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それぞれの理由


 2084-10-05 ヴァリアブルシップ アイナ・ウメハラのプライベートルーム


 メディカルカプセルの中で半覚醒状態のアイナは、ぼんやりとした頭で記憶をひとつひとつつなぎ合わせるように確かめていた。


 カプセルに入ってから、ずっとアスが近くにいるような気がしていた。


 「そうか、アスに抱きかかえられこの中に入ったんだ」


 『ここに入ればもう大丈夫だ』

 『よかった』

 『アイナ隊長・・・』

 

 遠くでみんなの声がした。


 「涙声は、ユーリだな」


 「ここに入る前・・・」


 「そうか、わたしはC・コクピットの中にいた」


 「そこで何をしていたのだ」


 突然、アルビオンの持つ刀が自分の腹に突き刺さっていく光景が浮かんだ。

 腹と脳を行き来する衝撃的な痛みが蘇る。

 全身が緊張する。

 しかし、カプセルの効果ですぐに薄れていった。


 「あいつと出会った・・・」


 「あいつを感じた・・・」


 「あいつから吹き出す怒りを感じた」


 「あいつは誰だ? あの怒りは、なんだったのだ・・・」


 「追い詰められた奴らが必死になるのはわかる」


 「それがあの怒りなのか」


 「一気に張り裂けたような怒りだった」

 

 「わたしの怒りは、あいつの怒りに負けたと言うことか」


 「いや違うだろう あの怒りは異常だ もっと理由があるのではないのか」


 「どんな理由だ」


 「いや、どんな理由だとしても、わたしは負けたのだ」


 「わたしの理由はその程度のものだったのか・・・」


 「そうではない。決してそんな程度のものではない」

  

 「もしも、あいつがあいつらの時代の怒りの代弁者なら、わたしもわたしの時代に苦しむ人たちの代弁者だ」


 「次に会ったら、わたしは、負けない・・・」


 こんな時、以前なら嫌になる程思い出された自分を苦しめる過去も、このカプセルのおかげで出てくる事はなかった。


 メディカルチェックの終了を知らせるチャイムがなった。

 カプセルのハッチがゆっくりと開く。

 アイナが体を起こしカプセルから出ると、ずっと感じていたアスの姿はなかった。

 時計を見ると、4時を少し過ぎたところだった。


 「まだ、みんな寝ているな。朝になったら、心配かけたことを謝らなければ・・・」


 そして、大きく深呼吸をすると、シャワールームへと向かった。

 


 

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