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長い休息


 2083-12-25 ヴァリアブルシップ メインルーム


 上下一体となったパイロットスーツの袖を腰に結び、タンクトップ姿のアイナがコーヒーを2つ持ってメインルームに入ってきた。

 「昨日はすまなかった。少しは寝たか?」

 そう言ってコーヒーカップを渡した。

 「あ、ありがとうございます。隊長こそ、お疲れ様でした。記録データの処理中は、ちゃんと眠れましたよ」

 メインルームには一人で戦闘のデータ解析の確認を行なっているユーリがいた。

 昨日の急に現れた人型兵器を観察するために、アイナ、アスそしてシロウは数十回にもわたる意識挿入を行っていた。その後、戦闘が落ち着いた頃には疲労困憊し、C・コクピットから出るや否や3人ともプライベートルームに直行し眠ってしまったのだった。

 「他の二人は?」

 「まだ寝ているようです。起こしますか?」

 「いや、いい。メディカルカプセルの中かもしれん。もう少し寝かせておこう」

 昨日の戦闘は劣勢だったVN-2082が途中から盛り返し、人型兵器を殲滅させていた。これが逆なら、ゆっくり眠っていることもできなかっただろう。

 「記録は十分だったか?」

 「はい。かなりの回数のインサートを行ってもらいましたから、データ量も十分すぎると思います」

 「やはりVN-2082をコントロールできないのはもどかしかったが、最後の核を自ら防いでくれたのはありがたかった」

 急に足音とともに扉が開き、アスとシロウが慌ててメインルームに入ってきた。

 「遅くなってすみません」

 二人がアイナに頭を下げた。

 「わたしも今起きたところだ。問題ない。体は大丈夫か?」

 「はい。大丈夫です」

 「自分も問題なしです」

 「食堂にコーヒーが入れてある。持ってくるといい。落ち着いたところで昨日の戦闘データを見てみよう」

 アイナは手に持ったカップを二人に見せた。

 ユーリはコーヒーを一口飲むと、解析の終わった戦闘映像を表示する準備を始めた。


 アスとシロウがコーヒーを持って自分の席に座り、一息ついたところで昨日の戦闘に関する検討会が始まった。

 モニターにはいくつかのVN-2082の視界から解析した人型兵器の3Dモデルが表示された。

 それはややずんぐりとした体型で、頭にヘルメット、体にはプロテクターをつけているような格好だった。右手にはライフルを持ち、背にはバックパックを背負っていた。

 少しして、アニメーションとして動き出した。

 高速で移動中に背中のバックパックからの強力な噴射で大きくジャンプし、VN-2082の攻撃を避けながらすぐさまライフルを撃つその動きは圧倒的だった。

 「やはり、これはアルビオンだ。昔の記録で見たことがある」

 「今では見かけないよな」

 アスがシロウを見ると、シロウも同意するように頷いた。

 「元は軍事利用されていたものだが、地球上の環境悪化によって戦争どころではなくなり、今ではすっかり見かけなくなったと言うわけだ」

 長年絶えることなく続いた各国間のイザコザも、地球の未来が絶望的となったことですっかりなくなったのは皮肉なものだった。

 「しかし、この動きなら、VN-2082が劣勢になったのもうなずけます」

 「けど、それなのにどうしてこちらが勝つと予想できたのですか?」

 アスもシロウも昨日のアイナの『VN-2082が必ず勝つ』と言う言葉の真意を聞きたかった。ユーリもアイナに視線を向けた。

 「記録によると、アルビオンは最終的には無接点神経接続によって操縦することになるのだが、それはもっと後のことなのだ。この時代にアルビオンが実戦投入されたとは驚きだったが、実戦投入当時、制御系の暴走により使い物にならなかったとされている」

 「なるほど。確かにあれだけ素早い動きをしていたのが、戦闘の後半では急に動きが鈍くなったように感じました」

 「戦闘の経過を映します」

 ユーリはモニターの映像を変えた。

 モニター上にたくさんのVN-2082を示すマーカーが表示され、時間の経過とともに巣穴から周囲に徐々に広がっていった。そこにenemyと表示された黄色のマーカーがVN-2082を囲うように多数出現した。

 その後、黄色のマーカーは巣穴へと攻め込むように次々とVN-2082を消していった。

 「先の戦闘で、核の爆発を阻止されたことを学習しているな」

 アイナが敵の戦術を分析した。

 「核の投下前に、できるだけこちらを叩くと言うことですね」

 「しかし、制御系の暴走により劣勢となり、慌てて投下するも結局阻止された」

 モニターは投下された核弾頭に、無数のVN-2082が覆いかぶさる映像に切り替わっていた。

 「一時はどうなるかと思いましたが、これならまだまだこちらが優位に進みますね」

 シロウは映像を見たことによって、昨日の緊張感を思い出していた。

 「だが、ここでアルビオンが実戦投入されたと言うことは、今は使い物にならなくても、今後戦争に使われる時期が早まったと言うことだ。結局それはわたしたちの時代に悪影響を伝える因子となりうる。その流れを変えるためにも、もしもまた出てくるようなことがあれば徹底的に叩く」

 アス、シロウ、そしてユーリはアイナの目を見ると大きく頷いた。


 その後、地表での役目を終えたVN-2082は、他の大陸と同様に地下深く眠りにつくように活動を停止した。

 そしてヴァリアブルシップの4人は、ぼんやりと表示されるだけで一向に動きの見せない日本のマーカーに、当てのない長い休息を余儀なくされた。




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