基地
2085-06-13 ヴァリアブルシップ メインルーム
いつものようにVN-2082の視界を使い自然観察を行なっていたシロウが、慌てるようにC・コクピットから飛び出してきた。
すぐにアシストをしていたユーリに駆け寄る。
「今の記録出来たかな?」
「今、確認中ですが、大丈夫だと思います」
「隊長とアスを呼んでくる」
VN-2082の際立った動きがなかったこともあり、ユーリの周囲に集まった皆は久しぶりに緊張した様子でモニターを覗き込んでいた。
「いつもの自然観察中に偶然映ったのですが・・・」
シロウは自分が意識挿入を行ったVN-2082の視野の記録映像が映るモニターの隅を指で示した。
「何かの施設の建物があるのですが、そこに一瞬アルビオンらしきものが映っています」
ユーリがいいタイミングで映像を止め拡大すると、画像処理によって解像度をあげた。
「確かにアルビオンだ」
モニターを覗き込むアイナが言った。
「一瞬映り込んだだけなのによく気付いたな」
アスが感心するようにシロウを見た。
「位置はわかるか?」
「はい」
ユーリはニホンの地図を表示させた。
「旧表示、ワカヤマ・・・、の山間部です」
「アルビオンの基地か何かでしょうか」
「その可能性もあるな」
「製造工場の可能性はどうでしょう?」
シロウの問いにアイナは眉をひそめた。最後のキュウシュウでの敗北が浮かんだ。
あの新型がたくさん造られたら・・・。
「特殊個体は出ていないか?」
アイナは直接その場所を確かめたかった。
「今のところ、確認できません」
「この個体はどうなった?」
「はい。この場所を通過したあと、時々動きを止めながらゆっくりとホンシュウ中央部へと向かっています」
「他にこの場所を近々通過する個体は?」
「ありません」
アイナは肩を落とした。
「ただ、マーカーの反応がはっきりしないのです。表示されなかった個体が急に現れたり、逆に表示が急に消えたり。もしかしたら、急に現れるものがあるかもしれません」
モニターにはキュウシュウからホンシュウに渡ったVN-2082のマーカーがいくつか表示されていた。その中の数体はまだ施設の位置を通過する可能性があった。
「進路予測をして、もしも近くに行く個体があれば教えてくれ」
「分かりました」
アイナはモニターから視線を上げると、自分の席に向かった。
「この前のようなアルビオンがたくさん出てきたら、せっかくの今までの干渉が覆されるかもしれませんね」
シートに座るアイナにアスが問いかけた。
シロウもユーリも振り返るとアイナを見た。
「これはなんの根拠もないわたしの考えだが、例えここでアルビオンがVN-2082を全滅させたとしても、今までの干渉の効果がなくなるとは思わない。しかし、もしもそうなれば、干渉による効果の発現が小さなもので終わってしまう可能性がある」
「やはりまだ干渉が足らないと言うことですか」
「いや。そうではない」
アスの言葉を否定しアイナは続けた。
「これだけの干渉をしたにも関わらずなんの変化もないんだ。だとしたら必要なのはさらなる干渉ではなく、変化を起こすきっかけとなるもの。例えば、トリガーと言うべきものだ」
「トリガー・・・、ですか」
アスは理解し難いような表情になった。それはシロウもユーリも同じだった。
「追い詰められた人類の中に救世主が現れるような」
アイナはそこまで言うと急に笑い出した。
「あまりに馬鹿げているな」
アイナは飛び跳ねるようにシートから立ち上がった。
「干渉は引き続き行う。止めることはない」




