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シロウとアスの場合


 2086-07-11 ヴァリアブルシップ 食堂


 アスの気持ちを知って満足したユーリは、次のためにコーヒーを新しくすると「お疲れ様でした」と言い残し去っていった。

 次に食堂に現れたのはシロウだった。

 シロウは置かれたコーヒーの前に座ると、おもむろに一口コーヒーを飲んだ。

 アスは、先ほどシロウが大好きと言ったユーリのことを引っ張り出し、シロウをからかってやろうとそのきっかけを待った。

 しかし、最初に仕掛けてきたのはシロウの方だった。

 「アス、率直に聞こう。お前、隊長のことが好きだろう」

 アスは手にしていたコーヒーカップを落としそうになった。

 「お前ら、何を企んでいるんだ」

 アスはコーヒーカップをテーブルに戻すと、そのままシロウに顔を近づけ睨み付けるように言った。

 「お前らとは?」

 「お前とユーリだよ。お前ら、そんなことを聞きたくてこのイベントを提案したのか?」

 「そうだが」

 シロウの真面目な返事にアスは椅子に崩れ落ちた。

 「まぁ、いい。もうわかったことだ」

 「よくない。そんなこと知ってどうするんだ?」

 「悪いようにはしない。安心しろ」

 アスの気持ちはもうすっかりとバレている。これ以上何を言ってもその事実を隠すことはできない。

 「それにしても、初恋の相手をここまで思い続けるなんて、たいしたものだ」

 シロウは感心するように大きく頷いた。

 アスは以前に、酔った勢いでそのことをシロウに話してしまったことを今になって後悔した。

 優しく微笑むシロウに、アスはもう何も言えなかった。

 シロウは満足した様子でコーヒーを飲んだ。

 それを見て、これ以上突っ込んでこないだろうと判断したアスは、疲れを癒すようにコーヒーを飲んだ。

 アスの予想通り、シロウはそれ以上話してこなかった。

 「この間、隊長と話したんだが」 

 アスは真面目な表情をシロウに向け話題を変えた。

 「隊長は、万が一の時はユーリを1番に、その次にシロウを帰そうと考えている。その時はちゃんとユーリを守ってやれよ」

 シロウは、アスとアイナがそんなことまで話していることに少し驚きながらも、そこまで話すくらいだからうまくいっているんだと安心した。

 しかし、問題はそこではない。

 「それじゃぁ、お前たちはどうなる」

 「隊長は頑固だ。自分から先に帰ろうとはしないだろう。だから、一人にはさせない」

 「そうか・・・」

 アスの気持ちを尊重し、シロウはそれ以上何も言わなかった。

 静かな時間が流れた。

 シロウは残っていたコーヒーを飲み干すと立ち上がった。

 「それじゃぁ、ユーリに報告するのでこれで失礼する」

 「あ・・・ああ、幸せにな」

 満足そうに食堂を出ていくシロウに、アスはそんな言葉でしか言い返せなかった。

 「って、俺が片付けるのかよ」

 アスは呆れた様子でふたつのカップを持つと、シンク横の洗浄機へとそれを放り込んだ。

 でも、あいつらはともかく、隊長に知れたら・・・。

 アスは、大きくため息をついた。



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