ある奴隷の手記
黄昏時、2つの世界が交わった。
土地に穴が空き、幾人もが落ちて行った。
落ちた先には村や街があった。
土地の言葉がわからない、人が指を指してきた。
大衆がこちらに関心を向ける前に逃げ出した。
スラムの市場で服と食べ物を盗み、野宿をした。
目覚めたら、元の世界に戻っているかもしれないと期待した。
しかし、目覚めるたび、変わらない現実を突きつけられた。
あるとき、気づいたら首輪をつけられ、鎖で繋がった人々の後ろを歩かされた。
奴隷商人に見つかったらしい。私を買ったのは、利発そうなシノア族だった。
なぜ種族がわかったかというと、会話の中で「シノア」を連呼していたからだ。
私は彼らの奴隷として、生活の世話をした。身振り手振りで大体、何を望んでいるかわかった。
ある日、取引の場に連れて行かれた。そこでは牛皮20枚を紙幣10枚で売っていた。
私は牛皮を一枚ずつ調べ、かなりの粗悪品だと気づいた。
革を裁断した際に出る端切れやクズを粉砕し、樹脂で固めてシート状にしたもの、
元々傷が多すぎる原皮(牛の生の皮)の傷を隠すために、表面を深く削って極厚の塗料(顔料)で塗りつぶしたものなどが紛れ込んでいた。
私は、主人を呼び、質の良い皮12枚だけ買うよう、促した。
粗悪品と良品を並べて見せ、説得した。
私は主人にいたく感謝され、取引の場に必ず連れて行かれるようになった。
私は、自分の順応力を誇った。よくここまできたと自分を褒めた。
奴隷とは言っても、服装が主人と違うだけで、過酷な仕事はやらされなかった。
日々が穏やかだった。食事は主人と共にとった。
私の他に、この世界に落ちて行った人がいる。
あの人たちは今頃何をしているだろう。




