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狐の嘘と君の真  作者: 華宵 朔灼 / よぴこ
本編 -中学生-
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13 修行と降雪の話

 冬になり、畑仕事がなくなった、というか力仕事をする必要がなくなった為、蒼月は放課後いつも畑で鍬を振り下ろしていた時間をすべて時雨の屋敷で木刀を振るう時間に当てた。


 「うん、いい線いってるんじゃないかな」

 「はいっ」


 この家の中は絶対に和服だと言われ、慣れないながらも和装で木刀を振り回す蒼月。

 振り上げて振り下ろす、という動作をそれなりに繰り返した後、今度は時雨の部下の陰陽師の“人”型の式紙と戦う。

 最初のうちは何度も床に転がされていたが、その度に時雨に妖狐はもっと強いのだと言われ、痛む体に鞭打って立ち上がり、何度も何度も向かっていっては、やっといい勝負ができるようになってきた蒼月である。


 「うりゃああぁあぁ!」


 ついに“人”型を倒せるようになったのは、冬も厳しくなり、山間部にある村が真っ白に染まってしまうそんな季節だった。


 「流石に雪が深くなったらいけないよなー」


 うず高く積もった雪を眺めながら、蒼月は山の奥深くにある藍鉄の家に思いを馳せる。


 「あ、でも鉄んとこ雪で埋もれたらどうすんだ?」


 思い出される藍鉄の家は、雪が降るなんて考えられてもいない平屋だったはず。

 村でもうだいぶ長いこと暮らしている蒼月は、雪下ろしをしなかった為につぶれてしまった家屋も何度か見ているし、中学でも雪下ろしがどれだけ大事なのかを教えられる為、どうしようもない心配は募っていく。


 「蘇芳は家から出られないし………鉄は蘇芳の世話もするんだろ? 毎日雪下ろししてる暇なんてないじゃんか」


 母にその心配事を話し、だったら是非手伝ってきなさいと背中を押された蒼月は、雪をかき分けて藍鉄の家へとたどり着く。

 だが、その心配は完全に杞憂だったことを知る。


 「あれ? どうしたんですか、蒼月」

 「え? あれ? 雪はどうしたの?」


 そう、藍鉄の家の周囲だけ、綺麗に雪が取っ払われていたのだ。


 「あぁ、ちょっと式紙と結界を弄ったんですよ」


 簡単にそう言う藍鉄の手元には、沢山の真っ白で緑色の複雑な模様が描かれた蝶が待っている。

 くるくると回りだしたその蝶は、藍鉄の手元を離れると、雪の積もった地面に体から緑色の粉を振りまく。

 すると、その緑色の粉に触発されたかのように雪がじんわりと溶け出し、跡形もなく消えていく。


 「え? 時雨はそんなことせずに雪かきしてたぜ」

 「………そうなんですか?」

 「おう。俺も手伝わされた」

 「………へぇ」


 藍鉄は、全ての蝶が手元から飛び立ったのを見届けると、蒼月に向き直る。


 「寒い中来たんですし、お茶でも飲んでいきますか?」

 「あ、ごめん。厄介になりに来たみたいで」

 「いいですよ、最近どんなことをしたのかとか、聞かせてください」


 薄く笑って中へと案内する藍鉄の姿に、蒼月は無駄な心配だったなと笑う。


 「あ。そういや新しいシュミレーションゲーム手に入れたんだ。蘇芳に」

 「あ、ああ。ありがとうございます。元気な時は良く遊んでいますよ」


 鈍く笑うその姿に、少し首をすこし傾げつつ、新しいゲームを渡す。

 ああそうだ、と藍鉄は奥に入って携帯ゲーム機を持ってくると、蘇芳が似ていると言ったキャラクターを紹介する。


 「これが僕で、こっちが月さんに似てるそうです」

 「あははは、確かにこっちは鉄に似てるわ」

 「そんなに僕は無表情なんですか」


 眉根を寄せながら頬をむにむにと弄るその藍鉄の様子に笑う蒼月。


 「無表情って言うか、凛としてるっていうか、多分敬語キャラなとことか?」

 「敬語キャラ、ですか」


 確かに家族以外には敬語を使っているな、と思う藍鉄は、家族には敬語を使っていないから敬語キャラとは言えないのではないかと言いそうになり、次の言葉で止めを刺される。


 「そそ。普段から敬語を使ってるキャラクターで、親しくなるとため口でしゃべってくれるんだよ。そこにキュンっと来るらしい」


 キュンっという台詞の時にわざと場を和ませようと胸元でハートを作った蒼月は、一気に沈んだ藍鉄の様子に驚く。


 「え、ちょ、え? そんな落ち込むなよ」

 「ああ、まあ、はい。僕はそんなキャラなんですね」


 微妙に暗くなった藍鉄の様子を心配しながら、夕焼けに押されるように蒼月は家へと帰る。

 手土産にと、藍鉄が渡してくれた緑色の模様が描かれた蝶は、蒼月の家までの道を溶かし切ると、緑色の炎となって燃え尽きた。

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