目覚め
2085-12-07 ヴァリアブルシップ メインルーム
「キュウシュウの巣で動きがあります」
集まった3人に対してユーリが説明を始めた。
「まず、破壊された初期の巣ですが、表示されるマーカーの数が急激に増加しました。残っていた卵が孵化したものと思われます。しかし、その動きは鈍く、まだ眠っている状態です。次に新しく移動した巣では、数の増加だけでなく動きが活発になっています」
ユーリはここ数時間のマーカーの動きをモニターに表示した。新しい巣の中でいくつものマーカーが慌ただしく動き回っていた。
「近々地上に出るつもりだな」
アイナの目は動き回るマーカーを追っていた・・・、はずだった。
『・・・』
そのときアイナは、ぼんやりとした空間の中で自分の意識から生まれる小さな波を見ていた。
自分から遠ざかる波は、彼方に届くことなく途中で薄れ消えてゆく。
すると、それよりも遥か遠方で弱々しい小さな波がゆっくりと発生するのが見えた。それはまるで今目覚めたかのようだった。
その波はやがてしっかりとした波となり、こちらに打ち寄せるように近づいてきた。
徐々に近くなるその波は、やがてアイナから発する波とぶつかった。
お互いの波はその波長を合わすことなく、しかし打ち消すこともなく自分のペースで揺れていた。
『何だ、これは?』
波はゆっくりと揺れ続けている。
『これは、あの時の・・・』
『おまえだな』
『怒りは? あの時の怒りはどうしたのだ?』
『あの時のおまえじゃないのか?』
波長が合わない波は、アイナにその感触だけを残し、やがて離れていった。
「隊長。どうしたのですか?」
アイナはアスの声で引き戻された。
「あ、いや。何でもない」
アイナはその場を繕ったつもりだったが、様子がおかしいのは明らかだった。
シロウもユーリも心配そうな表情でアイナを見ていた。
アイナは皆の心配を気にかけることなく、先ほど感じた波の感触を確かめていた。
「あのアルビオンが来るかもしれん・・・」
モニターを見つめるアイナの目に、うっすらと表示された紫色のマーカーが映った。
「いや、必ず来る」
あのアルビオン・・・、アスもシロウもその意味がまだわからなかった。




