修復
2085-12-16 ヴァリアブルシップ メインルーム
アイナ、アス、シロウは重苦しい表情で大型モニターに流れる戦闘記録を見ていた。
多数のアルビオンの出動で劣勢となったVN-2082が、特殊個体の出現によって盛り返した。しかし、その後新たなアルビオンの出現によって特殊個体も完全に消されていた。
それ以降の記録は、システムダウンの影響で残されていなかった。
ユーリは端末パネルに手を置き自分の前のモニターに流れるチェックプログラムを見ていた。
少ししてプログラムが終了した。ユーリは振り返るとアイナを見た。
「船の状態は正常に戻っています。泡の状態も正常と言っていいでしょう。マスターシステムも問題ありません。しかし、C・コクピットが強制終了する時に電力の低下が起こってしまいシステムにエラーが生じています。それと、船の姿勢修正に1ヶ月分ほどの大きなチャージが使われました」
「チャージ、1ヶ月分か。何度も起きるようだと、キツくなるな」
アイナはモニターの戦闘記録を消すと誰にともなく言った。
「コクピットのエラーはどの程度のものなのか」
確認のため、ユーリを見た。
「現在、各コクピットにチェックプログラムを走らせていますが、まだ途中にも関わらずすでにかなりの箇所でエラーが見つかっています。修復にはそれなりの時間がかかると思われます」
アイナは「仕方がないな」と小声で言うと話題を変えた。
「あの小型の輸送機が敵の要のような気がしたのだが、アスが飛び上がった時に何か見ることが出来たか」
「輸送機の後部ハッチに2機のアルビオンがいました」
「やはり2機か」
「見たところ、他のアルビオンと変わりはないようでしたが」
アイナは2機のアルビオンが輸送機から降下する光景を思い出していた。
「何かありそうですか」
アスが考え込むアイナに聞いた。
「あの輸送機なのか、2機のアルビオンなのか、胸騒ぎのようなものを感じるんだ」
アイナの感じていたものは波だった。しかし、言葉にするにはあまりに具体性に欠けるのであえて胸騒ぎと表現した。
「確かに輸送機の動きは奇抜でしたが、その前に自分が戦ったアルビオンもかなり特殊な戦闘をしました。そんな予期せぬ動きをする敵が現れたことに胸騒ぎを感じるのではないでしょうか」
シロウは切断された腕から吹き出る液体を顔面に浴びせる戦法をとったアルビオンのことを思い出していた。
「そうだろうか。それならいいのだが・・・」
シロウはアイナが何を言おうとしているのか分からなかった。しかし、アスには思い当たることがあった。
「え~、マジィ・・・」
突然、ユーリが落胆の声を出した。
「どうした?」
何があったのかと、全員がユーリを見た。
「今、C・コクピットの修復が始まったのですが、完了までの時間が・・・」
ユーリはモニターを指差した。
そこには『修復完了まで、675min.』と表示されていた。
「11時間か・・・」
アイナが絶望の声を出した。それはアスもシロウも同じだった
「あのアルビオンの動きだと、こちらは全滅かもしれんな。そうなるとまた巣に核を使うだろう。結果、成れの果て物資が増える・・・」
アイナが大きくため息をつきシートに深く座り込んだ。
・・・わたしの中に潜んでいる成れの果て物質。
それはその存在に全く気づかないほど小さなもの。
しかし、いつしかわたしの体を蝕み、そればかりかわたしの心さえ潰しにかかった・・・。
成れの果て物質は、長年続いた生命を、長い年月をかけて築いた技術を、すべてのものをダメにしたのだ。
アイナは、成れの果て物質が、それを知らずに生み出している人類が、憎かった。
アイナは自分を落ち着かせるように、ゆっくりと息を吸いそしてそれ以上の時間をかけてゆっくりとはいた。
「このままじゃイライラするだけだ。全員まずはメディカルカプセルに入って気分を変えよう。それからまた今後の作戦を検討しよう」
シートから立ち上がったアイナは、足早にメインルームを出ていった。




