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負担


 2085-12-04 ヴァリアブルシップ アイナ・ウメハラのプライベートルーム


 アイナはメディカルカプセルの中で、先日の戦闘の記憶を辿っていた。


 「アルビオンの動きが速くなっていた」


 「機体とシステムのアップデートのせいだろうか」


 「しかし、その一方でぎこちなさを感じることもある」


 「機体に慣れていないのか」


 「あと少しで倒せたのに」


 「一瞬あの感触に触れたような気がした」


 「気のせいだったのだろうか」


 「ならば、そのあとに感じたプレッシャーはなんだったのか」


 「あれは気のせいなんかじゃない」


 「あの空間そのものがプレッシャーだった」


 「反射的にわたしはそれを避けようとしたが・・・」


 「本当に避けるべきものだったのか」


 「2機のアルビオンと、輸送機・・・」


 「ひょっとして、その中にトリガーがあるとでも言うのか」






 ヴァリアブルシップ メインルーム


 シロウとユーリはそれぞれのデスクで端末パネルを操作していた。モニターには幾つもの数字が慌ただしく流れていく。

 アスはその様子を不安そうに見ていた。

 しばらくして、シロウが端末パネルから手を離すとユーリを見た。

 「これでどうかな。そっちに送ったから確認してみてくれ」

 「はい」

 ユーリは目の前のモニターに表示されたプログラムをスクロールしながら確認していった。

 「・・・これより先に作動させるのはやはり無理ですよね」

 「そうだな。それなら目視で作動させるほうが速いな」

 「分かりました。それでは、インストールします」

 プログラムを最後まで確認したユーリは、システムに組み込むための準備にかかった。

 「終わったのか」

 ずっとその様子を見ていたアスが、待ちわびたように言った。

 「ああ、これで隊長の負担を少しは減らせる。あ、自分たちも、だけどな」

 「ありがとう」

 アスはインサートした特殊個体がダメージを受けた時のパイロットへのフィードバックを心配していた。アスにはまだその経験はなかったが、アイナの今までの様子を見ているとその負担はかなりのものだと思われた。自分はともかく、少しでもアイナの負担をなくしたかった。そのために特殊個体が消滅するときには自動で意識を戻すシステムが出来ないか、プログラムを組めるシロウに頼んだのだった。

 「隊長の話だと、インサートした特殊個体が消滅するほどのダメージを受けた時、まず個体からのフィードバックとしてパイロットの脳に大きな衝撃が入力される。そしてそれは一旦個体がダメージを受けたのと同じ部位に伝わり痛みを感じさせたのち、再び脳に戻り強烈な苦痛を与えるようだ」

 「つまり、3回もか・・・」

 VN-2082の巨体が消滅するほどのダメージは想像を絶するほど大きなものだろう。それを3回も受ければ気を失うのも当然と思われた。

 「特殊個体が消えるほどのダメージをいつ受けるかは予測はできない。そのため、パイロットの脳が1回目の大きな衝撃を受けた時に強制排除が作動するようにしてみた。3つのすべての衝撃を防ぐことはできない。あくまでも緊急用だ。まぁ、危険が迫った時に誰かが目視で戻すのが一番だな」

 そう言ってシロウは心配そうな表情のアスに笑いかけた。

 


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