表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
51/59

39 恐怖と気概の話

 野菜があまり届かなくなった。

 もともとあまり食べる必要のなかった少女は、巫女と料理人に食べるように促し、自らは土地神と最近の現状を憂いていた。


 「どうになりませんか?」

 「そうだね………我から動くことはできない。相談が来たら我を呼びなさい」


 少女は待った。

 どうにかしてくれと人々が社に泣きついてくるのを。


 「土地神様のお力でお救い下され!」


 少女は喜んだ。

 その声に応えられると。

 やっと人々が元気になるように土地神様が行動してくださると、少女はただ喜んだ。


 『我が止めよう』


 土地神のその言葉に人々は浮かれた。

 そして忘れた。

 近すぎて考えなかった。

 土地神は、その力を持って西と東の国を滅ぼした。


 「ありがとうございます、土地神様」

 『我の愛する人が無事ならばそれで良い』


 最初に土地神に恐怖したのは、戦場に足を運んだ者たちだ。

 人に成しえないことを軽々とやってのけたその技を、戦場で見た者たちは自らの家で家族に伝え、その言は広く多くの人に伝わった。


 「土地神様は守ってくださった」


 人々は喚起したが、それと同時に不安になった。

 もしも土地神が自分たちにその怒りを向けるようなことがあれば、簡単に滅ぼされてしまう。


 「土地神様への供物を増やすべきではないか?」


 土地神への貢物は、完全な供物へとなった。

 人々は、ご機嫌取りの為に社へ向かうようになり、最初にあったような純粋な気持ちはなくなってしまった。


 「他の土地の者が入れぬように社の周りに結界を張るべきだ」

 「そうだそうだ!」


 人々は何人かの地元の呪い士に、社の周りに強固な結界を張ってもらった。

 土地神はいぶかしんだが、別に社が破壊されたわけでもなく、愛する人々がやることだからと、肩をすくませ見守った。


 「今度は別の者を送り込んできました!」

 「土地神様!」


 人々が自らの力で脅威を追い出そうという気概は消え失せていた。

 すべて土地神様に頼れば何とかしてくれる。

 そんな思いが、土地中に蔓延していた。


 『分かった』


 振るわれる強大な力。

 振るわれれば振るわれるほど思い出す思い。

 もしその力が自らに振るわれたら?


 「土地神様、次はこちらを」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」

 「その次は―――」


 人々は土地神を社に返さなかった。


 『そろそろ社に帰らねば力が―――』

 「でしたらこの者の魂を土地神様の為に捧げます」

 『………分かった』


 結界で厳重に封印された社では、少女が一人夢の中で土地神の帰りを待ち続けていた。

 巫女や料理人は、誰も訪れなくなって社から消えて行った。

 少女は誰も来ない社で、自らを生かしてくれた土地神を待ち続ける。


 「今日は帰ってくるかしら、―――様」


 魂を食べて、人間の負の感情に感化され、土地神は神から妖怪へと転身する。

 社の中でひたすら待ち続けていたその少女がその命を落とした時、土地神は妖狐としてその身を堕とす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ