泡
2085-07-14 ヴァリアブルシップ メインルーム
その朝は、早くから全員がメインルームに集合していた。
昨夜、シロウが指摘した時間のズレは、今朝になってユーリが確認したときにはなくなっていた。
「どちらの時間がズレていたのだ?」
アイナが自分のデスクのモニターを確認しながらユーリに聞いた。
「わかりません。この船の存在する空間はあたしたちがもともといた時間のものですので、それがズレるということはないはずなんですけど、だとすると・・・」
ユーリが困ったように首を傾げながら言った。
「時間がずれていると、どのような問題が起こるのかな」
今度はアスが聞いた。
「それもわかりません」
すると、ユーリは壁の大型モニターを操作し、急激に右下がりとなるグラフを表示した。
「これは、時間のズレと関係があるのかわかりませんが、ここ数日で船のチャージ使用量が著しく増加しています」
「何かに使っているのか?」
アイナは考えこむようにそのグラフを見た。
「使用状況を確認すると、アドレスBS-001が使用してるのがわかりました」
「BS-001ってなんだ?」
「それは俺が説明しよう」
アスの問いにシロウがパネルを操作し、モニターの表示を変えた。そこにはいくつものコード表があり、その中の一つが反転表示されていた。
「BS-001なんて通常は表に出ないものなので、ユーリの代わりに調べてみましたが、どうやら船の姿勢制御のプログラムのようです」
「姿勢制御って、この船は動くわけじゃないのにそんなことに使われるのか」
アスが不思議そうに聞いた。
「この作戦のレクチャーを受けたときに、過去の時間に来てもこの船は我々の元の時間の泡の中にいるようなものだと聞いたと思うが、その泡を維持するのがBS-001の姿勢制御プログラムというわけだ。つまり、その泡の維持に今まで以上にエネルギーが必要になっている」
シロウのアスへの説明が終わると、ユーリは再びモニターの表示を変えた。
「これは昨夜から今朝にかけてのチャージ使用率です」
そのグラフは明らかに時間の修正された夜間に高くなっていた。
「相関あり、とみたほうがいいだろうな。時間がきちんと修正されていれば問題はないと思うが、チャージの残量への影響は?」
チャージはいわばこの船の生活環境を含む全てを維持するための燃料なので、それがなくなってしまえば生存の終了を意味していた。
「現在の使用状況だと数日の減少なので、今のところ問題とはなりません」
チャージはリザーバーも含めると通常の使用で5年は保つと言われていた。それが数日変わったところで、何か影響が出るものではないと皆が思った。
「繰り返し起こらなければ今回の件は心配ないだろう。念のため、時間のズレとチャージ使用料を共に気にかけるようにしておいてくれ」
「わかりました」
その時は大事になっていないことに安心し、朝食を摂るために全員が食堂へ向かった。




