タリスによる「不老者」の運用
タリス解体後のこと。軍内部で書かれた不老者について記録が見つかった。
以下は、燃え残った断片を繋げ、文字起こしした記録となる。
「不老」は人だけではない。数多の動物が感染する。感染経路は不明。
初期段階の「過食」に注意。同胞、他種族、植物、土、間近にあるものにはなんでも手を出す。一定期間過食を続けると、水だけで生活するようになる。
「不老」がはじめて確認されたのはタリス兵舎。タリス中枢で流行り出し、同時期に無駄な無許可遠征、軍表刷りが増えた。
目先の欲望に我を失う人々を押し留めるのに、軍はエネルギーを割かねばならなかった。彼らは恐ろしく強く、巡回人の支援でどうにか柱に縛り付けるなどした。
「不老」の扱いについて、意見が分かれた。
遠征時、尖兵に「不老者」をおけば、軍の恐ろしいイメージが増長されるし、「人を喰う」などの噂が敵兵に広がれば、気勢の面で優位に立てる。
一方、タリス軍の品位を貶める、どんな動きをするか予測できない者を兵士として扱うのはどうかとの意見もあった。
これらを踏まえ、タリスは「不老」を良く使った。
「飢えた不老者」を檻に入れて輸送し、敵陣の補給路に放ち、陣形を崩し、恐慌を起こさせたのち、本隊が突入し、敵を鎮圧・無力化させた。
これを経て「安定期(水のみで生存できる)」に入ったら、帰還後、永久不寝番として機能させる。水源(川、池、水路)のあるエリアに繋ぎ止め、陣形や境界線を「歩く罠」「警告灯」として無人地帯に配置する。
不老者は一般兵とは完全に宿舎・陣形を分け、彼らを誘導するための長柄武器(刺股や鎖)を装備した専門の管理部隊を配備。
過食期の不老者は、欲望に忠実なため、顔や体に漆黒の重装甲を被せ、狂乱の醜態を隠す。敵の食糧庫にすぐありつけるよう、顎を引くと鉄仮面部分の留め金が外れ、額の上へと開閉できる構造になっている。
* 運用方針と予測されるコスト
1. 尖兵として投下する場合
自軍の被害がゼロ、敵への精神的打撃が甚大と予想される。
一方、敵の物資や土地を荒らすため、占領後の敵地の利用価値が下がる。
2. 完全隔離・安定化待ちの場合
軍の品位を保ち、予測不能な暴走を防げる。
一方で、施設構築のコスト、隔離中の過食の管理が必要となる。
一般人の食す量を一日三食提供する。
飢えすぎると自傷が始まるため、要観察。
3. 安定期の個体
水だけで動く最高効率の兵。従順で、命令にもよく従う。
1~2の個体は、基盤となる軍から離れた場所で管理し、敵地に放つか、強固な地下施設に封入して、安定期を待つのが、今の所のタリスの回答となる。




