ。敗北の鎌が俺に振り下ろされるようなそんな感覚を抱く。俺は審判卓に向い進行を仕切っている先輩に声をかけた。


「すみません。ちょっと腹が痛くて……10分だけ、待ってもらえませんか?」


一瞬、先輩の目が驚いたように動いたが、すぐに時計を確認し、


「まぁ、進行には余裕あるし……10分なら大丈夫だ。アナウンス入れておく」


「ありがとうございます!」


礼を言い、俺は全力で駆け出した。バレー会場の隅、広く開けられた扉から体育館の中を確認する。そこはすでに観客の熱気で満ちていた。俺はコートの外から中を覗き込む。


(……接戦か)


スコアボードには「1-2」の数字。まさか、ここまで縺れているとは。バレーの決勝もフルセットに突入していた。大翔の姿は、コート中央。汗だくになりながらニヤリと笑っている大翔の姿が見える。


(これは……開始には間に合わないだろう。それに間に合ったとして最高のパフォーマンスができるかどうか)


これは覚悟しないといけない...最悪大翔なしで勝つことを。想定する中で最悪の状況を思い浮かべて苦笑いするしかなかった。でも、逃げることも負けることもあり得ない。俺は拳を握り、もう一度自分に言い聞かせた。


「勝つって、決めたんだろう」


そう言って走っていった。


「きっかり10分ですね」


先輩は驚きながらそう言って、ホイッスルを構えた。スタートが鳴り試合が開始される。


「よっしゃ行こうぜ、連!」


「あぁ、皆んな頼んだ」


佐伯の声を開始に、ボールを受け取り試合が開始される。


(……重いな)


ただスタートが開始しただけなのに妙にプレッシャーを感じる。それは、相手が微動だにせずに、俺の一挙手一投足を見極めているからか、クラスメイトや他クラスの視線を感じるかはわからなかった。


俺はふっと息を吐いて笑う。面白くなってきたと。接近くらいはしてほしいものだ、そう思いつつドリブルを開始する。少し左にボールを転がす。相手DFが連動して一歩、二歩。右に切り返す。今度は中央の選手が身体の向きを変える。


足元でリズムを刻みながら、シザース、ルックフェイントをかけるが、一切引っかからない。まぁ、俺の実力じゃあ騙せないか...。


それよりも嫌だと感じるのは、俺が動けば動くほど──相手全体が“連動”してくることだった。抜いた先でもボールを維持できるイメージが湧かない。味方にパスを回しても、全員への警戒を緩めないのは流石か。


もう一度ボールを受け取り、相手を見つめる。静かな焦燥が胸を焼く。けれど、下がるつもりなんてない。自分に言い聞かせる──


(ここで攻めなきゃ勝ちはない!)


体重を乗せ、一気に加速する。左からシザース→ルーレット。抜いた──と思わせて、直前で逆サイドにパスを放っていた。


佐伯!


目線でここに欲しいと訴える。俺の動きに釣られた選手の背後を突いて、抜け出す。ゴールキーパー含めて残り二人!!佐伯からのキラーパスをトラップして相手を躱し、右脚を振り抜く。


バスッ!


ゴールネットが揺れて、得点が入った。


「っしゃあぁっ!!」


自分でも驚くほど喜んでいるのがわかる。


「ナイスシュート!」


「マジ、天才!!」


「佐伯もマジでサンキュー。最っ高だぜ、お前!!」


そういって俺達は抱き合う。ジャンプしながら、おい、おい、おいといってはしゃぐ。


「一点先制は……なんと1年生チーム!!」


周囲の観客も沸いていて、宮原達負けるんじゃねと話し声が聞こえる。


──だが、それもきっと「想定内」だったのだろう。その直後、試合の流れがガラリと変わった。相手のエース、「宮原」が動き出す。


(……上手い)


ただ抜かれるんじゃない。“魅せて”抜かれる。ルーレット、マシューズフェイント。見惚れてしまいそうな柔らかさで、皆が抜き去られる。


俺もフォローしにいこうとするが、2人守備がつけられて上手くフォーローに向かえない。過大評価ありがとな。ステップを踏んでどうにか巻こうとするが、俺はその光景をただ見ていることしかできなかった。


キーパーが焦って前に出るタイミングすら読み切ったように、ふわりと浮かせた。ボールへと飛びついたキーパーを嘲笑うかの様な、綺麗な弧を描いたループシュートが決まる。


「ゴォォォォォル!! 見事な同点!!」


──1-1。


対戦相手の3年生たちが静かに笑う。当然という様な、冷静で冷ややかな笑みだった。華麗にハイタッチを交わす彼らを俺は呆然と見ることしかできなかった。


(まだ……追いつかれただけだ)


そう言い聞かせて立ち上がる。


「連っ」


キックオフのボールを受け取った直後、ものすごい勢いでプレスを掛けてくる、それを忠告する様に佐伯が声をあげた。焦った俺はついバックパスを出す。その動揺が伝わったのか、味方のトラップミスが起こる。


(ーーマズい)


鋭く走り込んだ相手に、そのボールをカットされる。俺はフォローに周り、息を吐いて向き合う。今度は対面し見つめ合う。一歩踏み込んだ瞬間、強烈な加速をする。


(ーー速い!)


その早さに何とかついて行き、抜かれるのだけは避ける。だが、俺が目の前の相手に注力している隙を逃す程相手は甘く無かった。


呆気なく出されたパスに身体を入れて、パスコースを切ろうとする。けれどーーボールは宮原へと繋がる。フォローしてくれた佐伯すらもあっさり抜いて、ゴールネットを揺らす。


「逆転ゴォォォォル!! 宮原、圧巻の連続得点!!」


視界が少しだけ狭まっていく。大翔がいなければこうなるとは予想していた筈だ...けれど、相手が想像以上に動けて、自分達の動きが硬い。


「連、大丈夫か?」


佐伯が声をかけてくれる。でも、その言葉がなぜか遠い。顔を上げて、夢咲さん達の顔を見てしまうことが怖かった。


(負けた時のことを考えるなら......どうすれば勝てる)


拳を握った。爪が手のひらに食い込ませて、感覚を覚醒させる。


(負けるわけにはいかない!)


俺はしっかりと相手を見つめる。まだ、終わりじゃないと。キックオフで再度試合を開始する。相手も冷静に俺達を迎え撃つ準備をする。


先程の様にプレスを掛けてきたりはしない。リードしているからこそ、俺達がミスする隙を窺っている。パスを回して、どうにか隙を作れないかとが窺うが一切の隙がない。


フィールドがもっと広ければ何て意味のない思考がよぎる。焦っても仕方ないと思っていても、減っていく時間を視認するたびに、プレーが甘くなる。


自分の心臓が高鳴る音がやけに鮮明だ。息が上がるのがいつもより速い。足が上手くついてこない。そんな焦りを見越して、再度プレスを掛けられる。


何とかボールをキープしようとして、二人からの猛攻を凌ぐも、脚がもつれて倒れてしまう。


(ボールはっ!)


急いでどこにあるのかとフィールドを見渡すが、どこにも見当たらない。


「大丈夫か?」


相手チームが差し出してくれた手を握って起き上がる。


「ありがとうございます」


何となく告げるその言葉に、堪らなく悔しさを感じる。どうして、こんなにも出来ないのかと。それでも試合は始まるから、上を向かないといけない。もしも、大翔がいてくれたらそんなことをつい考えてしまう。そんな自分が嫌になる。


「……どうすれば……いい」


呟いた声は、誰にも届かず、ただ、夏の熱気に消えていった。

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