14 修祓前の会談話
十五歳になるまで、陰陽師として一人前と認められることはないけれども、有力な陰陽師は本庁から単独で呼ばれることも多い。
もちろん藍鉄にも本庁からの指令書が届き、少々遠くの霊災の修祓に駆り出されていた。
「あれ、やっぱり藍鉄君も呼ばれたんだね」
「こんばんわ。明日はよろしくお願いします」
「そんなかしこまる必要はないよ」
ぺこりと頭を下げる藍鉄の様子に、集められた陰陽師の半数以上は好意的に受け止める。
「孤児が。そんなのを呼ばなければダメなほどに落ちぶれたのか」
そう言うのは本庁の幹部であったり、修祓の依頼者であったりとまちまちだが、それなりに力のある連中であるため、藍鉄のことを好意的に受け取っている者も表だって藍鉄をかばうことができなくて眉根を顰めることしかできない。
「ははは、本当のことを言ってはなりませんって」
藍鉄の幼さはかなり目立つ。
なぜならここに集められた者のほとんどは今現在、陰陽庁に登録しているトップランカーであったり、登録してないまでも流れで最高の腕を持つと言われている連中だ。
若い者で二十代後半なその連中の中に、まだ十代前半の少年。
目立たないという方がおかしい。
「あれー? 今回も会ったね!」
「はい。今回もよろしくお願いします、藤菜さん」
「あははー、藍鉄クンは堅苦しいなー。もっと少年らしく朗らかにー」
そんなピリピリした雰囲気を引き裂くように現れたのは、巫女服姿の一人の女性。
その後ろには何人もの侍女らしき女性を連れている。
まとう笑顔は優しいものだが、その瞳は鷹のような鋭さで周りを見渡している。
「朗らか、ですか?」
「そうよー、にこーって!」
藍鉄はこの集団の中で、何度も諦めずに話しかけてくるこの女性とはそれなりに喋っていた。
むしろ、陰陽師ではなく、巫女と言う立場の彼女は表だって藍鉄をかばうことができたため、周りが話しかけようとする隙も与えずただ毎回喋っているのかも知れないが。
「すみません、笑い方を教えてください」
最終的にはいつも、そんな困ったような藍鉄の台詞に、藍鉄を好意的に見ている者たちは笑い、そうでない者は顔を顰めてその場を去るのだ。
「もー、あ、そうだ! 一緒にお風呂行きましょー。大浴場は貸切らしいのよ」
「子供じゃないんですから一人で言って下さい藤菜さん。僕が行ったらお付の方々も困るでしょう?」
首を傾げる藍鉄に、藤菜は一層笑顔を深めて誘う。
「良いじゃない。大浴場が嫌なら私の部屋の―――」
「さあ、藍鉄君。私らと一緒に風呂に行こう」
その誘いを止めようとまだ若い陰陽師の人たちは藍鉄を引き留める。
「男同士の友情を深める為には一緒に風呂に入るのが一番だ」
「そうなんですか?」
蒼月と友人として付き合うようになってきても、友情と言うものがよくわからなくなってきた藍鉄は、その言葉に食いついた。
「ああ、そうなんだよ」
「そう、八百万の神からの啓示のように、定まっている事なんだ」
「あ、もしかして、藍鉄クン。お友達ができたの?」
友達、という言葉に少し目線をさまよわせて、一応友達なのだろうと頷く藍鉄。
変なものが見える、変な力が使えると、なかなか周りに友達ができなかった経験のあるものたちばかりであるため、友達ができた、ということにまるでわが身のことのように食いつく大人たち。
「へぇー! どんな子?」
「表情がよく変わって、いつも笑ってるような感じのヤツです」
「その子も視える子?」
「いえ、一般人です。よく家まで遊びに来るんですよ」
周りは大人だ。
しかも藍鉄のような状況で生きてきた訳ではなく、至って普通の陰陽道の家系で幼少期を過ごしていた者ばかり。当然娯楽をそれなりに親しんできたわけで。
―――そっかー、とうとう藍鉄にも春が来たのか
思いっきり誤解した。




