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自撮り


 2086-05-22 ヴァリアブルシップ メインルーム

 

 消灯時間が近づくメインルームでは、シロウとユーリがそれぞれの席で端末パネルに手を置きモニターに流れる映像を見ていた。

 シロウはインサートした個体がホンシュウを移動するときに見た風景を、日付や時間そして場所ごとに区別し、いくつものファイルに収めていた。

 ユーリはスミレの見た景色の記録をやっと見ることが出来るようになり、シロウのように整理してファイルに残すつもりだった。

 シロウのコレクションに比べたら、ほんのわずかしかないスミレの記録を確認してゆく。

 「当たり前ですけど、スミレの見た世界にはスミレ自身は映っていないんですよね」

 「まぁ、自撮りでもしてれば別だけどな」

 二人は笑った。

 ユーリのモニターに、記録されていたスミレの視界が映し出されてゆく。

 スミレの見ていたものは、ほとんどが視界を遮るような木の幹だった。

 やがて見えている世界がオレンジ色になると、木々の先に綺麗な夕陽が見えた。スミレはその夕陽をじっと見ているように思えた。

 こうしてこの子は、ずっと仲間の来るのを待っていたんだ・・・。ユーリはまた悲しくなった。

 「あ!」

 ユーリが何かを見つけたような声を出した。

 「どうした?」

 シロウは立ち上がるとユーリのデスクに行き、ユーリの見つめるモニターを後ろから覗き込んだ。

 「これ、見てください」

 ユーリは映像の時間を戻し、そして再生させた。

 綺麗な夕陽が見えていた。そして、ゆっくりと視界が動いた。

 「ここです」

 ユーリが映像を止めた。

 「これ見てください」

 そこには廃棄され大きく傾いた太陽光パネルがあった。

 シロウはユーリがこんなものになぜ驚いたのかわからなかった。首を傾げながら何度もモニターを見る。

 「あっ」

 やっとシロウも気付き、声をあげた。

 斜めに傾いた太陽光パネルに、夕日で浮かび上がったスミレの姿が反射して映り込んでいたのだ。

 「自撮りしてたんですね」

 「そうだな」

 スミレの顔はやっぱりVN-2082だった。しかし、銀色の光を放つその姿は、ユーリにはとても優しいものに思えた。



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