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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
47/59

35 笑い嗤う狐の話

 藍鉄の下に居た蘇芳と、藍鉄の周囲に渦巻く風が調度品を壊していく。

 壁に駆けられた掛け軸は細切れになり、飾られた調度品は部品に分解されていく。


 『ふぅ。つまらん。時代が移ろうと人は変わらぬか………』


 いつぞや霊体の状態で封印しようとしたあの心の綺麗な青年は、結局のところ少数派だったということだ。


 『さて。この娘はどうしようかの』


 無意識とは恐ろしいものだ。

 藍鉄は、その意識を無くしても、蘇芳を守った。

 その心意気には好感を得ていた妖狐としても、ここで自らの力の被害で蘇芳を殺してしまっては寝覚めが悪い。


 「て、鉄っ!」


 床で気を失っている蘇芳に手を伸ばしていた妖狐は、入り口で聞こえた幼い声に顔を向ける。


 『何用か? 小童』

 「っ!」


 さっきまで無かった、蘇芳のよりもはっきりした耳と尻尾と、藍鉄の声ではないその声に、蒼月は目を見開く。


 『ふむ。お前、見た所、ただの人間だろう? 我の前に姿を現すなんぞ、喰ろうて欲しいのか?』


 にやりと微笑む妖狐だが、蒼月の方へと手を伸ばしはしない。

 別に妖狐が力を使えば、その力の補給の為に他人の魂の力を必要とするが、時雨が言った通りその燃費はかなり良い。

 蒼月に興味を示したわけではない。ただ、暇な時間を弄んでいるという感覚だ。


 「お、お前は妖狐………なのか」

 『そうな、我は妖狐なり。何用か答えよ、小童』

 「そっその、貴方の宿主を、返してくれっ」


 後ろには何もない。

 しかし、その心は後ろに下がることを許さない。

 目の前から寄せられる殺気とも言えるような視線に、縮む心に発破をかける。


 『小童はこの身体のと知り合いか?』

 「友達だ!」


 吠える。

 その返答に、一瞬目を見開いた妖狐は、口元に袖を持ち、笑う。


 『くっくっく………小童、お前は自らの体のみを寄越せと言われて、素直に差し出せるか?』

 「………無理、です」

 『そうさ、できまい? それは我も同じ。魂と体を引き離すだけでもどれだけの力が必要となるか………いや、そう言っても小童には理解できまいな』


 自ら言った言葉を自ら否定して、首を傾げる。


 『おや? なんだ、小童。お前震えているのか。我が怖いのか? ん?』

 「っ」

 『そうだろう、そうだろう! 我は今すぐお前を殺すことができるような妖怪だものなぁ』


 手を広げて見せる藍鉄の姿をした妖狐に、半歩足が下がる。


 『アハハッ! 冗談だ。話を聞かないほど我は気が短くないし、そこまで飢えていない。それに、喰らうならまずこの娘の魂を喰らうだろうよ? 霊力が高い方が美味い』


 妖狐は蘇芳から立ち上る霊力の匂いを嗅いで目を細め、舌なめずりをする。


 『で、だ。この身体、藍鉄と言ったか? 返してほしいならば、代わりの体を差し出せ………それで我が了承するかは、また別だが、な?』


 妖狐は思い出す。

 もう二度と戻れない自らの居場所を。

 それを差し出されなければ、藍鉄から離れる気などさらさらない。

 それは、普通の人間には無理なことで、陰陽師にすら難しいこと。

 この小童が話す友達とやらも、結局はその程度の者なのだろうと、藍鉄の姿をした妖狐は肩をすくめて嗤う。

次が狐の話になるので、1日空けます。

切りがいいし、PC買いに行くからな!


と、言うわけで、恐らく次の更新は4日0時です。


原作者共々、感想などを画面の前で待ってますw

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