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再会


 アイナは巨大な洞窟内を他のVN-2082とともに移動していた。

 体をコントロールしようとしたが、まだ動かすことは出来なかった。

 「アス。こちらはまだ動かせない。そっちはどうだ?」

 『同じです。洞窟内を移動しています』

 「新しい巣へと向かっているのだろう。発現までこいつらに任せよう」

 『了解』

 

 しばらくして、シロウからの通信が入った。

 『アルビオンのマーカー多数確認』

 「どこだ?」

 『新しい巣の周囲に展開しています』

 「まだ動かないのか。アスはどうだ?」

 『こちらもまだです』

 『VN-2082の先頭集団は巣の縦穴に出た後、地上へと向かっています』

 「ユーリ、船はどうだ?」

 『テンション、118%です』

 「もうあとはいい、コクピットに入れ」

 『まだ大丈夫です』

 『VN-2082の先頭集団とアルビオンとの交戦が始まりました』

 「Sはどうなっている?」

 『地上へ向かう途中の横穴で交戦中。あ、紫マーカー、2体です。交戦中のものが先に発現しました』

 「そっちに送れないか?」

 『今やっているのですが、システムが不安定でターゲットロックできません』

 船が軋む。

 その音がアイナにも聞こえた。

 『あ、隊長とアスの個体、発現しました。コクピット再起動します』

 再起動とともに、アイナはもう慣れてしまった不快感を受け入れた。

 「よし、アンダーコントロール」

 『こちらも支配下におきました』

 「わたしはSに向かう。アスはどうする?」

 『自分はあの輸送機を探します。シロウ、STのマーカーが出たら教えてくれ』

 『Sと交戦中だった発現個体消滅。Sは2機とも健在』

 「発現個体でもやられたか・・・」

 アイナは視界に映るSのマーカーの方向に向けて体を走らせた。

 『巣の大穴に出ました。自分は上部へ向かってみます』

 アスは穴の側面を地上へと登る多数のVN-2082に混ざりながら上を目指した。

 『S-1上へ向かって移動。あれ?S-2が動きません』

 「仕留めたのか?」

 『マーカーは残っていますので、動けないのかもしれません』

 アイナは目標をS-1に決めた。

 『アス。巣穴の上空で動かない輸送機のマーカーがある。STが前の戦闘で潰れていたら、同じマーカーは出ないはずだ。これかもしれん』

 『こちらでも確認した。表示を変えてくれ』

 『ST-2だ』

 『確認した。ありがとう』

 アスは側面のくぼみに身を隠すと、ST-2の動向を探った。

 

 アイナはやっと巣の大穴に出た。

 「S-1は向こう側か・・・」

 大穴の対面に見える横穴に向けて体を飛び上がらせようとした瞬間、アイナは波を感じた。それはずっと探していたあの時に感じたものに間違いなかった。

 アイナの動きが止まる。

 「やっとか・・・」

 波は徐々にその大きさを増し、今までに感じたことがないくらいの強さになってアイナに打ち寄せた。


 「これは、おまえか? おまえなのだな」


 『だれ?』


 「わたしの声がわかるのか?」


 『・・・、ああ、何度も邪魔するおばさんかぁ』


 「お、おばさん・・・。まぁ、いい。やっと会えた。探していたんだ」


 『ああ、そりゃ、どうも・・・』


 「そうだ、あのあと何をしていたのだ」


 『あのあと?』


 「そうだ、キュウシュウでわたしはおまえと戦った」


 『え? おばさんはケルベロスなの?』


 「ケルベロス?」


 『トカゲの化け物みたいなやつ』


 「おまえの世界ではケルベロスと言うのか・・・。そうだ、ケルベロスだ。あの戦いのあとおまえは何をしていたのだ?」


 『何って、半分寝てたような感じかな』


 「今までずっとか」


 『そうだよ。今起きたところ。だから、慌てて状況の確認をしてる。忙しいから、あまり話しかけないで欲しいんだけど』


 「今どこにいるのだ?」


 『だから状況確認中って言ってるでしょ』


 「教えてくれ。おまえのあの時の怒りはなんだったのだ?」


 『怒り?・・・』


 「そうだ。あの時、おまえから凄まじい怒りを感じた」


 『そうだっけ?』


 「あれは怒りじゃなかったのか?」


 『ああ、思い出した。あの時、大切なあたしの体が傷付けられたから』


 「傷付けられた・・・。おまえもそうなのか」


 『おまえもって・・・。そうか、おばさんもいつも怒ってたよね』


 「わたしの怒りも同じなのだ」


 『同じ? 勝手に攻め込んできてて、それはないな。そんなことでこんなにも大掛かりな戦争を始めたの? バカみたい』


 「そんなことで、だと。おまえたちがばら撒いた成れの果て物質のせいで、わたしは、いや、全ての人類が不幸になっているのだ。だからわたしはここに来て、過去を修正し未来を変えなくてはいけないのだ」


 『すごい。安っぽいB級映画みたい。それで、未来は変わったの?』


 「まだ、わからん・・・」


 『人類の不幸を背負っちゃうくらいにおばさんの怒りは強烈なんだ。よほどつらいことがあったんだね。なんなら聞いてあげよっか。あたしもつらい時に話を聞いてくれた人がいたから』


 「わたしの怒りは、わたし自身が否定されたことだ。なぜ否定されたと思う?」


 『さぁ、わかんない。急いでるから答え言って』


 「わたしには子供ができないからだ。たったこれだけのことで、わたしの全てが否定されたのだ。そして、その原因となったのが成れの果て物質だ。成れの果て物質がわたしの体を壊した。その成れの果て物質を作り続け、未来に押し付けたのが過去の人間だ。だから、わたしはこの今の世界が憎いのだ」


 『なるほど。そー言う設定なんだ』


 「設定ではない。事実だ」


 『でも、わかるよ。そー言うの』


 「おまえになんか、わかるものか!」


 『わかるよ。あたしも子供できないし、たぶん・・・。まぁ、これは関係ないか。でもね、病気のせいで哀れみの目を向けられたし、それによってあたし自身も否定されたと感じた。周囲の人が掌を返すようにね。ころっとあたしに対する態度が変わった。周りのもの全部が憎かったよ。だから、あたしは自分のために戦うことを選んだし、確かにあの時は怒りのために戦ったと思う』


 「お前も病気なのか」


 『うん、そうだよ。そっか、あたしたちって、似てるのかもね。きっかけは怒りだもの』

 

 「きっかけ、なのか?」


 『そう。でもね、今は違うよ。怒りのために戦うなんて恥ずかしいよね。怒りは戦いのきっかけであってもいいけど、理由や目的じゃダメ。今のあたしはそう思ってる』


 「わたしは、怒りがあったから、ここまで来れたんだ・・・」


 『あのね、あたし忙しいから、もう行くね。あの子たちを守らなきゃ』


 「あの子たち?」


 『そうだよ。あたしはずっとあの子たちを守ってきた。それがあたしの存在する意味だから』


 「存在の意味?」


 『だから、もう、邪魔をしないで。また邪魔をするなら、本気であなたを倒す』


 「邪魔、だと? やはり、おまえはアルビオンのパイロットなのか?」


 『アルビオン? ああ、NCBMのことか。パイロット・・・ではないかな。ああ、おばさんがケルベロスなのと一緒かもね。だからこんなふうにお話ができるんだ。二人とも変わってるんだ。じゃぁね、急ぐから』


 「ま、待て!」



 『隊長、どうしたんですか? ずっと動きが止まっています』

 突然シロウの声が響いた。アイナは慌てて周囲を見渡したが、あいつはいるはずもなかった。

 「だ、大丈夫だ」

 しかし、アイナは今も波を感じていた。

 どこだ。この近くにいるはずだ・・・。

 アイナは遠くに見える横穴に向かって、壁面から大きくジャンプした。



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