ダイジョウブダヨ
「来た」
巣の大穴の凹みに隠れていたアスは、降下してきた輸送機を視界に捉えた。
壁面を移動中の他のVN-2082も輸送機に気付いたように動きを変えた。
「この中にいる・・・」
アスはその気配を感じていた。
1体のVN-2082が輸送機に飛びかかった。
輸送機の機銃が撃たれ、それを消した。
「確かめよう」
アスは機銃の死角からジャンプすると輸送機の左側面に取りついた。
重みで輸送機が大きく傾く。
すぐさま爪を輸送機に突き刺し、そして開いた穴を大きく引き裂いた。
両腕でさらに穴を広げ、体をねじ込む。
中に入るとそこは広い格納庫のようだった。
「いた・・・」
アスは確信と共に少女を見つけた。
少女は突然飛び込んできたアスの姿に驚き、その場にへたり込んでいた。
「やはり乗っていたのか。でも、どうして」
少女と目が合った。
それは恐怖に対する目だった。
それでも、じっとアスを見ていた。
『ダメだから、そこを離れて!』
声が聞こえた。別の波だ。
「わかっている!」
アスは反射的に応えていた。
それと同時に、幼体にインサートした時の視界が浮かんだ。
少年と少女、そして目の前の少女。
「そうか、3人はパイロットだ。S-1、S-2、そして3機目がこの子だったんだ」
ずっと感じていた柔らかな波の正体を、アスはやっとわかった気がした。
「驚かせてわるかった・・・」
温かな波を感じていた。
幼体に手を差し出す少女の姿が浮かんだ。
「やさしい表情だったな・・・」
「俺たちがここに来てしまったから、この子たちは戦わなくてはいけなくなったのだろうか」
「きっと、そうだ。そうじゃなければ、こんなにも幼い子たちが戦いに出るはずがない」
「それなのに、温かな波を感じる。不思議だ」
「ずっと感じていたものはこれだったんだ。きっと隊長も」
「俺たちはこの子たちの運命を変えてしまった」
「普通では起こり得ないことをさせてしまったんだ」
「しかし、たとえこれが過去を変えたことになったとしても、そこまでだ。俺たちにできることはここまででしかない」
「未来を変えるのは俺たちじゃない。それはこの子たち」
「俺たちは単なるきっかけ・・・。トリガーは俺たちだったんだ」
「そして、ここから、未来が変わる」
「君たちに、俺たちの大きなわがままを託させてくれ。頼む・・・」
アスは自分のしてきた事を悔やみながらも、未来を期待した。
「大丈夫だよ。もう、戦わなくていい。俺たちは消えるから・・・」
アスを見つめる少女の目から恐怖が消えたような気がした。
「ごめんな・・・」
アスはゆっくりと向きを変えると、飛び込んだ穴から外に出た。
突然、右腕を振り上げたVN-2082が輸送機目掛けて飛びかかってきた。
「この子たちに手を出すな!」
アスは輸送機から離脱すると同時に、襲いかかってきたVN-2082を突き刺していた。
『アス、何をしている。聞こえないのか。限界だ。戻すぞ』
慌てるシロウの声がやっとアスに届いた。




