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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
37/59

25 大人の思案の話

 書斎の机の上は、様々な資料で埋まっていた。


 「あいつの異常な強さはきっと妖狐を使役しているか………」


 古い物から新しいものまで。

 その全てに共通するのは、それら全て妖狐について書かれているということ。


 「既に妖狐に喰われた上にある人格なのか………」


 遭遇例であったり、かけられた呪いであったり、その解呪例であったり、討伐例であったり、情報は多岐にわたるが、その全てしっかりと目を通したのだと分かるほどに全て手垢がこびり付き、古いものはきちんと修復作業をしなければ読めなく日は近いだろうと言える状態になっている。


 「どちらにしても、金になる」


 その全てを床へと落とし、豪華な椅子に座り、足を机の上に乗せる。

 手に握るのは、三枚のプロフィール。

 一枚目には蒼月が載っており、出身から家族構成、趣味嗜好に至るまで調査書がびっしりと書き込まれている。

 霊視できるわけでもなく、普通の一般家庭にて育ち、六歳の誕生日、妹が魂を喰われた状態で発見される。いつも元気に明るく振る舞っており、勉学の成績は悪いが運動神経はそれなり。物怖じしない性格で、常に人の輪の中心にいる。

 書かれている内容はそんなところだろうか。


 「さて、俺の望みを叶えるには」


 二枚目には藍鉄の名前と写真が、三枚目には蘇芳の名前が書かれているが、二枚ともプロフィールのほとんどが不明の文字で産められている。

 出身地、両親共に不明、誕生日不明、来歴不明、趣味嗜好不明。むしろ不明と書くのが正しいのかもしれないと誤解できるほどに不明の文字ばかりが並んでいる。

 ただ一点だけ。三枚目はほぼ真っ白だが、蒼月に張り付けて忍び込ませた式が、妖狐に憑かれた証拠である耳と尻尾を目撃したという情報が入っている。

 さらに、二枚目の藍鉄の情報は、三枚の中で特に備考欄が異様に長い。

 どんな任務に同行したのかとか、誰と交流関係があるのかとか、誰の依頼を断ったのかなど、ほぼすべて陰陽師側の事情だが、握りつぶされずに存在しているだけでもその裏面いっぱいの備考欄を埋めるほどあるのだ。全てを集めたら一体どれほどの長さになるのか………。


 「まず、洗脳をもう一段階進めるべきかな?」


 ばっと投げた調査用紙は、床に落ちる前に燃え尽きる。


 「さて、俺もお仕事お仕事」


 歌うようにそう呟きながら時雨は部屋を後にする。

 彼の頭の中には、約束された未来が流れていることだろう。


 「そういう、ことですか。藤菜様に報告ですね」


 この部屋に居るということを一切気が付かせなかった女性が、部屋に作られた陰から出てくる。女性は窓枠に手をかけ、式を生み出して一気に空に駆けあがり、かなりの高さに達してから平行移動に変え、自らの主の元へと帰る。


 「面倒臭いですね」


 子供たちの中でも様々な思考が行きかっていると言うのに、大人たちの思考に否応なく付き合わされる子供たち。これから進んだ先にある未来はいったいどこを指しているのだろうか。


 「ふぅ、藍鉄君は人気ものだなー」


 まだ若い二十代中盤であろう男の恰好は例にも漏れず和装だ。

 中折れ帽に和装をして、煙管をふかしてブーツを履いているその姿少々異様だが、彼が立っている場所が大きな杉の木の上だと分かると、途端にかなり異様になる。


 「藍鉄君は師匠の息子だしー」


 ふっと足を木から放し、自由落下に任せて地面に降りる。

 地面に着く瞬間、まるで何かがクッションの役割を果たしたかのように衝撃を吸収し、男はまるで何もなかったかのように森の中を歩き出す。


 「要注意人物は時雨でー、要観察人物は藤菜かなー」


 楽しそうに朗らかに笑う男。

 陰に入った瞬間、煙管から噴き出した煙だけを残して男の姿は消えていた。

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