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子供たち


 2085-12-16 深夜 ヴァリアブルシップ メインルーム

 

 常夜灯の薄暗い部屋の中で、アスは自分の席に座りぼんやりと昼間の出来事を思い浮かべていた。

 するとドアが開き誰かが入ってきた。アスが振り返る。

 「アイナ隊長・・・」

 「なんだ、いたのか」

 二人は互いに驚きながら顔を合わせた。

 「どうした。眠れないのか」

 「ええ、まぁ。隊長もですか」 

 「ちょっとな・・・。アスは昼間の事が気になるのか?」

 アイナは自分の眠れない理由を聞かれないように、素早くアスに質問を返した。

 「はい。その後あいつがどうなったか気になって・・・。それでインサートしてみようかと思ったのですが、よく考えたら一人ではインサートできないことに気付きました」

 アスは恥ずかしそうに笑った。

 「それなら、わたしがサポートしようか」

 「いえ、そんな・・・」

 「大丈夫だ、信用していい」

 「いや、そうじゃなくって」

 アイナは自分の席に座ると端末パネルに手を置き準備を始めた。

 「それじゃぁ、行かせてもらいます」

 アスは軽くアイナにお辞儀をするとコクピットに入った。

 「ターゲットは固定されたままだ。入れるぞ」

 「お願いします」

 「アス、インサート 」

 アイナの声が響き、アスは幼体の中へと入って行った。




 ワカヤマ山中アルビオンの基地と思われる施設内


 幼体はすでに目を覚ましていた。

 アスの視界に、ケージ越しの3人が映った。


 あの時の・・・


 一人の少年と二人の少女。パイロットスーツではなく私服の3人は、昼間見た時よりも幼く見えた。特に小柄なショートカットの一人はなお一層幼かった。

 3人は楽しそうに会話をしながら、持っていたお菓子を見せ合った。

 一番幼いショートカットの少女が手に持っていたものをケージの隙間からアスに差し出した。


 ソーセージじゃないか。食べさせるつもりか?


 少女はしばらくソーセージを向けていたが、食べる反応がないことに諦め手を引っ込めた。

 するともう一人の少女が持っていた袋を破り、そこからポテトチップスを出した。

 幼体が反応しないことに残念そうな顔をする長い髪の少女。

 今度は少年がクッキーを差し出す。

 やはり幼体は反応しなかった。

 それよりも視界はずっとショートカットの少女を捉えていた。

 アスの前で、楽しそうに会話を続ける3人。


 俺たちは、こんな子供と戦っていたのだろうか・・・ いや、そんなことあるはずがない


 幼体が見つめる少女の手が伸び、ケージの隙間から入ってきた。そして顔に触れる。

 幼体はその手に顔を擦り付けるように動かした。

 少女が嬉しそうな笑顔を向けた。


 ああ、また波だ・・・


 ダイジョウブダヨ・・・


 突然、アスの意識に一つの言葉が浮かんだ。


 そうかあの時の言葉はこれだ


 昼間にも感じた温かな波が、ゆっくりとアスに打ち寄せた。

 何度も、何度も、ゆっくりと、やさしく。


 あの少女から出ているのか?


 そんなこと、あるはずがない


 アスは今感じていることを否定しようとした。

 しかし、それは否定したくなるほど不快なものではなかった。


 少女が笑っている。

 子供たちが笑っている。


 こんなもの、見なければよかった・・・


 アスは、自分の体から戦う気力が消えていくのを感じていた。


 「・・・隊長、出してください」


 アイナは悲しそうなアスの声を聞いた。




 その後、アスはその幼体に再びインサートすることはなかった。

 そしてしばらくのち、いつしか幼体のマーカーは消えていた。

 


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 第2部終了です。

 引き続き、第3部を始めます。 Kei

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