2機のアルビオン
2085-12-02 ヴァリアブルシップ
『識別コードにまだない機体・・・。輸送機よりも小型です。おそらく偵察機か何かだと思われます』
森の中で身を潜めるアイナがユーリからの通信を聞いていた。
「やはり来たか」
木々の影から上空を見上げる。
それはゆっくりと旋回していた。
墜落した輸送機を探しているな、とアイナは思った。
すると偵察機が高度を下げ始めた。
「やれるか」
獲物として視野に捉えたアイナは、姿勢を下げると一気に飛び上がった。
最高到達点で偵察機目掛けて爪を振り下ろす。
空気を切り裂く音が伝わった。
「外したか!」
咄嗟に偵察機はアイナの攻撃をかわしていた。
「小さいだけに小回りが効くのか」
空振りのまま降下したアイナは、すぐに木々の中に身を隠した。
「すぐに次が来る。索敵を頼む」
『了解しました』
少しして、アイナの予想通り索敵モニターに輸送機と思われるマーカーが現れた。
「真っ直ぐこちらに向かっている」
木が邪魔で、目視できない。
『輸送機からミサイルです。避けてください』
「そんなものに当たるか!」
アイナはミサイルの動きを予測するように軽くジャンプするとそのままミサイルに取り付き、一瞬でそのエネルギーを吸収し無効化した。その一連の動作の過程で周囲を見渡す。
『アルビオン2機確認。ミサイル発射直後輸送機から降下しました』
「こちらでも見えている」
すると1機のアルビオンが大きくジャンプし、アイナをオーバーテイクする角度で迫った。
すかさずアイナはジャンプし、アルビオン目掛けて右腕を振り下ろした。
「速い動きだ」
アルビオンはアイナの攻撃を避けていた。すぐに姿勢を整える。
「わかっている。これは囮だろう」
後方にいたもう1機のアルビオンから放たれたライフルの銃弾がアイナの背後に迫っていた。
追っていたアルビオンもその攻撃がわかっていたように後方に避けた。アイナも同時に左に体を滑らせる。
地面に当たった銃弾が炸裂し大きく土煙をあげた。アイナはその煙の中に一瞬身を隠すと、索敵モニターで後方から狙撃したアルビオンの位置を確認した。
「そこか!」
木々の間を縫うように猛スピードで迫る。
アルビオンを目の前に捉えたアイナは下からコクピット目掛けて右腕を突き出した。
「なに、よけたのか!」
アルビオンはアイナの攻撃と同時に回避行動をとっていた。
しかし、爪はコクピットを外したが、アルビオンの左腕を切断し吹き飛ばしていた。
アイナは再び木々の間に身を隠すと、周囲の確認をした。
「奴ら、かなり動きが速くなっている」
『輸送機からミサイルです』
アイナは回避のための姿勢を取ったが、ミサイルはアイナの位置から大きく外れ木々を吹き飛ばした。
「当てずっぽうに撃っているな」
アイナは2機のアルビオンの位置を確認した。
「腕を切り落とした奴が動かない。とどめを刺すか。いや、奴らの今までの動きからするとこれも囮かもしれん」
アイナから離れた位置で再び輸送機から撃たれたミサイルが爆発した。
「やはり囮だ。奴らにはわたしの位置がわかっていない」
アイナの視界に、動きを止めたアルビオンに向かって急速で移動するもう一つのマーカーが映った。
「一ヶ所に集まるとは、なにを考えている? あれは囮じゃないのか?」
アイナのすぐ上を大きくジャンプするアルビオンが見えた。
「いけ!」
アイナは体を大きくジャンプさせ、上空のアルビオンに迫った。
突然のVN-2082の出現に驚いたアルビオンは腰だめでライフルを撃った。
「そんな状態で当たるものか」
アイナは右腕を振り上げると力を込めた。
アルビオンはライフルを捨てると腰に付けていた刀を持った。
アイナの爪とアルビオンの刀が同時に振り下ろされる。
バシッ!!!
3つの大きな音が重なり響いた。
アイナの脳に衝撃が走り、すぐに左腕に伝わると再び脳を襲った。苦痛にアイナの顔が歪む。
「腕を切られたくらいでは、消えないと言うことか」
アイナの視界の中に消えてゆく自分の左腕と、両足を切り落とされ落下するアルビオンが見えた。
アイナの視界の隅に放たれたミサイルが映った。しかしそれはアイナから大きく外れ遠くに着弾した。
「慌ててミサイルを撃ったな」
着地したアイナは再び身を隠す。
「立っているアルビオンが全く動かない。ひょっとして動けないのか。ならば先に両足を切り落としたやつを」
アイナは仰向けに倒れたまま動きを止めているアルビオンに向かって体を走らせた。
「!・・・」
その時アイナは、何かを感じた。
「これは、あの時の。おまえか・・・」
しかしそれは瞬時に消えた。
アイナは周囲から今までにない別のプレッシャーを感じた。
「こいつらは、一体何なんだ」
アイナは押し寄せるプレッシャーを跳ね返すように体をジャンプさせた。なぎ倒された木々の先で、両足が切断され仰向けで動かないアルビオンが見えた。
「今のうちに倒しておかなくては!」
アイナは残った右腕をアルビオンに向けた。
『隊長の後方、ミサイルです。上に逃げてください』
ユーリの声が響く。
「間に合う!」
ミサイルの到達よりも先に攻撃できると判断したアイナは、すかさず腕を振り下ろす。
しかし、アイナの爪がアルビオンのコクピットに刺さる直前に、アルビオンがバックパックの噴射で機体をスライドさせた。
爪が地面に突き刺さる。
アイナはすぐに姿勢を下げると、反動で刺さった爪を抜きながら上に飛び上がった。
アイナのいた地面に着弾したミサイルが爆発し、大きく砂塵が舞う。
上空でアイナは逃げたアルビオンを捉えていた。
「今度こそ!」
『うしろだ。ユーリ、隊長を戻せ!』
アスの声が聞こえた。それと同時にアイナの脳に衝撃が走った。しかし、その後のさらに耐えがたい苦痛が体全体に伝わる前に、アイナの意識はコクピットに戻されていた。
「やられたのか・・・」
アイナは大きく息をはいた。
「ありがとう。あのままだったら、また気絶していたかもしれない・・・」




