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 2085-07-13 ヴァリアブルシップ メインルーム


 「あれ? まだいたんですか」

 消灯時間の迫る深夜、ユーリがメインルームにやって来ると、何やら作業をしているシロウがいた。

 「ああ、見学中に撮れた良い画像をファイルしてたんだ。もう、待機モードの時間か」

 「そうですけど、もう少し待ちましょうか?」

 「いや、終わったからいい」

 シートから立ち上がったシロウは、急に思い出したように動きを止めた。

 「そうだ。これ、時間がずれているんだけど、おかしいよな」

 そう言って自分のデスクのモニターのすみの時間表示を指で示した。

 「時間ですか?」

 ユーリはシロウのデスクに近づきモニターを覗き込んだ。

 そこには元いた世界の日付を示す2729-07-13の数字、その後ろに11:15と現在の時間を表示しており、そしてその下にはこの世界での日付2085-07-13・・・。

 「あ・・・」

 日付の後ろの時間の表示に目を移したユーリが思わず声を出した。

 そこには上の数字とは違う11:55と表示されていたのだ。

 自分のデスクのモニターを見る。そして壁の大型モニターも見た。

 本来その上下の時間は同じはずだが、シロウのモニター同様ずれていた。

 「時間がずれるなんてことあるのか?」

 「ないです」

 ユーリは考えることなくすぐに答えた。

 「通常はシステムの補正が働きますので、ひょっとしたらまだそれが行われていないのかもしれませんね」

 「何も問題がなければいいんだが」

 「システムの待機モード中にエラーチェックと回復が行われますので、明日朝一番に確認してみます」

 「わかった。それじゃぁ、おやすみ」

 「おやすみなさい。またあした」

 ユーリはメインルームを出ていくシロウに笑顔で手を振った。

 そのあと、端末パネルに手を置きシステムを待機モードにすると、念のため、システムチェックをフルスキャンに切り替えた。


 


 

 消灯時間の過ぎたメインルームは、天井の常夜灯のみの明かりで薄暗かった。

 そんな中でアイナは自分の席に座り、デスクに腕を置き頬杖をついてぼんやりとしていた。

 廊下に続くドアが開く音がした。

 入ってきたのはアスだった。両手にはグラスを持っている。

 「眠れないのですか?」

 そう言ってアスは手に持っていたグラスのひとつをアイナのデスクにおいた。褐色の液体の中で氷がグラスに当たる音がした。

 勤務外のアルコールは特別禁止されていなかった。もっとも摂取していたとしても、メディカルカプセルに入ればすぐに無毒化される。

 「あ、ありがとう。眠れないわけじゃない」

 アイナは置かれたグラスを手にとった。

 「ただ、少し考えていた」

 そのまま口に運ぶと一口飲み、ゆっくりと息を吐いた。

 「先日の戦闘のことですか」

 そう言いながらアスは自分の席に座ると、グラスをデスクにおいた。

 アルビオンの施設を襲撃し、そのあと戻った時からアイナの様子がおかしいことにアスは気付いていた。

 「何かあったのですか。良ければ話してください」

 アスはアイナに優しく笑いかけるように言った。

 アイナはしばらくグラスを見つめたまま何か考えているようだった。

 アスはそれ以上何も言わず、アイナからも視線をずらした。

 アイナのグラスから氷の音がした。

 「これは、信じてもらえないかもしれないが・・・」

 グラスを置く音がした。

 「先のキュウシュウで新型のアルビオンと戦った時、わたしはそのアルビオンから怒りのような凄まじいプレッシャーを感じた。それと同じようなものを今回も感じたのだ」

 アスは視線をアイナに向けた。

 「怒りを感じた、ということですか」

 「いや、怒りではない。今回は怒りは感じなかった。けど、何か同じような感触だった」

 アスはアイナを理解しようとしたが・・・、できなかった。

 「あはは。なんのことだかわからないよな。わたしもよくわからん」

 困った表情のアスの気持ちを察してアイナが笑いながら言うと、すぐにまた表情を固くした。

 「あれは、あの機体からなのか、それとも中のパイロットからなのか・・・」

 アイナはグラスを取ると一気に飲み干した。

 アイナたちのこの世界への干渉は、あくまでもVN-2082を通して間接的に行われているに過ぎない。にも関わらず、この世界の怒りのような、いわば感情を感じ取ることができるのだろうか。それを全く経験していないアスには、信じられることではなかった。

 

 『隊長の言っていることが本当だとしたら、さらなる干渉につながるかもしれない。そうか、ひょっとしてトリガーは隊長なのでは・・・』


 アスは手にしたグラスをじっと見つめながら考えていた。

 



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