奇跡の村
本作は【毎日19:00】に最新話を定期更新中です!
世界を喰らい尽くす暴食の王は、少女との誓いだけは喰い尽くさない。
孤独な復讐の少女と、不器用な悪魔の王が紡ぐダークファンタジー、どうぞ最後までお楽しみください!
「北部の村へ向かってもらう」
教室の空気がざわついた。
教壇に立つ教師は、疲れた顔で羊皮紙を閉じる。
「最近、北部で行方不明者が相次いでいる。騎士団も調査に入ったが、原因は不明だ」
「悪魔災害ですか?」
生徒の一人が尋ねる。
教師は眉をひそめた。
「それが妙なんだ。生き残った村人たちが、皆“奇跡を見た”と言っている」
奇跡。
その言葉に、教室がざわめく。
エレナは黙ったまま窓の外を見る。
嫌な響きだった。
教師が名簿を開く。
「今回は実地訓練も兼ねた調査任務になる。選抜メンバーは――」
嫌な予感がした。
「ラインハルト・フォン・アストリア」
当然のように名前が呼ばれる。
教室が小さくどよめく。
ラインハルトは無言だった。
「ミリア・ルクス」
「は、はいっ!?」
後方の席で、小柄な少女が飛び上がる。
淡い金髪。
気弱そうな顔。
補助術式を得意とする生徒だった。
そして。
教師が少しだけ言葉を止める。
「……エレナ」
空気が凍った。
視線が集まる。
エレナは眉をひそめた。
「なんで私」
教師が困った顔をする。
「……セラフィム様の指示だ」
教室がさらにざわつく。
セラフィム直属。
それだけで異常だった。
教師は咳払いする。
「ラインハルトは監督役を兼任する。危険があれば即時撤退。独断行動は禁止だ」
ラインハルトが静かに立ち上がる。
「了解しました」
事務的な声。
そこに感情はない。
ミリアがおずおずと手を挙げた。
「あ、あの……どうして私が……?」
「治癒術式と結界術式の成績が優秀だからだ。後方支援として同行してもらう」
「うぅ……」
不安そうに縮こまる。
教師は最後にエレナを見る。
「……これは実地訓練だ。同時に、お前の監視任務でもある」
教室が静まり返る。
誰も口を開かない。
エレナだけが、小さく舌打ちした。
◇
馬車は北へ進んでいた。
窓の外は灰色の空。
重たい雲。
揺れる荷台の中で、ミリアはずっと縮こまっていた。
エレナの正面。
露骨に緊張している。
「……」
「……」
沈黙が痛い。
やがて、耐えきれなくなったのか、ミリアが小さく口を開いた。
「あ、あの……」
「何」
「エレナさんって……本当に悪魔契約者なんですか……?」
馬車の空気が止まる。
ラインハルトが静かに目を閉じた。
エレナは眉をひそめた。
「……知らない」
肩の上で羽音が鳴る。
ブゥン。
『契約者ではある』
「私は認めてない」
即答だった。
羽音だけが静かに響く。
『そうか』
それ以上、ベルゼブブは何も言わなかった。
ミリアはどう反応していいか分からず、完全に固まっている。
ラインハルトだけが静かに窓の外を見ていた。
エレナは小さく舌打ちし、視線を外へ向ける。
灰色の景色。
嫌な感じがした。
胸の奥がざわつく。
その時。
肩の上。
羽音が止まる。
エレナの目が細くなる。
「……どうした」
返事はない。
珍しい。
ベルゼブブが黙っている。
しばらくして。
低い声が響いた。
『……嫌な臭いがする』
その声は。
今までになく冷たかった。
◇
村へ着いた頃には、日が落ち始めていた。
寂れた村だった。
人が少ない。
妙に静かだ。
村人たちは、エレナたちを見ると怯えたように目を逸らす。
そして。
皆、同じ首飾りをつけていた。
銀の十字架。
エレナの呼吸が僅かに止まる。
「……教会」
村の中央。
古びた石造りの建物。
その前に、一人の男が立っていた。
黒い神父服。
穏やかな笑み。
優しそうな目。
「王立騎士学校の方々ですね」
柔らかな声だった。
「ようこそ、辺境の村へ」
その笑顔を見た瞬間。
エレナの背筋に悪寒が走った。
肩の上。
羽音が鳴る。
ブゥン。
今までで一番低い音だった。
『……下がれ、契約者』
初めてだった。
ベルゼブブの声に。
明確な警戒が混じっていたのは。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
少女と悪魔が仕掛ける偽りの世界への反逆劇を、ぜひ明日も見届けてください!
2大公式コンテストに挑戦中!
本作は「小説家になろう」公式の以下の大型タイアップ企画に参加しています。
第1回 ブシロードワークス小説大賞(キーワード:BWK大賞1)
第2回 BK小説大賞(キーワード:BK小説大賞2)
なろうのコンテストにおいて、読者の皆様からの応援が何よりも強力な選考基準になります。
「ストーリーの続きが気になる!」「キャラやバトルが格好いい!」と思ってくださった方は、ぜひこのすぐ下にある、
【ブックマークに追加】
【ポイント評価(☆☆☆☆☆を★★★★★にする)】
をポチッと押して、応援していただけると執筆の爆発的な励みになります!
皆様の一票で、エレナとベルゼブブをぜひプロの舞台(書籍化・漫画化)へ押し上げてください。よろしくお願いいたします!




