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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
57/59

45 封印と解放の話

 社を包んでいた青い炎は、崩れた壁の中にあった人の死体を燃やし尽くすことを選択した。

 その死体はすぐに炎に抱かれ、燃え尽きると共に、光が舞った。

 大きな亀裂が真っ直ぐ壁に走り、蒼月が呆然と見つめる目の前で壁は崩れ、その中から青い炎が噴出した。


 『よくやった………ああ、懐かしい』


 妖狐は、その中に一歩踏み出した。

 あんなに燃え盛っていた炎は、大きく舞い上がり、妖狐の元へと向かっていく。


 「あぶなっ………くないんだ………」


 大きな炎は妖狐の前へと集まると、人型を取る。


 ―――お帰りなさい


 妖狐も微笑むと


 『ただいま』


 そう言って、藍鉄の瞳から涙を流した。


 「………」

 『約束は守られた。この身体、この少年に帰そう』

 「っ! 本当か!!」

 『ああ』


 ふと、藍鉄の体にあった耳と尻尾が消え、藍鉄の、力の抜けた体は地面に崩れ落ちる。


 「おっと、ほら、トモダチなら支えてあげなよ」


 いきなり崩れ落ちるとは思わなかった蒼月が走り寄る前に、煙管の青年が藍鉄の体を支える。


 「え、あ、あの時の」

 「ほら早く」

 「あ、はい」


 その青年からまだ足に力が入らない藍鉄を受け取る。


 「おい。おい、鉄!」

 「う………あお、さん?」

 「!!」


 良かったと、そう呟きながら蒼月は抱きしめる。


 『………お主らには、まるで呪われた生活を強いてしまったな』

 「あ………よう、こ?」


 まだ焦点が完全に合わない藍鉄の目の前には、幼い少年の姿を模った青い炎の妖狐がいる。


 「鉄? 無理するな」

 「はは………だ、だいじょう、ぶ」


 ぐっと、蒼月の肩に支えられながら自らの足で立つ。

 しかし、一人で立つことはできず、蒼月の肩に手をまわしながら妖狐と対面する。


 「ぼく、は………ん、貴方を、きっと………許すことは、できません」

 『ああ………我は謝ることも許されぬ』


 すっと目を伏せ、俯く妖狐に、藍鉄は微笑む。


 「でも……、僕は、貴方を………あなたの悲しみを知っている」

 『………?』

 「あなたの中にいる間、貴方の記憶を………視させてもらいました」

 「鉄!?」


 藍鉄も、ただ体を受け渡したわけではなかった。


 『お主………』

 「フフフ………転んでも、簡単には起き上がるなってのが……お父様の教えなんです」


 教えだからと言っても、そう簡単にできるようなことではない。

 憑代になったモノがそんなこと簡単にできてしまっていたら、とっくの昔に妖狐は祓滅させられていたことだろう。


 「見てきました、よ。月並みな言葉ですが、大変でした、ね」

 『………』


 藍鉄が見てきたのは、妖狐が、人々と友好関係を築いてきた時間と、そのあと、自らの父に捕まるまでのすべての、魂に刻まれた時間の記憶。


 「でも、ありがとうございます………たった二言でしたけど、お母様の声を聴くことができました」


 その言葉に驚愕で目を見開く妖狐と蒼月。


 『お主………』

 「一つ、僕の頼みを、聞いてもらっていいです、か?」

 『………何でも言え』


 微笑んだ藍鉄は、人間を模った炎になった妖狐に、その手を伸ばす。

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